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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「日本の夜と霧」 大島渚

2013-10-17 21:15:34 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「日本の夜と霧」は1960年安保闘争直後に製作された大島渚監督作品だ。

先日大島渚監督の作品「青春残酷物語」を見た。その同じ年に松竹映画として製作された作品だ。
ところが、公開後4日で松竹は上映中止とする。大島渚監督は猛抗議したが、結局松竹を退社することになる。どんな映画なんだろうと思っていたが、まあクズたちがつまらない会話を繰り広げるひどい映画だ。60年安保にとらわれた学生たちを見て、こんな時代に学生生活をすごさなくて本当に良かったと実感させられる作品だ。
日本史の裏の一面を探るという意味では意義があるといってもいい。

ある集会所で、結婚式が始まっている。雛壇には新郎の野沢(渡辺文雄)と新婦(桑野みゆき)と媒酌人を務める大学教授(芥川比呂志)がいる。司会を務めるのは学生運動の元リーダーと思しき男とその妻(小山明子)だ。リーダーは共産党員らしい。
1950年代初頭に学生活動家だったと思しき面々が参列者に集まっている。宴が進む中、突然1人の全学連活動家(津川雅彦)が乱入してくる。彼は安保闘争で指名手配中の身だ。彼はその日もデモに参加してきたという。

安保反対デモのときは5万人集まっていたのに、今では500人しか集まっていないと不満そうな津川だ。そうしていくうちに、津川はここに集まっている元活動家の男女関係について暴露し始めるのだが。。。。

映画では共産主義思想に満ちあふれたような連中がしゃべりまくっているようだけど、中身はない。

以前戦後の知性を代表する加藤周一がこう言っていた。
「左翼政治理論というものは、しばしば、私たちの理解を絶していることがあります。耳慣れぬ抽象的な言葉がたくさん出てきて、どこへ続くかわからない。。。。。問題なのは、そういう論文を書いた筆者の知的能力である。。。。言葉の定義があきらかでなく、整理もつかず、つじつまも合わず、何を言っているのか誰にもわからないというのは筆者の頭の混乱を示している」
まさしくここに出てくるクズどものセリフはまさにその通りだ。安保反対の論陣を張った加藤周一がまわりのバカどもに呆れていったセリフだけど、60年代後半の学生運動のバカも同じようなレベルと言っていい。




何か高尚な話をしているようだけど、映画の主題は単なる不健全な男女関係のもつれである。
連合赤軍のような悲惨な事件にはなってはいないけど、大して変わらない。
フォークダンスなんかを劇中踊ってというのもいやなかんじだ。
ここで踊っているようなババアたちが今も共産党の署名活動なんかやっているのかなあ。
それにしても、普通の工員をスパイ容疑と言って学生寮に監禁する話が恐ろしい。

自分の大学時代には全くこういう雰囲気が学内になかった。
1度や2度学内で過激派と思しき野郎を見たことあるけど、それだけだ。
先日佐藤優「私のマルクス」を読んだ。彼は自分とほぼ同世代だけど、まったく違った高校大学時代を送っていたので驚いた。浦和高校ではアカ教師の影響を受け、同志社大学に入ったら学生運動家や思想家と付き合う。結局外務省に入る彼は若干違った方向に進んだが、自分からすると異常な学生生活だ。京都は東京とは違って共産党の強いところだからそんな感じになったのかなあ??大島渚も京大出身のアカかぶれだ。でも意外にアカ男ってもてるんだよなあ。

元学生運動家の役には、昭和40年代のテレビドラマによく映っていた面々がそろう。戸浦六宏や佐藤慶なんていうのは、名悪役といっていいだろう。現代劇だけでなく、悪代官の典型みたいな役が多かった。
渡辺文雄がどちらかというと、ナイスミドルの中年男性のイメージで、津川雅彦も同様のイメージ、ここではまだ若い。津川は石原裕次郎主演の「狂った果実」の青年役で痛烈な印象を残したが、ここでは軟派と真逆の左翼青年となる。
芥川比呂志がいかにも大学教授といった風貌だ。ぴったり合っている。それにしても驚くのが小山明子の美貌である。本当に美しい。自分が知っている彼女は昭和40年代以降にテレビドラマで演じていた良妻賢母役だ。ここでは女を感じさせる。このあとすぐ大島渚と結婚する。これはうらやましい。

本当にこういう時代に大人になっていなくて良かった。

日本の夜と霧
60年代安保時代の狂った若者たち
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映画「青春残酷物語」 大島渚

2013-10-13 09:24:36 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「青春残酷物語」は1960年制作の大島渚監督作品だ。

大島監督の初期の傑作として名高いが、ずっと見ていなかった。
小津安二郎、木下恵介といった松竹独特のホームドラマ的作風と違った日本版ヌーヴェルヴァーグ作風を生みだしたという評価だ。まさに60年安保阻止で民衆がデモで荒れ狂う街中で、ある学生と女学生の出会いを描いている。何よりカラー作品であるがゆえ当時の世相がくっきり浮かび上がる。貴重な映像だ。

夜の盛り場で遊び疲れた女学生(桑野みゆき)が、中年男性(山茶花究)が運転する乗用車に声をかけて自宅まで送ってもらおうとしているシーンからスタートする。中年男性は連れ込み宿に彼女を無理やり誘おうとしていた。そこへ一人の大学生(川津祐介)が助けに入る。彼女は助かる。
翌日2人は木場でおちあいデートする。男性が自分のことを好きかどうかを確認しつつ、2人は交わる。
ところが、デートを確認した後しばらく連絡がこないのに不安に思った彼女は彼のたまり場とするあたりを夜彷徨う。
そこには不良愚連隊がたむろしていた。危うく彼女はグループにからまれそうになったとき大学生が駆けつけて、乱闘になる。そこに顔を出したのが愚連隊の親分格(佐藤慶)だ。彼は金でカタをつけようとして、その場は収まる。
2人は支払いに充当する金を稼ぐために、女学生をおとりに中年を誘惑させて、金をむしり取ることを思いつく。早速おとりにかかる中年(森川信)がいたが、そうはうまくは続かないのであるが。。。




DVDのジャケットに写る若い2人の姿は白黒写真である。それなので、ずっと白黒映画だと思い込んでいたので、なおのこと映像が鮮烈である。いきなり安保闘争で大暴れのデモ隊の姿を映す。これって本物じゃない?と思わせてしまう迫力ある映像だ。手持ちカメラを使って実際のデモの横で撮った映像もあるようにも見れる。その後ろに映る自動車が昭和35年という時代背景を感じさせる。マツダの三輪車などが走っているとよりリアルに映る。あとは色彩設計もしっかり考えられていて、桑野みゆきの着る服はなかなか色合いもよくハイセンスだ。よく見るとクレジットに衣装は森英恵となっている。なるほどとうなずかされる。

夜の街にたむろう愚連隊という設定は、今ではない世界だろう。
ヤクザと不良グループを混ぜ合わせたようなものだが、渋谷あたりはこういう人種がたくさんいたような気がする。父と渋谷センター街を夜歩くとサングラスをしたお兄ちゃんがたくさんいて歩くのが怖かった。今とのギャップが一番大きい。ここに映る佐藤慶がいかにも適役だ。でも殴るのがいかにも嘘っぽい。それがどうも気になってしまう。

デビューして日の浅い川津祐介は若さを発散させている。家庭教師先の母親とできている大学生という設定である。身体で結ばれているせいか、その中年女にはずいぶんとぞんざいな態度をとるが、別の女がはらんだ時の中絶費用を中年女からむしり取ろうとしたり、割といい加減な男を演じている。それでも、木場で材木の原木に乗り桑野みゆきと戯れるシーンは当時としてはかなり鮮烈だったのではないか?桑野みゆき が行為の後に、何度も「私のこと好きなの?」と川津に聞き返すところがいかにも時代を感じさせる気がする。

この作品より後になるが、小学生のころ、川津祐介が主演のテレビドラマがあった。当時人気の007的アクションで、子供が見ても楽しめるように、シボレーコルベットをホバークラフトのように水上を走らせていたのがずっと目に焼き付いている。それ以来自分の川津への印象があのカッコいい60年代のシボレーと連結されている。
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映画「拝啓天皇陛下様」 渥美清

2013-09-07 05:51:22 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「拝啓天皇陛下様」は昭和38年の松竹の喜劇映画だ。

渥美清と藤山寛美の歴史的共演である。それだけで価値がある。この映画が放映されるとき、映画テレビの両方で第一次「渥美清ブーム」があった。この作品は名作と言われるが、そこまでの評価に値するとは思わない。腹を抱えるほど笑えるわけではないし、強烈なギャクがあるわけでもない。藤山寛美とのコメデイ演技合戦をするわけではない。その点では期待はずれだ。むしろ、人情ものでそののちの「男はつらいよ」の原型と考えた方がいい。

昭和6年岡山の歩兵連隊に入隊した棟本博(長門裕之)は同じ中隊に配属され、山田正助(渥美清)と出会う。新兵は二年兵から厳しいシゴキを受けるが、山田は不況下でも三度の飯が食え風呂にまで入れる軍隊はまるで天国だと棟本にもらす。秋になり外出で花街の中島に出かけた2人は、そこで新兵いじめ常習の原二年兵(西村晃)を、それとは知らずに襖越しにからかいビンタを食らう。 これをキッカケに山田は原が満期除隊の時に復讐するつもりであった。しかし原の除隊前夜仲間に焚きつけられ仕方なく相撲を挑むが本気で取り組まぬ原に業を煮やした山田は投げ飛ばしてしまう。痛がる(振りをする)原を寝台へ運んだ山田は懸命に謝りながら腰を揉む。

昭和7年、二年兵となった棟本と山田たちは、今度は逆に新兵をシゴキはじめるのである。ある休日外出の際、山田が泥酔し門限を破ってしまい、5日間営倉へ入る懲罰を受ける事になってしまった。中隊長の堀江(加藤)は情に熱い人物であり、山田が居る営倉に入り共に正座するのである。晴れて山田の懲罰が解けたある日、堀江は山田に読み書きを勉強させようと、入隊前に代用教員をしていた初年兵の柿内二等兵(藤山寛美)を専属の教師に付ける。乗り気ではなかった山田も次第に読み書きが出来るようになり、のらくろも読めるようになっていく。

同年11月、天覧の秋季大演習。写真ですら天顔を拝した事が無かった山田は、実際の天皇の優しい顔立ちに感激して親しみを抱く。2年間の現役兵期間が終わり近くなった12月、堀江中隊長は無一文で入隊した山田に対し、満期除隊の際に着て欲しいと紋付の羽織と袴をプレゼントするほか、果樹園で働けるように手配するなど最後まで山田に親切に接し朝鮮竜山の連隊へ転属していく。

昭和12年、支那事変に伴う招集により再び兵役についていた棟本と山田は、南京が陥落したことを知る。仲間の兵隊たちは「これで戦争が終わる」と喜ぶが、帰るところがなく軍隊が天国だと思っている山田は自分だけは軍隊に残してもらおうと「ハイケイ天ノウヘイカサマ…」と手紙を書き始める。しかし、天皇に直訴することは不敬罪に当たるとして書きかけの手紙を棟本に取り上げ破り捨てられてしまう。結局、日中戦争は終結せず棟本や山田も戦地へ赴いた。
昭和13年、中国では昔の中隊長であった堀江はすでに戦死し、棟本も台児荘の戦闘で重傷を負う。負傷除隊後、自らの経験を出版し人気作家となった棟本は昭和16年、九州で講演した際に、炭鉱夫として働く山田と再会する。その後、戦局の拡大のため棟本は従軍作家に、山田はまたも招集され兵士として、堀江が戦死した中国で終戦を迎える。

戦後、作家としての仕事を失い土浦で困窮生活をしている棟本夫妻のもとに浮浪者のような姿の山田がひょっこり現れる。買い出しに行った山田は土産と称しニワトリを持ち帰るが、出所を聞かれ棟本は日本人同士で盗みを働くことに烈火の如く怒り山田を追い出してしまう。その後、児童文学作家として再出発した棟本は、取材中の日光で喧嘩別れした山田と出会い再び交際が始まる。奥日光開拓のため入植していた山田はたびたび棟本夫妻を訪ね、同じ長屋の戦争未亡人手島国枝(高千穂ひづる)に片思いで惚れ込んでしまう。高給を得るため華厳滝から自殺者を収容する職につき、子持ちの手島と暮らす日を夢見る山田だ。でもあえなく振られてしまうが。。。。

日本軍版「フルメタルジャケット」と考えればいいだろう。(フルメタルジャケットの方がずっと後であるが)最初いじめられた後、手のひらを返したように自分たちがいじめる。初年兵を二年目以降の人間がいじめる姿がいやらしい。
小林信彦に言わせると、森繁久弥と違い、渥美清に大卒の人間を演じさせるのは無理だという。自分の大学を出るような役をやらせると、抜群なんだけど。一人称で映画をリードする棟田を演じる長門博之はもともと喜劇役者でないし、キャラ的にインテリ崩れが出来る。
映画では藤山が文盲の男渥美に国語を教える設定、これには無理があると思う。2人は同類同士なのに
それによって、藤山らしさがまったく見えないのが残念だ。
世紀の天才藤山寛美については別のコラムでじっくり語りたい。

脇役が懐かしい。「男はつらいよ」のマドンナに通じる高千穂ひづるが美しい。没落未亡人役が適役だ。棟田の妻役である左幸子がよたっていない。山下清が突如出てくる。一言はなすだけなのにこれは滑稽
桂小金治が懐かしい。自分が子供の頃には寄席番組というと彼のイメージが強い。日活にもずいぶん出ていた。

渥美清のパフォーマンスはいずれにせよ楽しめた。
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男はつらいよ 望郷篇 長山藍子

2012-05-07 06:01:37 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「男はつらいよ 望郷篇」は昭和45年の第5作目である。


今回のマドンナはテレビ版で妹さくらを演じていた長山藍子である。いつものような寅さんの振られ話で、舞台は北海道札幌小樽と千葉県浦安である。

柴又の団子屋のオヤジことおいちゃん(森川信)が危篤という話を聞いて、戻ってきた寅さん(渥美清)がだまされていたことに気づく。あわて者の寅は葬儀屋から寺の段取りまで来る前に準備したのであった。腹を立てた寅は、旧知のテキヤの親分が危篤だという知らせもあり、北海道へ向かう。
テキヤの親分は余命短い容態だった。小さい頃に別れた息子に会って、詫びたいという望みを聞いて寅と連れ合い(秋野太作)は息子(松山省二)に会いに行く。息子は国鉄の機関士だった。今さら彼は会いたくないという。小さい頃に一人で父親に会いに行ったら、従業員をなぐっていた。それをみて嫌になったというのだ。結局親分は亡くなった。寅はやくざ稼業の末の哀しさを感じる。
柴又に戻った寅は堅気になりまじめに働かねばならないと言いだして、職を探そうとする。タコ社長のとこに意気揚々と勤めようとするが、うまくいかない。ふてくされて江戸川の小船に乗っていたら、気がつくと浦安に向かっていた。
浦安では豆腐屋で働くことになった。そこでは気のいいおかみさんが取り仕切っていて、美しい娘(長山藍子)がいた。今度は長続きしそうな感じではあったが。。。。

昭和45年といえば、大阪万博の年である。日本中が万博の話でもちきりであった。その年、山田洋次監督は「家族」というキネマ旬報ベスト1の名作をとっている。九州から北海道まで縦断するロードムービーである。大阪万博へ寄る場面もあった。この作品に出演したメンバーを見てみると、今回の「男はつらいよ 望郷篇」とほとんど一致している。なんと渥美清まで出ている。この2つの作品はセットで見てみると別の発見がある。2つの映画に共通する役者が今と違ったイメージを醸し出す。

倍賞千恵子がきれいだ。この当時29歳。小さい頃倍賞千恵子には吉永小百合とともにまだ歌手としてのイメージを持っていた。そんなイメージを思い出した。アパート住まいで亭主との子供もまだ乳飲み子の設定、当然吉岡君はまだまだ出てこない。映画「家族」でも赤ちゃんがいる設定であったが、「家族」よりもアカぬけて見える。


おいちゃん役は森川信だ。自分にとっては、実写版「サザエさん」の波平のイメージが強い。サザエさんが江利チエミでフナが清川虹子だった。どちらかというと元来の喜劇役者の匂いが強くて、笑いを誘うのがうまい。下条よりも渥美清との相性がいい感じがする。早くに亡くなったのは残念

マドンナが長山藍子だ。彼女がスターダムにあがったのはNHK連続テレビ小説「旅路」だったと思う。その前の「おはなはん」はうっすら覚えている感じだ。「旅路」は小学校低学年だったが鮮明に覚えている。祖父祖母が小樽出身だったので、この番組は毎日欠かさず見ていた。視聴率の高い番組が多い歴代のNHK連続テレビ小説の中でも「おしん」に次ぐ平均視聴率だという。脇役だったが、この作品で知名度が上がった長山藍子は一連のTBS石井ふく子プロデューサーの作品で人気絶頂となった。「肝っ玉母さん」も「ダンプ母ちゃん」も小学生のころよく見ていた。その直後だけに彼女としてはいい時期だったはずだ。
黒澤映画の常連井川比呂志は「家族」で倍賞千恵子の夫役だ。しかも彼はテレビ版ではさくらの夫の博役だ。芸達者の彼ではあるが、ここでは地味な役だ。

北海道で恩人の息子が石炭を入れながら運転するのは蒸気機関車である。いわゆるD51型「デコイチ」だ。当時はまだ北海道を走っていた。その雄姿を見せるだけでも貴重な映像だ。
また、千葉県浦安が舞台になっている。ディズニーランドで一躍全国区的知名度になったこの町も、ディズニーランドができる13年前であるこのころは単なる漁業の町であった。D51以上に貴重な映像だと思う。小さい漁船がたくさん停泊している姿は凄い映像だ。そんな中寅さんはいつものように縦横無尽に動き回る。渥美清もまだまだ元気だ。
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座頭市地獄旅  勝新太郎

2012-05-03 06:53:32 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「座頭市地獄旅」は昭和40年の座頭市シリーズ12作目である。

12作目となると、当初本当のやくざみたいで殺気じみていた勝新太郎の表情に柔らかさが見える。この映画でキーとなるのが「将棋」だ。盲目の市が将棋をするということ自体、ありえるのかいといった感じだが、「3四歩」とか盤の記号を言い続けて指してしまう。さすが「天才」市だ。

ゲストは成田三樹夫である。将棋好きの浪人を演じる。当時30歳でまだ俳優としての格は高くはない。しかし、「仁義なき戦い」やテレビの「探偵物語」で見せた独特のにがみ味は片りんを見せている。


下総館山が映し出される。ある時5人の剣使いに襲われた座頭市(勝新太郎)が華麗な剣を見せ、5人を返り打ちにするシーンからスタートする。市は船に乗り江の島を目指す。船に乗る前に足を滑らせて、危うく海に転落するのを一人の浪人(成田三樹夫)が助けた。船で市はいかさまじみたさいころ賭博で金をさらっていた。やられた連中が恨んで、市を手篭めにしようとして返り打ちを食らっていた。そんなところを横で一瞥しながら、浪人は将棋をしていた。市もメクラながら将棋に付き合っていた。

江の島に行ったあともやられた連中は市を追いかけていた。市の宿を襲うがまた返り打ちにあう。その時市の剣に2階の窓から表に放り出されてしまった男が外を歩いていた母子の子供の足にぶつかってしまう。子供(藤山直子)が倒れているのを感じた市は2人を助ける。2人は市たちと一緒の船に乗っていた。子供は高熱を出す。地元の医者に診てもらったら「破傷風」だという。これを直すには南蛮渡来の薬が必要になる。しかも薬の値段は高い。途方に暮れる母であったが、なんとかそれを市が用立てようとする。
市は鉄火場でさいころバクチで稼ごうとする。また得意のいかさまをしようとしたら失敗。こんなこと今までなかったのにとグチっているところに浪人ナリミキがいいアイディアがあるとタネ銭の稼ぎ方を教えるが。。。。

座頭市の第1作はのちに10chで渋い味を出していた天地茂との対決であった。旅に出た市が剣の腕が立つ浪人と知り合う。おたがい釣りが好きということで意気投合するが、相手は自分と相対する一味に雇われていて、やがて二人は対決することに。。。。なんてストーリーは時代劇ではよくある話だ。
この作品もその流れを外さない。今回は将棋で友情を深めるたあと、一つの因縁で対決することになる。
これだけワンパターンのストーリーでも、みんな見てしまうところが時代劇の吸引力なのであろう。

それにしても市のいかさまバクチも腹を立てられてもおかしくない。市がさいころの壺を振る。床を叩くとさいころが2つ飛び出している。2つの目がわかっているので、まわりはひっそりと大笑い。メクラの市もバカをしたなとばかりに当然その目に賭ける。ところが、壺を開けようとすると、市が「あれ、間違ってさいころが袖から飛び出してしまったよ」とばかり、袖に戻して壺の中の2つのさいころを出す。それが飛び出した2つの目の反対となり市が総取りという構図だ。いくらなんでもこれこそいかさまだ。これで腹を立てない方がおかしい。やられた連中が市に復讐しようとするのも無理はない。でもこんなインチキで脚本をつくってしまうんだから、当時の映画量産体制がよくわかる。

勝新とナリミキがメインだが、渋い俳優が脇役で出ている。その一人が藤岡琢也だ。
完全な脇役である。さいころ賭博をやって、市に金をさらわれるみじめな役だ。その後仕返しをしようとしてもことごとく返り討ちにあう構図だ。彼が人気出たのはもう少し後だったと思う。後年は「渡る世間は鬼ばかり」など死ぬまでやった人気俳優になったが、まだまだ大部屋を一歩出たくらいだった。
山本学が親の仇を果たそうとする侍を演じる。山本3兄弟というと、昭和40年代から50年代にかけてはドラマには欠かせない男たちだった。今でも健在だ。叔父さんが山本薩夫監督だけにどちらかというと「アカ」系インテリの色彩が強く、医者役もうまいが反体制映画によく出ている印象が強い。
娘役のクレジットが藤山直子となっている。DVDなのでもう一度見返してみたが、たぶん藤山寛美の娘の藤山直美の幼い頃であろう。顔に若干面影がある。

座頭市としては普通、温泉場のセットなど美術がうまく、闇夜の撮影に強い大映らしい映画だ。

(参考作品)
座頭市地獄旅
盲目の市が将棋を指す


座頭市物語
記念すべき第1作、天地茂が強い
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古都  岩下志麻

2011-05-04 06:06:39 | 映画(日本 昭和35年~49年)
岩下志麻の初期の作品である。川端康成の小説を映画化して、美しい京都を舞台に離れ離れで育った双子の姉妹の姿を描く。現代風女性とは違った日本の古風な女性を岩下志麻が演じる。彼女の美しさが際立つ映画だと思う。



主人公佐田千重子こと岩下志麻は呉服問屋の一人娘として何不自由なく育った。しかし、彼女は実の子ではなかった。店の前の格子の下に捨てられていた捨て子だった。親娘の愛は細やかだった。父こと宮口精二は下絵に凝っていた。帯の下絵を持って東野英治郎が主人の西陣の織屋を訪れる。その息子こと長門裕之は岩下に想いを寄せていた。一瞬下絵を織るのにためらうが着手することとなる。
岩下は、清滝川に沿って奥へ入った北山杉のある村を友人と訪ねた。そして杉の丸太を磨いている女達の中に自分そっくりの顔を見い出した。夏が来た。祇園祭で賑う四条通を歩いていた岩下は北山杉の娘苗子こと岩下志麻(一人二役)に出会った。娘は「あんた姉さんや」と声をふるわせた。千重子と苗子は双子の姉妹だった。しかし父も母もすでにこの世にはいない、と告げると苗子は雑踏に姿を消した。その苗子を見た長門裕之が千重子と間違えて、帯を織らせてくれと頼むのだったが。。。。

熟年の域に達した岩下志麻は、やくざの姐さんが似合う怖い存在となった。話し方にも貫禄がある。そういう彼女を見ているとこの映画での岩下志麻には違和感がある。やさしい匂いがある。でも、この映画の岩下志麻が見せる日本人特有の古風さを持った京都の老舗の御令嬢という役柄はなかなかいいもんだ。岩下の和服のセンスもいい。昭和30年代の映画では和服のセンスの良さに感嘆させられることが多い。そこが昭和40年代以降の映画との違いか。

同時に京都の美しい伝統的な風貌を映像にする。いきなり瓦屋根の京都の街並みの姿がタイトルのバックになる。わくわくする。そして格子の美しい日本家屋を見せながら、八坂神社のしだれ桜や祇園祭の趣きある姿を映す。北山杉のある村に独特の雰囲気があり、日本的情緒にあふれている。



ストーリーや演技で見るというよりも、映像を楽しむといった映画だと思う。
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ニッポン無責任時代  植木等

2011-05-03 21:20:48 | 映画(日本 昭和35年~49年)
地震後の暗い世の中でパーと明るい雰囲気にしようとするならば、何はともあれクレイジー映画である。植木等の得意の歌が満載で数多くある映画の中でも代表作といえるのは37年の「ニッポン無責任時代」だろう。話の展開は相変わらずばかげているが、当時の東宝のコメディはどれもこれも高度成長時代の日本に相性の良いものだといえる。気楽にみるのがいいもんだ。



主人公の平均(たいらひとし)こと植木等は三流大学中退して、お気楽に会社を渡り歩いている男だ。下宿の家賃もたまりがち。そんな彼がなにか儲け話をゲットしようと銀座のバーに足を運ぶ。
そこで客がホステスと太平洋酒販の株が上がるよというを話を聞く。それを聞いた植木は太平洋酒販にちかづいていく。大ボラまがいの口上で死んだ政治家の知り合いと巧みに社長ことハナ肇に近づき、太平洋酒販の総務部に入社した。そこには総務部長の谷啓や犬塚弘、安田紳、桜井センリなどのメンバーがいた。植木は、大株主こと松村達雄を説得することであった。軍資金を用意させ、早速松村に会い、小切手1つで見事に成功したと思いきや、株の買占め側が大株主の松村を口説いたという噂が。。。。

こういうサラリーマンもの典型で、会社の支配権を得るための株式の買占め、それにつなげた夜の蝶たちとの関わりあい、ごますりと接待漬けなんていうことが最後まで次から次へと話のネタになる。森繁や小林圭樹、三木のり平といった駅前シリーズもクレイジー映画も基本的なパターンは変わりやしない。今もあるかもしれないが、日本経済というのはこういうサラリーマンの立ち回りでもってきたのかもしれない。女性陣は団令子、重山規子という常連で、まだ浜美枝はでていない。調子よく女性陣に斬り込んでいく植木等である。



この映画が数あるクレイジー映画の中でも注目すべきなのは、植木等の代表的な歌が収録されていることだと思う。
「無責任一代男」(おれはこの世で一番無責任と言われた男、ガキーのころから調子よく。。。。)、「ハイ、それまでョ」(てなこと言われてその気になって女房にしたのが大間違い。。。。)、「五万節」(学校出てから十余年今じゃしがないサラリーマン。。。。)、「ドント節」(サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ。。。。)
これらの歌を軽快に植木等が歌いまくる。平成2年の紅白歌合戦での大フィーバーぶりを思い出す。
青島幸男作詞の歌詞、それは最高だ。議員の青島は嫌いだが、脚本と歌作りにかけては天才だと思う。「タイミングにC調に無責任」そんな雰囲気で乗り切りたいものだ。

ニッポン無責任時代
植木等の代表曲が高らかに鳴り響く
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女が階段を上る時  高峰秀子

2011-02-15 20:35:47 | 映画(日本 昭和35年~49年)
高峰秀子さんが年末亡くなられた。

自分も年齢を重ねて、高峰秀子の魅力がわかるようになってきた。ブログで何か作品をとりあげてみたいと思っていたが、むしろ普段のキャラと違う作品がいいと思った。「女が階段を上がる時」は銀座のママを演じる映画である。成瀬巳喜男監督がメガフォンをとり、いつもと違う高峰秀子の魅力を引き出している。「浮雲」で共演した森雅之も一緒だが、東宝のスターを中心に豪華キャストである。音楽は黛敏郎の担当、MJQを思わせるバイブを基調とした音楽は成瀬作品では珍しい。でも夜の銀座を舞台にしたこの映画にぴったり合っている。



主人公こと高峰秀子は銀座のバー“ライラック”の雇われマダムである。
夫に死なれた高峰が、マネジャーこと仲代達矢にスカウトされ、この道に入ったのは五年前であった。ある日、店のオーナーに呼ばれ、売上げ減ったことを責められた。利権屋こと小沢栄太郎が最近店に寄りつかなくなったという。売り上げになるような客をもっと呼ぶように出来ないものかという。小沢は以前高峰のバーで働いていた淡路景子の店に通い詰めていた。
マネジャーの仲代が電話で呼び込みをして、小沢が高峰の店へ久々に現われた。彼は淡路の店へ高峰を案内した。店は繁昌していた。高峰の店のなじみの客がとられていた。高峰が好意を持つ銀行の支店長森雅之も来ていた。高峰は客足をもどすため、雰囲気を変えることを決意し、店の場所を移した。すると、上京した関西の実業家こと中村鴈治郎が、店を持たせるからと高峰に迫ってきた。雇われマダムの高峰は心を動かされるのであるが。。。。



高峰秀子には独特の品位がある。腐れ縁の極地の映画ともいえる「浮雲」で、戦後落ちに落ちていった女性を演じたが、その品位は崩しても残るものであった。ここでも銀座のママとして、貞操概念を守りながら、うまく男をはぐらかす役を演じる。本当は普通の主婦が似合う女性なのだと思う。成瀬巳喜男作品ではずいぶんといろんなことをやっている。個人的には「乱れる」が一番好きだ。

この映画をみると昭和35年ごろの銀座の光景が出てくる。リアルな画像である。これを見ているだけでも楽しい。外のネオンの雰囲気は若干違う。でも飲み屋街としては大きくは変わっていないのではないか?ちょうど2月の初めに銀座のクラブへ行ったばかりだ。そんなに違和感がない。銀座らしさは一緒だ。だからこそ銀座の常連というべき人がずっときつづけているのであろう。車で帰るのは一流のホステス、電車で帰るのは二流のホステス、客としけこむのは最低のホステスとナレーションで高峰秀子が話していた。


俳優が豪華だ。みんな芸達者である。森雅之は「浮雲」からのまさに腐れ縁。ポマードで髪を決めているその姿がジェントルマンのいでたちで、銀行の支店長という配役が実に似合う。煮え切らない男の役が多い。森雅之であるが、ここでも若干その匂いを出す。中村雁治郎が映画で一番活躍していたころの作品である。あくの強い関西弁を駆使する。美人に弱いスケベ親父がよく似合う。仲代達矢は売れ始めてきたころの作品だ。「人間の条件」を取り終えたころである。「用心棒」「天国と地獄」など黒澤明作品に連続で主演するのはこのあとだ。

このころの淡路恵子は美しい。高峰秀子はバーのママがあまり似合わないキャラだが、淡路の場合銀座のママという役がまさに水を得た魚のようだ。他には成瀬作品の常連中北千枝子、若大将シリーズにも顔をよく見せる団令子、チャコちゃんシリーズのおばあちゃん賀原夏子など。その後ヒステリーおばさんの代名詞になった塩沢ときが若かりし日の美貌を見せるのが面白い。お店の大女将として細川ちか子が貫禄を見せる。政治家藤山○一郎さんとの関係はあまりにも有名だ。おていちゃんこと沢村貞子は加東大介と兄弟で出演。

まさに映画全盛時代のオールスター映画いいものである。
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秋津温泉 岡田茉莉子

2011-01-16 17:23:37 | 映画(日本 昭和35年~49年)
昭和37年の岡田茉莉子主演作品。のちに結婚する吉田喜重監督がメガホンをとる。岡田自ら藤原の原作から自分で企画を立てて制作のクレジットに名を連ねている。岡山の山奥の温泉地を舞台に男女の情念に迫る作品だ。


昭和二十年の終戦前、東京の大学生こと長門裕之が一人岡山を旅していた。たまたま移動の列車にいた女性が秋津温泉の女中で、話を聞き訪れた。心が病んでいるばかりでなく、体は結核に冒されていた。岡山県の山奥の秋津温泉場の娘こと岡田茉莉子は、長門を気の毒に思い自殺から救った。終戦となりしばらく温泉場で療養した後、戻るが自堕落な生活を送っていた。それから三年、長門は再び秋津温泉にやって来た。荒んだ体の療養だが、岡田に「一緒に死んでくれ」と頼んだ。二人で心中を図ろうと川ぺりに向かうが、冗談とばかりに岡田は一笑に付す。しかし、二人の心は深く通じ合うようになっていた。その後も何年かおいて長門は秋津温泉を訪れる。しかし、長門は文学仲間こと宇野重吉の妹と結婚した。その話を聞いても岡田は、長門が忘れられなかったのであるが。。。。

究極の腐れ縁映画故高峰秀子の代表作「浮雲」を思わせる部分もある。白黒の「浮雲」と比較するとカラー作品ならではの美しい風景を映す。季節感のある映像コンテには映像美が感じられる。
岡田茉莉子が美しい。成瀬巳喜男作品の「浮雲」では森雅之が浮気する相手を演じたり、「流れる」では山田五十鈴の芸者置屋に所属の若芸者に扮している。この映画の6,7年くらい前で20代になったばかりの映像であるが、なんかイモっぽい。それに比べると大女優としての貫禄も付いたのか、格段に美しくなっている。着物の着こなしが素敵で、センスがいい。長門裕之との情念の愛を次第に深めていくたびに、表情が変わっていく。それがいい。



山奥の温泉場という設定もいい。雪が降る時の映像が特に美しい。桜の満開の映像も実に美しい。そこに岡田茉莉子の美しい和装の姿が実によく映える。津山駅の風景もひと時代前の地方の風景を表わしている。その情景がムードを高めている。
一つだけ問題があるとしたら、音楽がうるさすぎ。
主題の音楽は素敵な音楽だと思うが、場違いな音響がムードを妨げている。残念
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吹けば飛ぶよな男だが 山田洋次

2011-01-15 05:55:17 | 映画(日本 昭和35年~49年)
山田洋次監督による1968年の喜劇である。なべおさみ主演だ。
エキスポ直前の阪神間の雑踏を舞台にくりひろげられるチンピラ男の話
今ひとつではあるが、昭和40年代前半の風俗が懐かしく感じさせる。



チンピラの主人公ことなべおさみは、仲間とともに大阪駅で天草からの家出少女こと緑魔子を誘惑し、山の中でエロフィルムの強姦シーンを撮影しようとする。必死に拒む姿を見かねて、仲間を裏切り、緑魔子と逃走する。
緑魔子をポン引きのおとりに使ったり、ミヤコ蝶々が経営する福原のトルコ風呂に売ったりしますが、なべは次第に惚れていく。ポン引きの客で気のいい中年の高校教師こと有島一郎がなにかと緑魔子の面倒を見てた。しかし、裏切った兄貴分にとうとう見つかり、「指をつめてわびを入れろ」と大騒ぎになる。。。。

山田洋次監督がめずらしく関西に遠征している。当時セクシー女優として売れていた緑魔子を前面に出す。坂の多い神戸の街を中心に映画は展開していく。煙まみれの阪神工場地帯がいかにも雑な雰囲気だ。神戸新開地が場面にでてくる。福原のトルコ風呂はセットでなく、実際のトルコ風呂で撮影されたのであろう。
主人公がいかにもチンピラである。破天荒な動きがアナーキーだ。でも主役張るには役不足だ。
逆に犬塚弘のやくざに迫力を感じる。石橋エータローと安田伸はポン引きの客役でなべに脅される。
植木等が東宝で活躍していた一方でクレージーの面々が地味に松竹で小遣い稼ぎをしていた。

寅さん映画のスタートの時期に山田洋次がどんな喜劇を撮っていたのか見てみたかった。
同じ大阪の万博真っ最中にロケした「家族」のすばらしい出来に比べると
2年前のこの作品の出来はうーんといった感じだ。
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大菩薩峠 市川雷蔵

2010-12-29 05:55:22 | 映画(日本 昭和35年~49年)
中里介山の原稿用紙1万5千枚におよぶ大著として有名な「大菩薩峠」である。
主人公の机竜之助を市川雷蔵が演じる。中村玉緒、山本富士子と当時の大映美人女優が脇を固める。この主人公は正義の味方ではなく、むしろとんでもない剣士である。剣のライバルの女を手篭めにしたり、無実の他人を意味もなく斬ったりする冷酷な男である。東映の時代劇の明るい雰囲気に対して、大映の時代劇は夜のムードが強いのが特徴である。この映画も美術、照明の巧みさでスリラーと思しき匂いをさせる。


時は幕末、甲州裏街道の大菩薩峠で、一人の老巡礼が武士机竜之助こと市川雷蔵に意味もなく斬殺される。老巡礼の孫娘お松(山本富士子)は、通りがかった盗賊裏宿の七兵衛に助けられ、養育される。竜之助は道場の若師範であった。その青眼音無しの構えは恐れられていた。甲源一刀流の師範宇津木文之丞は奉納試合で竜之助と立ち会うことになっていた。その内縁の妻お浜こと中村玉緒は妹と偽って竜之助を訪ね、試合に負けてくれと懇願する。竜之助は拒絶するばかりか、お浜を犯してしまう。あげくに竜之助は奉納試合で宇津木の脳天を叩き割ってしまうのであるが。。。。



その後主人公はライバルの妻中村玉緒を連れて江戸へ向かう。中村玉緒は愛憎の狭間で苦しむ。同時に主人公に恨みを持つ人たちが復讐を企てる。それ自体を単なる剣士同士の対決話ではなく、スリラー、ホラーの匂いをにじませる描き方をする。市川雷蔵の姿が妖気にあふれ、鬼気迫る画面にぞくっとさせられる。

中村玉緒が昔は美人女優だったというと、信じられない顔をする人が多い。娘は驚いていた。この映画はかなり特殊な存在であるが、彼女も21の若い色気を強くにじみ出す。それ自体がなぜかおかしい。
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座頭市と用心棒  勝新&三船

2010-10-29 05:58:57 | 映画(日本 昭和35年~49年)
「座頭市と用心棒」は大映の衰退期の昭和45年に起死回生で制作された。勝新、三船のゴールデンコンビによる時代劇である。「用心棒」三船敏郎と対決する勝新太郎の座頭市を、当時東宝所属であった岡本喜八監督がメガフォンをとる。



市こと勝新が昔訪れた村にやってきた。以前は静かな村だった。今はやくざが仕切っている。剣の達人である盲目の市にはとらえたら100両という賞金がかけられている。その話を村のやくざの用心棒であった三船敏郎が聞く。三船は金がかかった仕事しかしない男である。しかし、三船は「メクラ」を殺すと化けてでるからと取り合わない。そんな二人が出会う。市は斬りかかる三船の剣を巧みに避ける。その腕前を知った三船は飲みに誘う。そこには美人のおかみ若尾文子がいた。そんな二人は金の利権絡みの村の抗争に巻き込まれていくが。。。

座頭市の初期の作品では、まさしくやくざの匂いが勝新にぷんぷんしている。殺気じみている。夜の場面の剣の場面は劇場で見ると怖い。映画館の暗闇がはえる画像である。
一方用心棒三船には、遊び人浪人の匂いが強い。黒沢明監督「用心棒」は脚本の面白さと脇役のうまさが冴える。当然「椿三十郎」も同様だ。

そんな二人が見せる剣の対決は、彼ら独自の作品に比較するとそんなに凄味は感じさせない。
この当時でいえば、ジャイアント馬場が来日するジン・キニスキーやブルーノ・サンマルチノと繰り広げる勝負のようで、結果はネタばれになるから控えるが、要は上記プロレス対決のような感じだ。
しかし、ここで際立つのは宮川一夫の撮影だ。黒澤明「羅生門」をはじめ溝口健二の作品で腕をふるったカメラマンだ。職人芸だけああって、これが実にうまい。三船の表情、勝新の表情をもっともよく映している。監督の腕とも言えるかもしれないが、映像コンテの選択が実にうまいように思えた。



脇役は滝沢修、常田富士夫、嵐寛寿郎など豪華だ。さすがというべきか滝沢修の演技がうまい。若き日の岸田森がいい味出している。細川俊之はまだ円熟味にかけている気がする。
当然若尾文子は美しい。宮川一夫のカメラと彼女の美貌とは相性がよいようだ。
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裸の十九歳  新藤兼人

2010-08-26 07:48:01 | 映画(日本 昭和35年~49年)
「裸の十九歳」は連続殺人で死刑となった永山則夫をモデルに新藤兼人監督がメガホンをとった70年の作品だ。主演はさきごろ参議院選挙に出馬して話題になった原田大二郎で、新藤監督の長年にわたるパートナー乙羽信子が母親役を演じる。主人公の境遇があまりにも悲惨でやるせない気持ちにさせる映画だ。学生運動全盛時代の40年代半ばの世相が手に取るようにわかる映像が貴重である。観て損のない映画である。

道夫こと主人公原田大二郎は中卒の集団就職の一人として青森県から上野駅に着いた。そして渋谷のフルーツパーラーに就職した。寮に住み込み生活を始めた。
しかし、一緒に就職した仲間が徐々に去り、やがて道夫も辞めてしまう。辞める時外国に行くとはったりを言った手前、横浜港の貨物船で密航を企てた道夫は捕まった。保護観察処分がでて長兄の家に引き取られた。しかし、長兄の嫁が自分のことでの愚痴を言うのを聞き、道夫は長兄の狭いアパートを飛び出す。
その後、大阪の大きな会社に再就職すると上京した母親に嘘を言い、大阪へ向かい職を探す。大阪で住み込みで働き始めたが、すぐやめて再び東京へ舞い戻り、いくつもの職を転々とした。そして自衛隊の募集に応募するが不合格となり、徐々に精神がすさんできていたが。。。。

このあと犯罪のルーツを探る意味合いもあり、青森県で魚の行商をしている母乙羽信子の幼いころからの軌跡を描いていきながら、映画は進んでいく。

主人公やその母親はこれほどまでにドツボな素性もないだろうと思わせるほどかわいそうな人生を歩んできたようだ。父親がばくち好きで金がないのに子供8人つくってしまうというのが今の世相からすると奇妙だがそれは事実だ。実際そういう家庭が多かったと聞く。
先日母親が1,3歳の子供を残したまま餓死させてしまう信じられないような悲劇があった。でも彼も同じようなことを経験させらている。
昭和40年代前半はまだ集団就職という制度は残っていた。いわゆる安い労働力は金の卵と言われたものだった。自分の実家にも中卒で地方からくる従業員が40年代前半まではきていた。でもいずれの実家もここまでの悲劇はなかった。

この映画では当時全盛だった学生運動のリアルな活動場面での撮影や、上野駅に向かう集団就職の中卒者、不良がたむろう深夜喫茶、ゴーゴークラブなど、ひと時代前の日本の姿がリアルに描かれている。
主人公が最初に勤めた先が渋谷の西村フルーツパーラーだ。ここでは当然名前を変えているが、この画像はおそらく西村のフルーツパーラーでロケしたのではないかな?昔からずっとある渋谷の店が少なくなる中、相変わらず頑張っているようだ。

演技者としては新藤のパートナー乙羽信子が汚れたシーンも嫌がらずに体当たりしている。こういったところは新藤監督はかなり強引だ。昭和45年当時といえば、乙羽はテレビのホームドラマの常連で、いつもやさしい母親役を演じていた記憶がある。元宝塚スターの彼女にここまで汚れた役を演じさせるとは観ていてかわいそうになってくる。でもこの役者魂はすごい。
不慮の事故で亡くなった太地喜和子も娼婦役で出演する。人気が出てくる前だと思うが、彼女の役もこの映画の中では重要な位置を占める。

この映画では主人公の描写だけでなく、性の問題が一つのキーポイントになっている。上の二人をはじめとして、かなり多数の女性を汚れた世界に陥らせる。田舎社会での性、都会生活での性、今とは違う何かがあるのを感じさせてくれた。
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雪国 岩下志麻

2010-07-29 04:39:20 | 映画(日本 昭和35年~49年)
有名な川端康成の原作を映画化した松竹映画である。主人公の二人には木村功と岩下志麻が扮する。特に当時24歳の岩下志麻が美しく、それを見るだけでも価値がある。



主人公島村こと木村功は、翻訳などをする著述家であった。その彼は自由気ままに旅をしていた。雪国の温泉宿に入って、女中に芸者を頼んだ。ところが、温泉場に大きな宴会が入っていて、芸者はいない。そこで宴会に加わったことのある若い女の子だったらいるよということで駒子こと岩下志麻が紹介される。まだ19歳の若い子であった。お互いひかれるが、木村は翌日再度部屋に寄った岩下に芸者を紹介しろと頼む。岩下は不服そうだ。木村は君とは何でも話せる友人関係でいたいから別の女性を頼むのだといった。それでも木村に惹かれた岩下は木村に近づいていくのであるが。。。

雪景色をとらえるカメラワークがいい。話は大して面白くないが、雪国を上手に撮影している。撮影した昭和40年であれば、舞台となった雪国の街もそんなに発展していなかったであろう。苦労せずにロケできたと思う。今じゃ街も近代化されて無理だろうなあ。

それにしても岩下志麻の全盛時の美貌はすばらしい!
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しとやかな獣  若尾文子

2010-06-05 04:50:01 | 映画(日本 昭和35年~49年)
「しとやかな獣」は若くして亡くなった川島雄三監督による若尾文子の代表作と世間で言われる作品だ。でも観てみると若尾文子がたいして活躍しているわけではない。団地に住む伊藤雄之助、山岡久乃の詐欺師まがいの夫婦の振る舞いが中心だ。その息子と娘も両親と同様の体質で、お互いだましだまされながら生きている社会の底辺を描いた作品だ。

伊藤雄之助と山岡久乃が住む団地に息子の会社の上司である高松英郎が訪れる。会社の経理係の若尾文子も帯同している。夫婦の息子が集金したお金を使い込みしてしまった。親に責任持って返せと高松が怒鳴り込んできたシーンからはじまる。
うちの息子に限ってこんな悪いことをするはずがないと両親はいうが、会社の集金した金の流用は両親もわかっていた。確信犯である。親も一部を懐に入れ、息子は女に貢いでいた。
その手の話がずっとつづく。息子と女性事務員である若尾はできていた。若尾文子は身体を武器にして、男から金を巻き上げる。でもそれは息子だけではない。会社の上司の高松ともできていた。そして貯めたお金で旅館を開店させることになっているが。。。。

この時代の若尾文子は悪女が得意だ。
でも正直おもしろくなかった。傑作という人がいるが、どうかと思う。しかも非常に不快な映画だ。
だらしのない人たちを描いていて、この当時の社会ってこんな程度だったのかなと思うと気味が悪い。昭和30年代半ばとなると、まだ戦後のどろくささが残っていて、社会的なモラルが崩れていたのかもしれない。自分が生まれたときの日本は泥臭かったんだ。

観ていて気分が悪くなった。最低の人物像ばかり映したのだと思うけど。。。

ただこのころの若尾文子は確かにきれいだ。夏物の着物を着こなす姿が粋で素敵だ。
「女は二度生まれる」の方がもう少しマシな気もするけど。。。。。
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