joy - a day of my life -

日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

生産性とは何か 『小冊子を100万部配った、革命的口コミ術とは?』本田健(話し手)

2006年02月05日 | Audiobook
本田健さんは自分の会社『アイウエオフィス』を作るときに、「社員の人たちが、世界で一番この会社で働きたい、そんな会社にしよう」と想ったそうです(『小冊子を100万部配った、革命的口コミ術とは?』)。

この言葉はとてもシンプルだけど、でも今まで聴いたことがない言葉のように思えます。

「(世界で一番)お金をたくさん稼げる会社にしよう」と考えて経営者になる人は多いと思います。でも本田さんは、社員がその会社で働いて一番幸せになれるような、そんな会社をつくりたいと考えました。

これはすごいパラダイム転換ですね。「どうすればお金を稼ぐことができる会社を造れるか?」から、「どうすれば社員が幸せになれる会社を作れるか?」を模索するわけですから。

それは、普通の会社を、「ボタンが最初からかけちがって最後までとめてしまったシャツ」とみなすようなものだと思います。「世界で一番社員が幸せな会社」とは、ちゃんとボタンをかけているシャツのようなものです。すべてが「それをすることは社員は幸せか?」から組織を構成することになる。

おそらく、「世界で一番社員が幸せな会社」は、お金を稼ぐことができない会社とは違うのだと思います。

 ・社員を幸せにする会社の営業スタイルは?

 ・社員を幸せにする人事システムは?

 ・社員を幸せにする仕事の割り振りは?

 ・社員を幸せにする勤務時間は?

 ・社員を幸せにする仕事内容は?

 ・社員を幸せにする職場の雰囲気は?

etc・・・

既存の企業の体制を、こうした問いで眺めてみたら、一体どれだけの改善が必要なのでしょう。

例えば本田さんの会社では、部長とか課長とか、ヒエラルヒーを作る肩書きが一切存在せず、「感情的にフラット」なチームを作るよう心がけているそうです。また新しい人を迎え入れる際にも、すべての社員がその人をみて判断してから受け入れるので、新しい人も「自分はこの場で受け入れられている」と最初から感じて仕事ができるそうです。

本田さんの会社は10人以内だそうなので、だから可能だと言うこともできますが、本田さん自身は、最初から10人以内の会社にしようと考えていたみたいです。

『ザ・ゴール 企業の究極の目的は何か』では、利益を生み出すという観点から工場生産を見直したときに、各ラインで作業を効率化させようとしたことが、結果的に全体のバランスを崩して生産スピードを遅くさせ在庫部品を増やしていく過程が明らかにされていました。

またその際に、社員を馬車馬のように働かせて怠業を防ぎ、休む間のある社員もまた別の仕事を割り振ってつねに社員を働かせねばならないという考えが、決して利益にはつながらないことを工場長は悟るようになります。

重要なのは利益を生むことであり、「一生懸命」効率性を追求することとは違うということです。

ただこの本の面白さは、この工場の再生の過程が、工場長の家庭崩壊の危機とシンクロさせて描かれていることです。(このあたりのシンクロ具合は、この書籍のオーディオ版“The Goal: A Process of Ongoing Improvement”の方がよく感じ取れます)工場長は、働き過ぎで妻が家を出て行くことを経験し、そもそも自分はなぜ結婚し、なぜ働いているのか?と自問することになります。

書籍ではこれらの問いには明確には答えていなかったと想うのですが、単に利益を生むことだけではなく、人生にとって企業とは何かという問題を著者が考えていたことが窺えます。

無業問題、引きこもり、学校でのイジメ、家庭崩壊、等等いろいろな問題がある中で、私は、現在の社会は、企業でも役所でも、こうしたパラダイム転換をする勇気を持たない限りは、現在の社会が大きくよくなることはないのだと予想しています。

涼風

“The Goal” Eliyahu M. Goldratt

2006年01月29日 | Audiobook
“The Goal: A Process of Ongoing Improvement”というCDブックを聴きました。邦訳は『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』という題名で大ベストセラーになっているのでご存知の人も多いのだと思います。

じつは私は去年までこの本の存在を知りませんでした。英語のCDブックで語学を勉強しようとして探していて初めてこの本に行き着いたのです。

CDは分厚い書籍の全文を朗読しているので9枚にも上ります。物語仕立てで工場が利益を生み出すプロセスを解説しているのですが、プロの声優が何人も出てきて、ラジオドラマのような感じです。

ただ正直に言えば、私はこの9枚のCDを去年の秋から何度も聴いてきましたが、結局内容を聴き取ることができませんでした。そこでいい加減疲れてきたので、降参して翻訳に手を伸ばしたのです。

翻訳を読んでその内容の面白さに引き込まれたのですが、正直に告白すると、この本の内容を一回読んだだけでは理解できませんでした。工場の生産ラインについての常識がいかに利益獲得を阻んでいるかを物理学の教授が元教え子に教えるお話なのですが、うまく頭がついて行かないのです。


私が理解できた範囲を思い出すと、通常の工場生産の常識には

・労働者にはつねに労働を課して怠業を防ぐ

・各ラインで作業をつねにスピード・アップ(効率化)する

というものがあります。

しかし、この発想に欠落しているのは、工場の各生産ラインはすべて連関しているにもかかわらず、各ラインで作業スピードに差が不可避的に出てくることです。

このスピードの差を理解せずに、たんに各ラインでの作業のスピードを高めようとすると、スピードの遅い箇所(=「ボトルネック」)で生産が滞り、大量の未完成部品が出ることになります。

つまり、工場の生産スピードを決定するのは、最もスピードの遅い箇所(=「ボトルネック」)であり、それを考慮せずに他の箇所のスピードを上げようとすると、投入した資材のわりに少ない完成品しか得られないことになります。

ここから、工場を円滑に運営するには、この「ボトルネック」を発見し、その「ボトルネック」のスピードを上げる努力をしながら、同時に「ボトルネック」のスピードに合わせて他の箇所の資材投入と作業を進める必要があります。

こう書くと「当たり前じゃないか」と思いそうですが、「既存」の工場運営では、各ラインのスピードの差を考慮せずに、とにかくすべての箇所で作業のスピードを高めようとするので、結果的に「ボトルネック」でいつまで経っても処理されない大量の無駄な部品を作る羽目になると言うことです。


もちろんこの分厚い本は、そういうことだけではなく、企業会計の常識がいかに工場の円滑な運営を妨げているか、チームの運営にとって必要なリーダーシップとは何かなど、なかなか深い問題が扱われているのですが、そうした含蓄すべてを理解することはできませんでした。もっと理系的な思考ができると、この本の言いたいことがよく理解できるのではないかと思います。

ただ面白かったのは、企業にとって目的である「利益を生む」ということについて、会社の常識がそれを阻むことがあることが分かりやすく描かれていることです。

速い工場生産を達成するには、全体のバランスを考慮して、各部署の連関をスムーズにする必要があるのですが、それを無視してとにかく各ラインで「一生懸命」社員を働かせればそれでいいという風に人は思い込みがちであるということです。

もう一つ、このモデルとなった工場の再生が、工場長の離婚の危機と克服と同時に描かれていること。神田昌典さんの『成功者の告白』でも、配偶者・家庭との関係がビジネスと強い相互影響を有していることが強調されていましたが、この本でも、工場にとって本当によい運営とは何なのかを主人公が考える過程で、自分は何のために働くのか、自分にとって結婚とは何なのかを考えることになります。

私たちは、往々にして「究極の目的」というものについて考えず、その場その場のことに「一生懸命」になり、後になり「何かを見逃していた」と思うことがあります。

この本は、たんに企業経営のテクニカルな指摘だけではなく、バランスをとること、目的を見失わないことなど、大切なことを指摘しているように思います。


涼風

参考:「ザ・ゴール~The Goal - CD 9枚で良書がドラマとして蘇る。」『CD、テープを聴いて勉強しよう!! by ムギ』

   “The Goal”Memo

『日本一の大投資家に訊く 経営に花を咲かせる「旦那道」のススメ』

2006年01月24日 | Audiobook
『日本一の大投資家に訊く 経営に花を咲かせる「旦那道」のススメ』というCDを聴きました。話し手は竹田和平さん。「たまごボーロ」で有名な竹田製菓の会長で、上場企業100社以上の株主さんとしても有名な方です。

聞き手の神田昌典さんは、株式市場が脚光を浴びる今の時代の中で、利鞘ではなく企業の応援のために株式投資を続ける竹田さんに、〈本来〉の株式投資のあり方を聞き出そうとしたのだと思います。インタビューは、まさにその神田さんの狙い通りに進んでいきます。

竹田さんの株式投資の目的は、企業の成長を応援して、それによって配当を貰うこと。彼は100社以上の大株主なのですが、その投資は売りぬけが目的ではなく、中小企業に対して資金提供することで、その会社に伸びてもらい、それによって得られる配当で自分自身が社会貢献することだそうです。

そうした彼の行動のバックボーンにあるのが、題名にもなっている「旦那道」です。

竹田さんは今の国家と社会のあり方に批判的で、本来福祉とは国家という機械がやることではなく、「家」がやるもので、「家」がやれないのであれば、その地域の旦那がやるべきなんだと述べます。

昔の旦那というのは、自分の資産を使って町の祭りを仕切ったり、芸者さんに着物を買ってあげたりして、文化の担い手として活躍していました。

竹田さんはそうした旦那のあり方が現在でも必要で、役人が人を助けたりしてもそこに感謝は生まれないと述べます。官僚制が受給者に施しを与えてもそれは巨大組織が受給者に物資をたんに与えることになり、そこには本来あるべき感謝は生まれません。

しかし福祉に必要なのは、与える・受け取る過程で、貰う人は与えてくれる人に感謝し、与える人はそれによって喜びをえることです。そうした貴重な契機が、国家福祉では生まれないのです。

それゆえ必要なのは、家・あるいは地域の「旦那」がほんらい社会と文化に必要な貢献をしなくてはならないということです。

竹田さんはそれを実践するために、株式投資で得る数億円の配当を彼なりの社会貢献に使います。それは例えば、彼と同じ誕生日に生まれた赤ちゃん全員に純金の金貨を送ったり、20万人以上の小学生に自分の著書を配ったり、お菓子博物館を作ったりなどです。

このセミナーの中で竹田さんは、株とは本来「シェア」の意味をもつと言います。その富を分かち合うのが株式の本来の特質だということです。

「福祉は家が面倒をみるべき」という意見は、前近代的な思想として受け取る人がいるかもしれません。

例えば19世紀終わりから20世紀にかけてドイツでは、それまで社会の支配的地位にあった大地主層と、商業市民層(ブルジョア)との間で世代交代にまつわる争いがありました(ドイツでなくてもどこでもありますが)。

その時代に生きたドイツの社会科学者たちの多くは、大地主と農民との間にある「人的絆」が、企業による賃労働関係では組織の中の「非人格的な関係」に取って代わられると主張し、嘆いていました。

こうした大地主と農民との関係が100%肯定されるべきかどうかは分かりませんが、しかし資産を持つ者が持たない者に分け与えるという所に、一種のロマンを見ることが可能だったのだと思います。

竹田さんの考えもこれに近いものだと思います。竹田さんがすごいのは、自分でそれを実践し、自分の莫大な資財を投じて社会貢献を行っているところです。

前近代的な関係がいいかどうかと考え出すと、議論になってしまいます。そうではなくて、組織ではなく、お金を持つ者が他人に与え、与える喜びのためにお金を稼ぐという実践に、一つの理想的な社会のあり方があるように感じました。


涼風

参考:竹田和平さんHP

   竹田和平さんBlog『みんなの「私の夢」』

   『トップファンドマネジャーの負けない株の黄金則』 藤野英人(著)
 
   『清豊の思想』 藤野英人(著)
  

“Rich Dad Poor Dad”

2005年12月16日 | Audiobook
    “Rich Dad Poor Dad”という洋書CDを買ったのは今年の7月だったと思います。まだまだ洋書CDに慣れていない頃でしたけど(今も簡単ではないけど)、内容的にとっつきやすいと想像したからです。

“Rich Dad Poor Dad”は言うまでもなくベストセラー『金持ち父さん 貧乏父さん』の原書。ただ私はこの本を読んだことはありません。でもお金持ち書籍ブームの火付け役はこの本だったろうし、本田健さんの成功もこの本に負うところが大きいのだと思います。本田さんもこの本の内容をよく紹介しているので、その点でも私は英語CDだけど思い切って買ってみることにしました。

ご存知のようにこの本では、人が収入を得るタイプを4つに分けています。

E:Employee     従業員
S:Selfemployee   自営業
B:Busuinessowner  ビジネスオーナー
I:Investor 投資家

ほとんどの人がこの資本主義社会では上記の4つのタイプのどれかで収入を得ています。

現在ではこのキヨサキさんや本田健さんの教えが普及したこともあり、彼らの教えは一般的になっていますが、やはりキヨサキさんの教えが衝撃的だったのは、私たちが考える人生の成功のコースがE:Employee(従業員)のモデルでしかなかったことを暴いたことなのでしょう。

この点は繰り返しCDでも指摘されていますが、普通の家庭ではいい会社で働くために一生懸命に学校でいい成績を修めよい大学に行くよう言われます。

本来その目的は子供に高い収入を持たせようという親の意図なのですが、肝心のその「収入」=お金については普通の親は子供に何もいいません。むしろ「教養のある」
の親は「お金は汚い」「人生でお金は重要じゃない」という態度を見せ、お金について子供と語り合うことをしません。そうせずに単にいい大学に行っていい会社に入ればそれでいいんだ、と言うだけです。

キヨサキさんの親は大学でPh.Dを取るほどの高い教養の持ち主でしたが、どうやって人はお金をたくさん稼ぐことができるのか子供である著者に教えることはできませんでした。彼の人生のモデルには、いい学校に入りいい組織に入るというコースしか思い浮かばないのです。

そこでキヨサキさんは富豪の友達の父親にビジネスを学ぼうとします。

このCDでは、どうすれば人はお金持ちになれるかについては詳しく語っていません(僕の聞き取った範囲では ^^;)。むしろ、貧困層・ミドルクラスというもの(金持ち父さんから見ればこの二つは同じです)がどれだけ人生とお金について堅い思い込みにとらわれているかを説明することにあてられています。

お金の稼ぎ方を教える過程で(友達の)金持ち父さんがキヨサキさんに対し、約束の報酬をちゃんと払わない場面があります。そこでキヨサキさんは怒ります。そのとき金持ち父さんは、「よし、その怒りを大切にしなさい。普通の人は時給が少ないこと、報酬をもらえないこと、それらのことに大きな疑問をもたずに、給料が少ないという理由で次々に職を転々とするだけで、なぜ自分は少ないお金しかもらえないのかということに疑問をもたない。そういう疑問をもつことで、自分がEmployee(従業員)というモデルの罠に陥っていることに気づき、違う人生があることを発見する」という内容のことをキヨサキさんに教えます。

金持ち父さんから見れば、ミドルクラスも貧困層も、組織からお金を貰うという依存的なメンタリティをもっています。またその依存的なメンタリティのために、もらったお金をすぐに使い込んでしまい、しっかりした資産設計をもつことができません。どれだけ収入が多くてもメンタリティが依存的をもつためにもらった分だけ使い込んで自立できないというのです。金持ち父さんから見れば、貧困層もミドルクラスも、親からお手伝いの代わりにお駄賃をもらっていたのが、組織から給料を貰うのに変わっただけで、お金の流れの構造についてちゃんと理解していないということになるそうです。

では、どうすれば人は従業員モデルから脱することができるのか?そのことについてこの本は教えてくれません。ただ、人が人生とお金についてどういう思い込みとらわれているのか、それをはっきりと言ってくれただけでも、やはり世の中に与えたインパクトはとても大きかったのだと思います。


涼風


参考:

「Rich Dad, Poor Dad ~ いまさらながら「金持ち父さん貧乏父さん」はおもしろい」『CD、テープを聴いて勉強しよう!! by ムギ』

心理的な安心感の大切さ 『「フロー経営」の極意』 天外伺朗(話し手)

2005年12月10日 | Audiobook
昨日のボウルビィの本に関するエントリーを書き終わって気づいたのは、この本が天外さんの『運命の法則』という本で取り上げられたのは、他人に対するコントロールを手放す上でいかに心理的安心感をもつことが大事か、またそのことに関して親の養育がいかに決定的かということを天外さんは指摘したかったからだと思います。

『人材は「不良(ハミダシ)社員」からさがせ』でも『「フロー経営」の極意』でも強調していることですが、天外さんは「リーダーというのはチームのメンバーに対する指示が少なければ少ないほどいい」と述べています。指示の少ないチーム運営ほどいい、と。

逆に言えば、指示をたくさん出したくなるチームを改善したいと思うとき、まず指示を出したがる自分の動機をよくみるということです。

『「フロー経営」の極意』は、神田昌典さんが天外さんにどうすればフローな状態のチーム運営をできるか、言い換えればどうすれば(天外さんのように)コンパクトディスクやAIBOといった歴史的発明を実現するチーム運営をすることができるのかをたずねるという趣旨で行われたインタビューです。

そこで神田さんは何度も具体的なノウハウを聞き出そうとするのですが、そのたびに天外さんは「具体的なノウハウを言っても無駄なんですよ。こうすればフローの状態を実現できる方法なんてないんですよ」と述べます。

天外さんに言わせれば、まずリーダー自身が他人のコントロールを手放すレッスンをすべきで、そうした修行を行っていけば自然とフローな状態は実現するということです。

言い換えれば、コントロールを手放せるほど人間的に成長していないのに、いきなり「指示をやめてフローな経営をしよう」としても、必ず失敗するのだそうです。

だから、いきなり理想のフローを目指すのではなく、自分自身がなぜディレクションを出したがるのか、その動機をつねにチェックしながら、少しずつ今のチーム運営を見直していくのがよいということです。

天外さんによれば、理想のフローなチーム運営をしていたのが創立当初のソニーであり、またソニー創業者の井深大さんや松下幸之助さん・稲盛和夫さんなどはフローの状態を理解しているのでしょうと述べています。


涼風


“Mind Mapping” Michale J. Gelb(著)

2005年11月24日 | Audiobook

“Mind Mapping: How to Liberate Your Natural Genius”というCDを買ったのは6月か5月ぐらいだったと思います。きっかけは、神田昌典さんの『お金と英語の非常識な関係(上)』に付いていた英語の対談CDに出ていたウィリアム・リードさんがマインド・マップの公認トレーナーで、この本のことも触れられていたからです。オーディオブックを買ったこともなく英語に自信もなかった私は、それでもこの対談CDがなんとなく聴き取れたので「えいっ」と思って買ってみました。

マインド・マップは今ブームなのでご存知の方もかなり多いかと思います。最近は創始者のトニー・ブザンさん公認の翻訳も出て、アマゾンでトップセラーリスト入りしていますね。

マインドマップとは、じつは僕はちゃんと実践していないのですが、本の内容や出来事を記憶する際に「イメージ」と「キーワード」を意識的に用いることです。

たとえば本を読む際に通常の観念では一文字一文字一行一行“順番に”読んでいき、内容を思い返す際にもその順番を思い返しがちです。

それに対しマインドマップでは、その本の内容から自分の印象に残った「キーワード」や、その内容から受けるイメージを取り出し、書かれた文字の順番ではなく、それらキーワードやイメージをつなぎあわして内容を自分の頭の仲で復元します。

つまり、書かれた文章の順番という“規範”を模倣(=服従)するのではなく、その文章からインパクトを受けたイメージを自分の頭の中でつくり、そこから自分なりのイメージ・キーワードの結びつきを意図的に作り出します。

これは必ずしも新しい記憶法・解釈法ではなく、マインドマップを提唱している人たちからみれば、普段人が自然に行っていることを意図的に再現している方法だといえます。

わたしたちは物事を記憶する際に、必ずしもその出来事を時間軸や順番に沿ってそのまま頭に残しているわけではなく、イメージで記憶しています。しかし一般的な観念として、文章や出来事を“正確に”“規則的に”追わなければならないという規範があるため、人間の脳が本来持っている自由なイメージ力が阻害されています。“Mindmapping”の著者でありナレーターであるマイケル・ゲルブは、そうした規範への囚われを「官僚的」と表現しています。

こうしたイメージのつなぎ合わせでは、書かれた文字の忠実な再現ではなく、自分の頭の自由な発想を駆使します。インスピレーションですね。だからマインド・マップをするさいには、かなりこれまでの思い込みを振りほどく必要がありそうです。

マインドマップとは、そうしたキーワードやイメージの自由な発想に基づいて独自の方法でメモを作ることです。そのメモの形態は、最近出版されたトニー・ブザンの著書『ザ・マインドマップ』を読めば分かると思います(わたしはまだちゃんと読んでいないのですが)。

じつはこの方法は、必ずしもトニー・ブザンさんが発明したものではなく、中井久夫さんが1980年ごろに書かれた『分裂病と人類』にまさにマインド・マップ的なメモが記され、その著書の内容が理解できるように中井さんによって整理されています。つまり、幅広い知識を整理する能力をもっていた人たちは昔から使っている、自然な方法なのでしょうね。それに“マインド・マップ”という商標を与えたのがトニー・ブザンさんということなのだと思います。とはいっても、トニー・ブザンさん自身も独自の道筋でその考え方にたどり着いたのだと思います。

私は上に書いたようにマインド・マップをちゃんと実践していないのですが、このCDを聴いているだけでもその考え方には共感できました。言っていることは、物事を考えるときには、規則や順番には囚われずに、自分の脳の働き・発想を信頼して、その脳の自由なイメージの組み合わせを信頼しましょう、ということだと思います。

元々規範や観念に囚われた私には実践するのはやさしくないのですが、脳の力の可能性を垣間見せてくれる本でありCDだと思います。

こういう自己啓発的な内容の本は、文字だけで読んでも「ああ、もう分かっているよ」で済ませてしまいがちです。でもCDを通して耳で聞くと、シンプルな考え方の大切さがより理解できるのではないかと思います。

著者が自ら吹き込んでいるこのCDは、声もとてもクリアで英語も平易です。初めて英語のオーディオブックを聴く人にはとてもいいんじゃないかと思います。


涼風

これから私が聴いているオーディオブックも紹介していきたいと思います。オーディオ学習は今ビジネスマンの間でもブームかもしれませんし、私が見つけた中では、

『CD、テープを聴いて勉強しよう!!』

がとても詳しくオーディオブックを紹介されていて、楽しい情報がいっぱいのブログです。一日のアクセスも500か1000ぐらいあるそうです。管理人のムギさんは証券アナリストで、同時にワーキング・マザーを支援する活動で“Wall Street Journal”にも紹介されたそうです。すごいですね、

マインドマップについては、

【マインドマップでビジネス書評&セミナー評】

というブログで管理人のsmoothさんが読書記録として自身が作成されたマインド・マップを掲載されています。とてもきれいなマップですごいなぁと思います。


参考:“Mind Mapping” Michale J. Gelb(著) 2 joy - a day of my life -

パウロ・コエーリョ

2005年10月01日 | Audiobook
先日、英語とドイツ語のAudiobookを最近はよく聴いているという記事を書きましたが、ドイツ語についてはパウロ・コエーリョの小説を聴いています。

コエーリョはブラジル人作家ですから、当然ドイツ語はブラジル語、じゃなくてポルトガル語からの翻訳です。どうせドイツ語を聴くのならドイツ人が書いた小説にしたほうがドイツの生活や文化についてよく分かるのではないかとも思うのですが、ゲーテやシラーの名前は知っていても現代ドイツの作家でかつ面白い小説を書く人を知らないのです。

それに、コエーリョはアメリカや日本でも大人気ですが、ドイツでもそれに劣らず、あるいはそれ以上に人気で、彼の小説は必ず翻訳されるし、また彼の小説のAudiobookも必ず出されるのです。ドイツのアマゾンのベストセラーリストに必ず顔を出すし、僕がドイツにいたときも書店の目立つところにいつも飾られていました。それだけドイツ人に受け入れられているのでしょうね。

パウロ・コエーリョというと読む人に希望を与える小説という印象をもつ人がいるかもしれません。たしかに世界的ベストセラーで彼をガルシア・マルケスと並ぶ南米の人気作家に押し上げた『アルケミスト』には、比較的オプティミスティックな文章が並んでいます。

でもそれ以外の彼の作品を読むと、むしろ絶望に彩られた文章が並ぶ作品ばかりですね。もちろんその絶望の果てに一筋の光をもたらすし、そこに行くまでの過程にこそコエーリョ作品の特殊性があります。

たとえば『ピエドラ川のほとりで私は泣いた』 『ベロニカは死ぬことにした』『悪魔とプリン嬢』『11分間』といった作品では、若い女性が主人公ですが、彼女たちはみなどこかで人生を諦め、また諦めているからこそ「堅実で間違いのない」人生を歩もうとしていました。自分の夢を追い求めるよりも、多くはなくても確実な収入を求めて、「人生はこれでいいのだ」と自分を納得させようとします。

なにかこの閉塞的な雰囲気は、私にはドイツから感じた社会の雰囲気ととても親和的なように感じました。経済が不安定なため、余計にどれだけ安定したジョブを得るかを若い人が考えています。

でもそれは日本も、そして世界中どこでも同じなのでしょうね。

本田健さんやロバート・キヨサキさんの本はたしかに衝撃的でした。いわゆるミドル・クラスという存在、いい学校を出ていい企業に入り人生を送る生活は奴隷の生活であることを鮮やかに彼らは教えてくれました。

彼らの本がベストセラーになったり、また起業ブームが起きたりは確かにしています。

でも同時に、いかに自分の人生のリスクを減らし多くない収入でも生活を安定させるかに若い人は腐心している傾向もあると思います。

そうしたグローバルな心理傾向をもつ人たちにとって、コエーリョの作品はたしかに自分のことを言っているように感じているのでしょう。

私はコエーリョのAudiobookはまだ3つしか聴いていなくて、また1つ『11分間』(“Elf Minuten”、がもうすぐ家に届きます。ドイツ語のAudiobookはamazon.co.jpでも品揃えが悪く、紀伊国屋BookWebを通して注文したら、3週間ぐらいかかりそうです。でも、ドイツのアマゾンよりも紀伊国屋webの方が安そう。

3つ聴いていると言っても、べつに意味がすぐに分かるわけじゃもちろんありません。というより、理解するために何度も何度も聴いている最中なんですけどね。

アメリカ同様にドイツでもAudiobookの出版が盛んなんですけど、例えばニーチェのCDもたくさん出ています(因みにマルクスは『共産党宣言』だけ)。ゲーテやシラーといった「ドイツ文化」を代表する人たちのCDも出ているけど、ニーチェも彼らと同じように思われているんですね。でもカントやヘーゲルのCDなんて僕は知りません。
(そのニーチェのCDを買おうかなと知人に言ったら、「ニーチェなんて聴いたら怨念が頭に入ってくるからやめとけ」と言われました。たしかにそうかもしれない)。

もっと安価に外国語のCDを入手できたらと思います。コエーリョのCDは3600円です。まあ6枚もCDが入っているのですが。

じつは“audible.com”という安価に海外のAudiobookを入手できるサイトがあるんですけど、コンピュータに詳しくない自分は、どう活用しようかと今悩んでいます。


涼風

audible.comについての参考サイト:「audible活用法」『CD、テープを聴いて勉強しよう!!』

アカウンタビリティ  『幸せな小金持ちへの8つのステップ 実践編』 本田健(講演者)

2005年05月03日 | Audiobook
下の記事でも書いた本田健さんの講演CDから。

「普通の人は豊かな人のことをズルいと思っているんです。でも私の豊かな友人たちはみんな親切でいい人たちばかりです。豊かな人ほど他人のことを考えるし、普通の人ほど自分のことだけ考えて生きているんですね。だから豊かになれないんです」

と本田さんはおっしゃっています。

たしかに僕はお金を持っている人のことをずるいと思っているなぁ。

僕の場合は、起業してお金持ちになった人ではなく、役人や大企業の人間を「ズルい」とよく思っています。それは、彼らが努力してお金を稼いでいるのではなくて、国家に保護された既得権益をせしめてラクして上手い汁を吸っていると僕の頭は考えるからです。

それは事実かもしれないしそうじゃないのかもしれない。ただ確実に言えることは、彼らを感情的に心の中で裁いているときはぼくは不幸だということ。大切なのはその裁き自体は感情に左右されていることを自覚することですね。

役人がラクな仕事で莫大な報酬を得ていても、それは単なる事実に過ぎない。もちろんジャーナリズムや学者がそのことを指摘して公共的な議論に載せることは大切なことだと思う。

ただ、その単なる事実に怒りや妬みを感じることは僕の側の責任だということ。僕を苦しめる感情の責任は僕の側にあるということ、ですね。

そのことを体で理解できれば、官僚組織や大企業自体は私たちの生活に必要なものであることを本当に理解できるのでしょう。


涼風


「奪う」 『幸せな小金持ちへの8つのステップ 実践編』 本田健(講演者)

2005年05月02日 | Audiobook
本田健さんの講演会CD『幸せな小金持ちへの8つのステップ 実践編』を聴く。

「実践編」と銘打っているけど、CDにはそれほど実践的なことは書かれていません。CDの収録で省かれたのかな。あるいは、僕が「実践的」とは感じなかっただけかも。

本田さん独特の社会構造の見方、例えば世の中の人を従業員タイプ、自営業タイプ、ビジネス・オーナータイプ、幸せな小金持ちタイプにわける見方について詳しく説明していたりします。

例えば、日本の教育では「間違ってはいけない」ことなかり教えるけど、自由人になるように育てられた人は自由に発想する習慣があること。「間違ってはいけない」から、世の中のほとんどの人は優秀な従業員になることを目指す。最も優秀な頭脳をもった人が最も優秀な従業員(国家公務員、大企業etc…)になることを目指す国ですからね、日本は。

本田さんの説明では、従業員タイプは、つねに「休暇と給料がどれだけもらえるか」にばかり気を配る。それを考えると、公務員が天下り先をつねに確保するように「行政改革」を行うのも、日本の教育の結果だと言えます。

わたしたちはつねに「奪う」ことばかり考えて、自分たちから生み出そうとはしない。その点では国家官僚も他の人も同じなんでしょう。

『ガルシアへの手紙』という文章の中では、従業員の多くがどれだけサボることばかり考え、経営者がどれだけ必死の努力をしているのかを考えるべきだ、と述べられています。

もっとも、そこから貧富の差は当然だと考えるのは問題だと思います。また従業員は起業家に劣ると考えるのもおかしいと思います。大切なのは、「奪う」というメンタリティを自分がもっていることの自覚かな。


涼風