CuniCoの徒然・・・岩下邦子の独り言

日々の暮らしの中で、立ち止まったり、すれ違ったり。私の中のアレコレを思いつくまま、気の向くまま。

1枚のCDが届いた・・・

2020-06-20 12:03:54 | 表現にからむ様々なこと


まるで、絵画のようにその音はキャンバスに何者かを描き出す。
それは、それぞれの感情や意識や鼓動や呼吸が描き出すものである。
それぞれが、自立し自律している。
制御され、解放され、絡み合い離れていく。
そんな音楽だ・・・

私は現場に立ち会うことはかなわなかった。

フランソワ・キャリリールというサックス奏者が日本に来るという。
そのジャパン・ツアーのフライヤーをJazzTokyoの編集長稲岡邦彌氏から依頼された・・・
あぁ、また眠れなくなるじゃないか・・・と、思いつつ、好きな作業だから、受けてしまう。
もちろん、お手伝いしていたBitches Brewでのライブも予定されているし、
断る理由はないわけで、ただ、残念なのは、私の睡眠時間が減ること、くらいだ。

実は、諸事情により、予定されていたある会場でのライブが中止になった。
それは、とても残念な理由であった。

日程が空いてしまったこと、何とか、どこかで・・・
予定していた纐纈雅代(as)と井谷享志(ds.perc)と
Bitches Brewで共演した不破大輔(b)というメンバーで
レコーディングできないだろうかという模索が始まった・・・

みなで会場をいろいろ当たった・・・越生の『山猫軒』と決まる。

それぞれのアーティストがスケジュールも調整し、実現に至った。

その時のライブ録音である。

私は、みなさんご存知のように音楽に疎く、
出会った人々は、Bitches Brewでの2年間の時間の中に限られている。
井谷享志(ds.perc)は、このCDで初めて聴く。
面白い。
調和しながら反発する・・・
融和しながら切り刻む・・・
地殻を突き抜けて、マントルからマグマにまでしっかりその根をはっている。
パーカッションという立ち位置は、地球そのものなのだろうな・・・と思う。

不破大輔(b)は、あまりにも有名な人らしいが、
私はこのジャパンツアーのBitches BrewでのLIVEで初めて出会う。
その時の印象が、もう・・・衝撃的だった。
体調不良の中、駆けつけてくださった不破大輔のベースは、
刺激的で色っぽい、魅惑的なベースだった。

纐纈雅代(as)は、私の中では、もう言葉はいらない。
魂を叫ぶ・・・限界のその先へ、常に扉を開け続けるサックスだ。

というわけで、なんとも素敵な3人が、
カナダからやって来た世界を旅する即興演奏家、フランソワ・キャリリールと対峙した。

しかも・・・『山猫軒』で。
あの空間は、いい。

まず、響きがいい。
空気がいい。
環境がいい。
私は昨年、蜩ゼミの声につつまれて、
山口コーイチのピアノを聴きに行った。
とても遠いわけで、行けども行けどもつかないわけで・・・
それでも、行く価値のある空間である。

『山猫軒』がLIVE収録の会場になったことも、このCDにとって、
つまり、アーティストにとって、幸いしているのだろうな・・・

無垢な空気に包まれて、それぞれが、思う存分楽しんでいる。

不破大輔のベースは、血管を流れる血流の様だ。
体中を毛細血管の先の先までその流れは行き渡り、
細胞に静かに命を与える。
そして、たまに停滞し逆流さえもする。
その流れで体温が一気に変化したりする。

サックスが二人・・・これがまた面白い。
個性際立つ二人だからこそ、たて糸と横糸のように絡み合いながら。。。
大河の流れのようなフランソワ・キャリリールのサックスは、
自然の大きな営みであり、人間が創り上げた街の様でもある。
そこに、纐纈雅代のアルト(法螺貝も吹いている)が、
抗い、寄り添い、感情のままに踊り出す・・・揺らぐ炎のように存在する。

素晴らしい一枚だ。

リトアニアでつくられたとのこと・・・
世界中が新型コロナウィルスの脅威にさらされているときに
ヨーロッパの国でつくりあげられた。
このCDのタイトルは、『JAPAN SUITE』
フランソワ・キャリリールは、確かに、
日本でたくさんの愛に出逢ったことであろう。
それは、甘い予感であり、アジアの色合いだったのかもしれない。

ほんの少しお手伝いをしただけであるが、
ジャケットに私の名前まで・・・
Special thanks to・・・とある。
いやいや、感謝は私の方だ・・・
素晴らしい音たちを私の元に届けてくれたすべての人に心からの感謝の意を表したい。

このCDが制作されたリトアニアには、リューダス・モツクーナスもいる。
彼の音楽も・・・たまらない。
私の手元には、彼のCDもある。

Bitches Brewでの二年間は、私にたくさんの宝物を与えてくれた。

1枚のCDが届いた・・・

郵便番号は、まったく違う表記だった。
住所も間違えていた・・・それでも、届いた。
不思議なこともあるもんだ・・・

届けてくださった郵便局の方にも、感謝であります(^.^)