ウリパパの日記

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ローマ歌劇場日本公演 プッチーニ「トスカ」 2023.9.21

2023-09-22 20:16:57 | オペラ

昨日は、久しぶりに海外オペラの来日公演に行ってきました。ローマ歌劇場公演のプッチーニ「トスカ」です。プッチーニのオペラの中ではトーランドットと並んで好きな演目です。しかし生の公演を見る機会が少なく今回が3回目。前回は2000年の新国立劇場公演なので23年ぶりとなります。しかも、今回のローマ歌劇場は初めての経験です。

ローマ歌劇場は1880年に完成した「コスタンツィ劇場」が前身であり、1900年にはローマを舞台にしたプッチーニのトスカが初演されました。その後1928年に王立歌劇場、1946年にローマ歌劇場と改称されています。もともと、ミラノスカラ座やボローニャ歌劇場などの北イタリアのオペラハウスに比べて格下というイメージがありましたが、リッカルド・ムーティーがこの劇場を世界レベルの水準へ引き上げました。2014年に、そのムーティーが財政難や労働組合対応を理由に辞任してから、劇場解体の危機に直面したことはよく知られていますが、この困難な状況を乗り越え、2019年にダニエレ・ガッティーが音楽監督に就任、2022年からは今回指揮したミケーレ・マリオッティへ引き継がれ、コロナ渦を乗り越えた新たな時代におけるオペラハウスの実現にチャレンジしているとのことです。

今年はローマ歌劇場の他にも11月にボローニャ歌劇場も来日して同じトスカを上演します。どちらを聴きにいこうか悩みましたが、ローマ歌劇場により魅力を感じたのでチケットを購入しました。ローマを舞台としてローマで初演されたこのオペラはローマ歌劇場にとって特別な意味を持っているのです。その価値が十分ありました。プッチーニの情熱的な音楽、圧倒的な声の力による演技、そして迫真の舞台に酔いしれてきました。まさにイタリア。ローマが日本にやってきて音楽でローマを体験できると思えば S席59000円のチケット代など安いものです。

事前勉強はこれくらいにして、昨日は午後休暇を取得して上野へ向かいました。期待に胸が膨らむ中、開演40分前に東京文化会館へ到着。

 

今回のローマ歌劇場公演は、椿姫とトスカの2演目です。椿姫は公演を終え、トスカは2日目(東京文化会館の初日)でした。

 

配役表です。

指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:フランコ・ゼッフィレッリ
カヴァラドッシ:ヴィットリオ・グリゴーロ
トスカ:ソニア・ヨンチェヴァ
スカルピア:ロマン・ブルデンコ

管弦楽:ローマ歌劇場管弦楽団
合唱:ローマ歌劇場合唱団

 

フィレンツェ出身の演出家ゼッフィレッリは2008年にローマ歌劇場のためにこの『トスカ』をつくりました。今年はゼッフィレッリ生誕100年に当たります。昭和の時代に見られた王道の演出でしたね。ゼッフィレッリの記事が掲載されていたので、HPから引用しておきます。

荘厳な教会、重厚な内装の警視総監室、そして聖アンジェロ城での緊迫のフィナーレ。その根底にあるのは「演出家には作曲家から託された物語を伝える義務がある」というゼッフィレッリの信念。サラ・ベルナール演じる芝居 を見て、このオペラを書きたいと熱望したプッチーニの想いや描きたかった歌姫トスカのドラマが、ゼッフィレッリの演出と舞台美術によって、迫真の舞台となって繰り広げられます。まさに「神は細部に宿る」と言えます。(引用終わり)

 

座席は1階14列の中央から少し左寄り。豪華絢爛な舞台を少し見上げるような感じです。歌手の声は正面から響いてきます。平日マチネにもかかわらず会場は多くのオペラファンで埋め尽くされていました。ほぼ満席です。昔に比べると若い方が多くなった印象です。自分が歳とったからかな(笑)。海外オペラハウスの来日公演でよく姿を拝見する元総理大臣(第87代-89代)もお見えになっていたようです (^^♪

プッチーニのオペラ、久しぶりに聴きました。トスカは劇的でドラマティックな音楽の中に、歌と身体で感情を表現するヴェリズモっぽさもあって、とても気に入っているのです。ミケーレ・マリオッティさん指揮するローマ歌劇場管弦楽団・合唱団の皆さんは、プッチーニの甘くて流麗な旋律を支え、また主人公が4人とも死んでしまう悲劇の音楽を演出していましたね。この自然で流れるようなオーケストレーションは日本のオペラハウスでは味わえないですね。やはり本場のオペラハウスです。

主役のカヴァラドッシ、トスカ、スカルピアは、皆さん素晴らしかったです。画家のカヴァラドッシを歌ったヴィットリオ・グリゴーロさん、初めて聞きました。文句なしの美声です。声で演技するタイプで声量も桁違い。役柄にピッタリのイタリアンテノールです。こんなすごいスーパーテノールを旬の時期に聞けて幸せでした。冒頭のアリア「妙なる調和」からパワー全開。3幕の告別の歌「星は光りぬ」は感動です。カーテンコールでは声を出せないので、体を張って鳴りやまぬ拍手に応えていました。

歌姫トスカのソニア・ヨンチェヴァさんも負けてはいません。歌唱力、演技力が卓越していました。1幕では嫉妬深い女を演じ、2幕のファルネーゼ宮でのスカルピアとの絡みの場面は特に脳裏に焼き付いています。「歌に生き、恋に生き」の涙を誘う熱唱、スカルピア刺殺の場面では恐ろしいばかりの復讐心を露わにしていました。そして3幕の処刑場で万事休すとなりサンタンジェロ城の城壁から身を投じる場面まで、悲劇の歌姫、ヒロインを見事に演じました。声量面でもカヴァラドッシと互角にわたりあい、躍動感あふれる音楽を感動に導いてくれました。

王党派の警視総監スカルピアを演じたロマン・ブルデンコさんは美声で演技力抜群。今まで見たビデオでは悪のオーラが漂う癖の強いバス歌手が演じることが多かった印象ですが、上品でスタイリッシュ?なスカルピアでした。容姿からそのような印象をうけてしまったのかもしれません。でも2幕でトスカに執拗に迫る場面は、邪悪さと声の力でトスカを圧倒していました。

このオペラ、主役は3人とも舞台上で死んでしまいます。刺殺(スカルピア)、銃殺(カヴァラドッシ)、飛び降り自殺(トスカ)。アンジェロッティも舞台上ではありませんが自殺。この救いようのない悲劇はトスカの投身と、星は光りぬの旋律で幕を降ろしました。その後、聴衆の皆さんは現実の世界に戻り、万雷の拍手となりました。

 

最後に東京文化会館の開演前のロビーの様子を紹介しておきます。久しぶりの海外オペラハウスの来日公演。贅沢なひと時を過ごすことができました。

 

 

 

海外オペラハウスの来日公演は6年ぶりでした。前回は2017年のバイエルン国立歌劇場のワーグナー。ペトレンコ指揮のタンホイザーでクラウス・フロリアン・フォークトさんの圧倒的な歌唱が思い出されます。コロナ渦も収束したので、今後は1年に1回は海外オペラハウスの来日公演を楽しみたいですね。次回は11月の新国立劇場。ヴェルディのシモン・ボッカネグラです。同じイタリアものですがトスカと違って渋めです。

 

最後は上野駅から見あげる東京スカイツリー


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