左上は立方体の写真です。
これを模写しようとするとき,立方体であると意識すると、右のように各辺を平行にして描く人が多いでしょう。
実際に写真の各辺をトレースすると一番右の図のようになるのですが、この場合は各辺が平行でないことが分かります。
線遠近法の知識がある人なら、収束点を頭の中に入れて描こうとするのでしょうが、この場合はかなり収束点が遠方になってしまうので画面上におくことが出来ません。
目に見えた感じでは各辺を描けば真ん中のようにようになりがちなのです。
ところがトレースした線画と比べればかなり違いますから、立体感のある図を正確に模写するのはかなり難しい作業なのです。
下の一番左の図では横の二本の線は左側に開いて見えます。
この図形を模写しようとして先ず二本の横線を描けば真ん中のようになるでしょう。
そこで交差している斜めの線を描き加えれば右のような図になります。
ところが右の図では横線は真ん中の場合よりも左が開いて見えてしまうのですから、模写しようとした原画である左の図とはかなり違って見えます。
実は左の図の二本の横線は平行なのですが、斜めの線が加わっているために左側が開いて見える錯視図なのです。
左の図が錯視図であり、二本の横線が平行であると知っていれば、先に平行線を描いて後から斜めの線を描きこめばよいので、結果として原画に近い模写が出来ます。
このような錯視現象というものは他にもたくさんありますから、見えたとおりに模写しようとしてうまくいかないということは、いくらでもあるということなのです。
上の場合は頭の中のイメージに引きずられて描いてしまうと、原画に忠実でなくなるという例ですが、下の場合は実際の見え方に引きずられると、原画と離れてしまうという例です。
左脳とか右脳とかいう議論でいけば、上の例は左脳の解釈が間違いのもとということになりますが、下の例では左脳の解釈を入れないから間違えるということになります。
右脳で描けばうまくいくと思っても、そうならない場合はあるのです。
平面に絵を描くということは、平面に描けばどのように見えるかという知識がないとなかなかうまくいくものではありません。
天与の才能でもあれば別ですが、試行錯誤などによって経験を積んだり、あるいは絵画の描き方を習ったりしないと、イメージを平面上に的確に表現するのは難しいのです。
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