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ことばによる固定イメージ

2008-06-30 23:08:56 | 言葉とイメージ

 岐阜県で起きた飛騨牛の偽装事件というのは、「ことば」を人間が使っているために起こりやすい事件です。
 飛騨牛というのは岐阜県内で14ヶ月以上肥育された黒毛和種で、日本食肉格付け協会というところで肉質を5等級に格付けしたもののうち、3~5等級のものだそうです。
 2等級以下の肉は「岐阜県産」とか「飛騨和牛」としか表示できないそうです。
 飛騨牛の偽装というのは、2等級の牛肉を「飛騨牛赤身焼肉」として売ったり、3等級の肉に2等級の肉を混ぜて3等級の肉として販売したというものです。

 飛騨牛という名前がつけられると、なにか特別の質であるような印象を受けますが、岐阜県内で14ヶ月以上肥育された黒毛和種ということですから、肥育された地域しか規定はありません。
 同じ種類の牛がとなりの愛知県で肥育されても、そのことだけで肉質が変化するわけではないので、肉質中心で考えればあいまいな規定です。
 肉になった状態だけで見れば岐阜県で肥育されたか、あるいは隣県で肥育されたかは見分けがつくはずありません。
 「飛騨牛」というブランドイメージのおかげで、同じレベルの肉質の牛肉が高く売れるということであれば、同品質かあるいはより高品質の牛肉を「飛騨牛」と偽装して販売しようという業者がでてきても不思議はありません。

 等級付けは、まず脂肪交雑(サシの入り具合)、肉の光沢、肉質のきめ、しまり、最後に脂肪の光沢と質などによって総合評価するといい、この評価が高いほどおいしい肉だとされています。
 このように評価の要素がいくつかあり、その総合評価で等級付けをするというのですから、等級の分かれ目はあいまいなところがあり、素人には判断できない場合がありえます。
 プロによる格付けで2等級でも、素人目からみて3等級と変わりがないという場合がありうるのですから、これを3等級として販売しても疑問をもたれないですんでしまいます。
 さらにいえばプロが見ても見分けがつかないという場合もあります。
 実質的な差がないのに格付けが異なることもあるのですが、ひとたび格付けがされると価格が異なるので、偽装が入り込んでくるのです。

 さらに肉は工業製品ではないので、等級によって格付けしても、個別の肉の質ははっきり差別化されるわけではありません。
 イメージ的にたとえれば、たとえばサシの入り具合でも図一番上の場合のように連続的に変化しています。
 これを5段階に格付けすれば一番下の図のようになるはずなのですが、等級付けされてしまうと真ん中の図のようにイメージされ、各等級内の肉は同じ品質のように理解されてしまいます・
 2等級の肉でも3等級の肉の品質に近いものがあり、その境目は微妙ですから肉が混ざったりすれば見分けがつかなくなります。
 2等級とか3等級とか名前をつけると、はっきりとした境界があるように感じるのですが、実際は境目があいまいなので、そこで偽装が行われてもわかりにくいのです。
 偽装を行わなくても、肉質を的確に判断できる能力があれば、同じ格付けでもより肉質のものを仕入れて販売ることで自然と高い評価を得られるのですから、それで事業が発展するというケースもあり得るのです。 
 


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