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数の判断と言葉

2008-01-08 23:27:17 | 視角と判断

 図Aを幼児に見せて、白い丸と黒い丸とでどちらが数が多いかを聞けば、白い丸のほうが多いと正解します。
 ところがB図についてはどうかと聞くと、黒い丸のほうが多いと答えてしまう子供がいるそうです。
 A図の場合は白丸と黒丸が同じ間隔で並んでいるために、空間的に広がっているほうが数が多かったのですが、B図の場合は間隔が違うために、空間的配置の広がりと数とが一致していません。
 B図で黒丸のほうが多いと答えてしまう子供は、空間的な広がりという視覚的な判断から、数をも判断してしまっています。

 これは子供が数を数えないで視覚的な印象から判断してしまうためですが、大人でも0.5秒ぐらいの短時間の表示で判断を求められれば、数を時間内に数え切れないので視覚的判断に頼らざるをえなくなり、間違える可能性が出てきます。
 
 D図とE図で、白丸の数がC図の黒丸の数と同じなのはどちらかと聞かれたとき、数を数えないで視覚だけで判断するとDのほうだと答えてしまいがちです。
 この場合は全体的な配置の形が似ているほうが数も同じように感じるからで、視覚的な類似性に頼って判断するためです。
 
 言葉を使わないで数えるということは、大人になっても難しいことで、言葉を持たないサルが計算までするとなれば驚くべきことかもしれません。
 言葉を使わないで数を数えるのがどれだけ難しいかは、図Cで目で順に黒丸を追いながら、「イチ、イチ、イチ、、、」と口で言い、最後まで来たとき何個目かを答えようとすれば分ります。
 「イチ、ニ、サン、、」と順に数を口にすれば、自動的にいくつかを答えられるのですが、順序に関係しない言葉を言いながらでは、答えが出せなくなるのです。
 
 音読だけでなく簡単な計算をすると前頭葉の血流が増加するというのも、簡単な計算というのが言葉を使っていて、言葉を使うという点では共通な部分があるからかもしれません。
 複雑な計算や、難しい数学の問題を考えるときはかえって言葉はとまってしまっていますから、簡単な計算を繰り返す場合より脳血流が増加しないのでしょう。
 簡単な計算を繰り返すほうが脳血流が増加するからといって、簡単な計算ばかりしていては数学的能力は進歩しないでしょう。
 ソロバンの熟達者ように言葉を使わないで、自動的に指を動かして作業するという場合、ほとんど前頭葉の血流が増加しないのもうなずけるのです。
 ソロバンの例だけでなく、技術や技能が高度化した場合は、言葉を使わなくなるので、脳血流が余分に増えるということはありません。
 脳血流が増えるというのは未熟な段階を示しているのですから、ゲームをやっている若者の脳血流が少なかったからといって、痴呆と決め付けるのは早計なのです。


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