60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

視覚言語と文字

2008-04-27 23:47:31 | 言葉と文字

 人間の社会で言葉のない社会というのはありませんが、文字のない社会というのはあります。
 言葉といえば基本は音声言語で聴覚を使うので聴覚言語と呼ばれますが、これに対して視覚言語というものがあるとされています。
 視覚言語というと文字言語のことだと思われがちですが、文字は音声言語とは成り立ちも役割も違うので、視覚言語というのは適当ではありません。
 音声言語と同じような役割を果たして、手段が聴覚でなく視覚であるということになれば手話こそが視覚言語というべきです。

 手話というのは手の動きや形、位置の組み合わせで言葉を構成していますが、図の例のように手の動きや形や位置は言葉を区別する要素として使われていて、身振りのように模写をするものとは限りません。
 視覚言語だからといって絵を描いて見せるとか、身振りで真似てみせるということでは必ずしもありません。
 平和とか正義とか言う抽象概念も表現できるので、単なる意味を持ったジェスチャーではなく、独立した言語になっています。

 人間がいつから言語を使うようになったかは直接的な証拠がないのでハッキリは分りません。
 文字のほうは文字が記されているものが残っていれば、それによって少なくともその記された年代を知ることができます。
 つまり話し言葉は内容を直接保存できませんが、文字は記された情報を保存あるいは貯蔵できます。
 というよりも文字は情報の保存がその始まりで、音声言語や手話のようにコミュニケーションの手段として始まったわけではないようです。
 最古の文字とされるシュメールの文字のもとは、土器で作られたトークンで、財産や取引の記録につかわれています。

 社会が複雑化すれば情報の記録、貯蔵が必要になってきますが、最初は統治目的や宗教目的に使われていたにすぎません。
 今でこそ活字が普及し、識字率が向上したので文字は万人のものになっていますが、かつてはごく一部の階級に占有されていたものです。
 文字が作られたのがそう古い時代のことでなく、さらに普及したのがつい最近であることを思えば、文字を視覚言語というふうに呼ぶのは不自然です。
 文字言葉はことあらためて教育をして覚えさせたり訓練しなければ身につかないものなのです。
 江戸時代からのいわゆる「読み書きソロバン」というのも、話し言葉と違って、文字言語は特別に訓練をしないと使えるようにならないことを意味しています。
 
 


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