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漢字の透明性

2007-06-05 22:28:45 | 言葉と意味

 漢字の単語はその言葉を知らなくても文字から意味が大体分かるといわれることがあります。
 たとえば英語でantholopologyという単語の場合、anthlopoはギリシャ語で人類、logyは学問ということですが、普通のアメリカ人はanthlopoの意味を知らないので、antholopologyという単語を見ても意味がわからないといいます。
 ところが日本人が人類学という単語を見れば、人類学を知らなくても人類についての学問だろうという見当はつきます。
 つまり、漢語のほうが英語の単語より見て意味が分かるので、透明性があるという風に主張されるのです。
 
 これは普通のアメリカ人はギリシャ語は不案内なので、ギリシャ語を借りた単語は意味が分からないということで、もし普通に知られているものならすぐに分かります。
 たとえばthermometerはthermoが熱の意味なので温度計というのは普通のアメリカ人でも分かります。
 sociologyが社会学という意味なのはsocio+logyですから社会についての学問だということはもちろん分かります。
 ところが漢語の社会学が社会についての学問だと理解されると、日本人は考えるかもしれませんが、社会という単語は普通の日本人には社会の「社」とはどんな意味なのか分かりませんから、社会とは文字としてどういう意味か分かりません。
 「社会」は明治時代にsocietyの翻訳語として作られたもので、普通の日本人にはすんなり分かるものではありません。
 「社会」の意味を知っているから「社会学」が社会についての学問だということが分かるので、漢字の意味からすぐにわかるということではありません。

 geologyのgeoは土地という意味なので、geologyは地質学ということで、この場合は英語も漢語も文字から意味の見当がつくのでおあいこです。
 しかしgeometryは土地を測量する意味で幾何学のことですが、英語は文字を見て意味が分かっても、漢語の幾何学はいくら文字を見ても意味は分かりません。
 それもそのはずで、幾何はgeoの音訳だからで、この場合は意味の透明性はありません。

 importとかexportという単語はportが「運ぶ」という意味なので、輸出とか輸入という意味の見当がつきます。
 漢字の「輸」が「運ぶ」という意味なのでこの場合は英語も漢語も同じように意味が文字面から分かります。
 transportが輸送というのも同じ関係ですが、porterとなれば漢語は輸人とするわけにいかず、運び人とでもするしかありませんから、漢語のほうが一貫性に欠けます。

 したの二字熟語で、忖、度、課、商、議、料、評、計、略、権、謀、秤はいずれも「はかる」と言う意味なのですが、よほど漢字に詳しい人でないと、文字から意味を理解できないでしょう。
 単語自体は普通に使われているので意味が分かるのでしょうが、使われている文字の意味は良く分からないのではないでしょうか。
 漢字熟語では単語の意味を知っているのに、使われている漢字の意味は分からないという例が結構あるのです。
 単語を知らなくても漢字から意味が分かるとは必ずしもいえないのです。
 


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