あまちゃんの カタコト中文日記

中国・杭州がえりのライター助手、日々のいろいろ。

高田郁『駅の名は夜明け 軌道春秋Ⅱ』(文庫)

2023-02-01 | book


老婆のリクエストで借りたのに、彼女はまったく読めなかった模様。もう小説はムリか...。

高田郁といえば時代小説の名手だが、本書は現代のお話。鉄道を舞台にした9つの短編からなる文庫本。寝る前のお供に最適だ。
さすがは当代の人気作家さんだけあって、どの作品もフツーに面白い。いやフツーなんて失礼かな? 中には2話ほどウルっとくるお話も。とにかく、どの話も読んでいて情景や人物が実にリアルに浮かび上がる。これは「あとがき」で知ったのだが、9話のうち7話はもともと漫画原作として書かれ、それを小説に改めたものだという。なるほど情景描写などが細かく、イキイキしているはずだね。

約束」という少し長めの小説が特に印象に残った。(以下ネタバレあり)

●駅そば(駅の蕎麦屋)で働く、うちのボスちゃんくらいの50代女性K子が主人公。K子は日夜そば屋で働いているせいで、だしや蕎麦つゆの臭いがカラダにしみついている。すでに両親は他界し、天涯孤独の身。両親と暮らしていた安アパートに住み、毎晩シャワーを浴びながら孤独にうちひしがれて涙する日々。そんなK子の唯一の楽しみは読書。この日はお気に入りの人気作家・南條拓海の最新本を図書館で半年待って、ようやく借りることができた。それだけで心は浮き立つ。

●ある日の帰り道、踏切の遮断機の前で立ち止まると、踏切の中に佇む一人の男性を見つける。「死ぬ気だ」。とっさにカラダが反応し、一瞬の隙を見て彼女は男性にタックルし、命を助ける。実はこの男こそ、人気作家の南條拓海だったー 実は極度のスランプに陥り、自暴自棄になって自殺を図っていたのだ。

●その後、立ち直った南條は命の恩人であるK子を探し求め、ようやく駅そばで彼女をみつける。食事に誘い、その後毎晩電話で話すようになる(ちなみにK子は携帯電話は持っていない)。水と油ほどに住む世界が違い過ぎる2人だったが、南條にとってはこれまで付き合ったことのない、地味で生活感たっぷりのK子の話が逆に新鮮でたまらない。

●やがて2人は結婚。南條はK子を貧しい生活から脱却させるべく、そば屋勤めを辞めさせ、自分の高級マンションでの同居を始めた。担当編集者は南條の結婚の報告に驚いた。さらに打ち合わせに訪れた編集者は10以上年上の貧乏臭い妻を見て、唖然とした。南條が買い与えた高級ブランド服も、K子が着ると台無しだった。どう見ても妻ではなく家政婦にしか見えなかった。

●やがて高級マンションにも生活臭が漂うように。そのせいか、南條はこれまで得意としてきた男女のおしゃれな恋物語が書けなくなっていた。大スランプで、担当編集者とも言い争う始末。見るに見かねて、「私に何か手伝えることはない?」と申し出るK子に向かって、「もとはと言えば、あんたのせいで俺の作品が貧乏臭くなるんだ」と南條は罵声を浴びせかけてしまう。書き置きを残し、家を出るK子・・・。(つづく)
なかなか極端な話ではある。
実写化するとしたら、南條の役は誰がいいだろう。できれば長谷川博己あたりに演らせたいが(今放送中のドラマ「リバーサルオーケストラ」の指揮者役も田中圭よりも長谷川博己がよかった)。別の俳優の影もちらつくー ついさっき放送していたドラマ「旅屋おかえり」(BSプレ)に出ていた玉置玲央という俳優。彼なんかピッタリだ。本書のラストのお話「背中を押す人」の主人公(故郷を捨て、役者を目指し上京する役)にも玉置玲央は似合う。ちょっとやさぐれてる?ところがいいのかも。
(いじょー)

PS.花粉症の方、そろそろ出てませんか? ボクはきのうから目がカユいです。
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