総務教育常任委員会の行政視察に11月8日から9日の3日間、宮崎県宮崎市、都城市、鹿児島県霧島市の3市を視察してきました。
今回は3日目の霧島市での視察について報告いたします。
霧島市での視察は、「きりしま防災ナビ」についてでした。
霧島市では、防災行政無線や音声自動案内装置の整備などを進めていましたが、市民からは防災行政無線が聞こえない、市内に住む親が心配なので市外の親族にも災害情報を届けて欲しい、外国人や聴覚障がい者への対応をして欲しい、最新のハザードマップが欲しい、などの意見や課題に応えるために「ライフビジョン」という名前の防災アプリの導入を進めたそうです。
導入までの流れは、2018年頃より情報発信の多重化による手段として防災アプリの導入を検討しはじめ、2020年に予算化し、2021年4月から運用を開始しました。
予算は、当初「緊急防災減災事業債」を活用する予定でしたが、コロナ交付金に切り替えて、約1600万円弱でした。なお、保守費用は、年約350万円です。
アプリの選定は、公募型プロポーザルで行い、株式会社デンソーのライフビジョンに決まりました。
ライフビジョンの機能としては、①一般市民用の機能、②市職員用の機能、③災害対策本部用の機能、があります。
一般市民用の機能としては、利用には個人情報の入力は不要で郵便番号でログインできるという特徴があります。
そして、災害情報等をプッシュ通知で受け取ることができ、その情報は文字と画像で送られてきて、日本語の音声読み上げができます。いくつかの多言語への対応もなされていました。
また、ハザードマップが電子化されているのが大きな特徴です。綾瀬市のそれはPDF化されたもので、そこに情報をあとから追加することはできませんが、霧島市のは、避難所のその時の混雑状況などもリアルタイムで示せるなど注目すべき機能でした。この地図機能は、デンソーの当初のアプリにはなかったものを、頼み込んで開発してもらったものだということで、予算が約200万円上乗せになったそうです。
市職員用の機能では、市民用の機能にプラスして、災害現場から本部へ写真などを直接送信できるようにし、その情報が管理システム上の地図に表示されます。災害現場の情報を市民からも寄せられると、情報が錯綜し混乱することから、この機能は職員のみにしているとの説明がありました。
このほか、職員の緊急連絡や登庁の可否の返答を求めたり、避難所の情報を本部に連絡する機能などが備えられています。登庁できる職員の把握がスムーズにできるので、人員配置の変更などに効果があるとのことです。
なお、ここで対象となる市職員には、会計年度任用職員は含まれないとのことです。
災害対策本部の機能では、上記のすべての機能にプラスして、テレビ電話機能、IP無線機能や災害対策本部開催の連絡など本部内の情報伝達があります。
なお、これらの全体は、パソコンの管理システムで管理されます。
問題点や工夫点としては、アプリの操作に職員が熟達するため、通常業務の中で写真投稿やテレビ電話を活用し、IP無線によるリモート会議なども積極的な利用を促しているとのことです。
また、アプリの利用は、特に高齢者の理解を得にくいことから、広報紙に毎月載せたり、その地域に合わせた防災講座等により繰り返していねいに説明をしているとのことです。親の代わりに市外に住む子どもたちがアプリの情報を見て、心配して災害情報を親に伝えるという事例もあるようです。
課題としては、避難所との情報連携システムが未整備なため、物資管理システムやボランティアなどの受援システムなどの構築の必要性があげられていました。
また、市が複数のアプリを使用することには無駄もあるので、防災アプリとしてだけでなく、見守り機能や交通予約システム機能などをアプリの中に取り込み、全庁的な利活用を検討する必要があるとのことでした。
さらに、アプリは多機能で便利ではあるが、仕事量が増える傾向にあるので、たとえば防災行政無線の作業とライフビジョンの作業のワンオペ化を目指すなど検討をしているとのことでした。
以上、大いに参考となる視察でしたが、特にGPS機能も付与されたリアルタイムな情報が表示できるハザードマップは素晴らしいものでした。災害対策として、そして市民が必要な情報が何かなどを独自に追求し、アプリの改良を実現させた交渉力、企画力など見習うべきものではないかと感じました。
また、市外に住む子どもたちから親などに災害情報が提供されるという視点もこれまでなかった視点だと思います。
神奈川県内では、社会福祉協議会や災害ボランティアネットワークなどを中心に災害時の支援アプリの開発が進められています。こうしたものと行政のアプリとの連携ができれば、さらに災害発生時の対応がスムーズになるのではないかと期待します。
しかし、デジタル化によって効率が良くなることが多々ありますが、一方でアナログでの作業の方が逆に手っ取り早いこともありますので、デジタルとアナログの作業バランスについては、常に検証しながら進めていくことが必要だと思いました。
いずれにしても、防災アプリについては、今後も先進市での取り組みをより研究していかねばならないと思った視察でした。