白杖のトライリンガル

難聴だけじゃない?網膜色素変性症を併せ持つアッシャー症候群の息子達の日常を母の目からつづります。

硫黄島からの手紙

2007-03-11 04:18:02 | その他
映画「硫黄島からの手紙」を見たい見たいといいながら月日がたち、気付いたらもう今週で上映は終わりになるという。
一分一秒を争うほど忙しい毎日を送っていて、映画どころではないんだけど、この映画だけはどうしても見ておきたいと、頑張っていってきました。

一言で、いやぁいい映画だったよ。
普通アメリカが日本を舞台にしたものを作ると、日本人からしたら「へんなのぉ~」っと思わせるような、アメリカ人が日本に対して持っているイメージをそのまま出しているようなところが見えるんだけど、これは、まるで日本が作ったように偏見などなく、ハリウッド映画だというのを忘れさせるようなものだった。
でも、やっぱりお金の使い方が違うから、戦闘シーンなんかは日本の映画じゃここまでは作れないだろうなっとおもったけどね。

内容も、アメリカが作った戦争映画にいつも出て来る、「アメリカが正義」みたいなのはなく、もっと「個々の人間」を見せるものだったと思う。
敵であれ味方であれ、一人一人には妻がいて母がいて子がいて、守りたい家族がある。
その人が死ねば悲しむ家族がある。そういうところを強調していたと思う。

アメリカは当時の特攻隊や、降伏するより自決するという日本人が理解できなかった。
日本人は、死ぬのを恐れない人間なんだと、自分達とは違うものと考えた。だから殺すことに対する罪悪感も薄く、白人社会で似たような文化を共有するドイツ人にはとてもできなかったようなことを日本にたいしてはできた。

でもこの映画のなかでは、その日本人一人一人が本当に名誉の死を喜んで受けたわけではないことを語っている。
矛盾だらけの戦争で、矛盾だらけの思想を無理やり強要され、家族を想い涙をしながら死んだ一人一人の軍人の姿が描かれている。

今のアメリカは(信じられないけど)戦時下にある。
個々のアメリカ人は多くのイラク人が死んでいることをどう思っているだろう。
『ジハード』などといって命をかけて飛び込んでくる人たちを、同じ人間だとは思っていない。
「そんなに死にたいんだったら、殺してやれ」くらいに思っているかもしれない。

どんな国の、どんな人種の、どんな文化をもつ人でも、家族がいる同じ人間なんだということをこの映画は物語っていたと思う。
映画の中だけではなく、今のイラクでも、外から見るとみんな殉死を誇りに思い喜んで死んでいるようにみえるけど、本当は戦時下の日本であったような思想の強要があり、悲しむ家族があるかもしれないと気付いてほしいものだ。

アメリカが作った戦争映画で、こんなに当時の日本を忠実に再現し、アメリカ的視点の歪曲がなく、真に日本人の立場から描いたものは珍しいと思う。

いい映画だったけど、見た後は気分がくらぁ~くなる。
見ている間も、涙がこぼれてつらぁ~い気分になる。

立ち直るのに数日かかりそう。

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