白杖のトライリンガル

難聴だけじゃない?網膜色素変性症を併せ持つアッシャー症候群の息子達の日常を母の目からつづります。

幹細胞を使った治療、臨床試験フェーズ3へ

2017-12-10 14:19:47 | RP
久しぶりに良いニュースを見つけた。

カリフォルニア大学が進める、幹細胞を使った治療の臨床試験が順調に進んでいるとのニュース。
ニュースによるとフェーズ2まで終わり、確実に効果が出ているとのこと。

医療系の記事は難解で、何度読んでもいまいちよく意味が分からないのだけど、どうやらヒト由来の網膜になる幹細胞を目に注入することで、1)視力が少し回復する 2)進行を遅らせる働きがあるようだ。

幹細胞を使った治療は、なんとなく一番現実的な気がしていた。
だって、この細胞はありとあらゆる細胞に生まれ変わることができるんでしょ?
特に、弱っている細胞や、傷ついている細胞があれば、そこに集まり新しい細胞を作るとか。
すご~~~い!

カリフォルニア大学のお医者さんの説明がYoutubeにあったから見たけど、
網膜の中にはまだ死んではないけど、もう機能していない視細胞がいっぱいあるんだって。
その弱っている細胞を元気にする効果があるから、視力が少し回復するらしい。
(私の英語の聞き取りが正しければ)


うまくいけば2020年に臨床試験がおわるらしい。

すこし望みが見えてきた気がする。

私が見たYoutubeの動画はこちら
このニュースの発表
https://www.youtube.com/watch?v=eeL6JT7V_cM

もう一つ
https://www.youtube.com/watch?v=oH4vlVWl6WY


今日のニュースの原文

OIS: Ophthalmology Innovation & Investment
Published on Dec 5, 2017

This company has developed a cell-based therapy (jCell) to preserve and restore vision in people with retinitis pigmentosa (RP), although the therapy is potentially applicable to other blinding diseases, as the treatment is nonsurgical and minimally invasive. jCyte is fully funded through its Phase IIb trial through the California Initiative in Regenerative Medicine (CIRN), and the company’s platform was granted breakthrough designation in 2017. Results from a Phase I/IIa trial (n=28) found jCell to be safe and well tolerated; the Phase IIb trial started during Q3 2017 and is actively enrolling. jCell has “extreme efficacy” in RP, said David Boyer, MD, one of the company’s investigators. jCell is human retinal progenitor cells that are not pluripotent; the mechanism of action is neurotrophic (not regenerative or reparative). “jCyte is the only cell therapy program using intravitreal injection of an ocular cell type versus subretinal,” Dr. Boyer said.

Waterfall plots showed at six months the majority of patients improved with treatment, and efficacy was between 5 and 10 letters in the 1 million and 2 million cell arms; it trended slightly higher to 10–15 letters in the 3 million cell arm, a trend that continued into 12 months.

告知

2017-11-17 12:38:48 | RP
いつまでも秘密にしておくわけにはいかない。

ぶつかったり、つまずいたり、蹴飛ばしたり、生傷が絶えない。
自分で注意するためにも、周りに理解を求めるためにも、そろそろ説明をする時が来た気がする。
進行性であることを明かさず、
病名を明かさず、
難聴と関係していることも明かさず、
ただ、見え方の現状を説明するだけなら、ショックも少なく済むのではないか。

夫に相談してみた。
YesともNoともいわない。
まだ早すぎると思っているのか。
それとも興味がないのか。

告知するときは夫も一緒だと思っていたけれど、もういい。
一人で説明しよう。

いつものようにダイニングテーブルで宿題をしている途中、切り出してみた。

「あんたがいつもぶつかるのはね、目が悪いからなのよ。」

視野が普通の人より狭いことを説明した。

反応は?

・・・喜んでる?

「あーー、なーーんだ、そうだったのか。それでぶつかったり、つまずいたり、転んだりするんだ。」

今までの不可解な出来事は、自分がアホなせいではなく、目のせいだったとわかってちょっと喜んでいるように見える。

「じゃー、これは?よく、見の前にあるのに気づかない。何かを探していて見たはずなのに気づかない。」

「それはね、中心視野のすぐ横にバナナ状に暗点があるからだよ。
見ているところのすぐ横は実は見えてないの。」

「あーーー、そうなんだぁ~。」

じゃぁこういうのは?
こんなこともよくあるんだけど。

次から次へと質問を投げかける長男。
夜盲、ひどい色盲、暗順応の悪さ、光に弱いこと、同系色の色が一体化して見えてしまうこと、すべて説明した。

長男は明らかに喜んでいた。
やっと謎が解けたというように。


これからあなたはずっと、目の悪い自分と付き合っていくことになるんだよ。
今見えている部分も、どんどん見えなくなっていく。

ごめんね、マー君。

本当は見えてないだけなんだ

2017-04-12 07:04:50 | RP
最近長男は目の不自由を時々訴えるようになった。

でも、真実はまだ明かしてない。

長男は最近時々(又はしょっちゅう)起きる不可解な出来事を、自分なりに解釈しているようだ。

「ねぇママ、僕はねどうやら見たものを頭で認識するのに時間がかかるみたいなんだよ。自転車に乗ってたらね、突然『わー水たまり!』とか、あるんだよねー」

見えていたはずなのに、どうして気づかなかったんだろうと思っているんだろう。

ごめんねまー君、それは見えてなかったんだよ。
視野が狭いせいで見えてなかったんだよ。
あなたがバカだからじゃないよ。


でも、言えなかった。

不便な思いをさせてごめんね。




網膜が意味するもの

2017-02-17 06:52:54 | RP
今読んでいる小説の一節に、こんなものがあった。

薄暗い部屋の中、主人公の女がカーテンを開けると、そこにいた男が慌てて目を覆う。

「すまないが、カーテンを少し閉めてくれないか。網膜に問題があって光に目が弱いんだ。」

それを聞いた主人公の女は心の中で思う。


「網膜に問題があある人は、いずれ失明する。」


なんか今更ながら、そっか、網膜に問題があある人は失明するんだ。。。っと思った。

その一節が頭から離れない。


網膜という響きは、なんだかどよーーーんと暗く、おもーい印象がある。

網膜の問題は治らない、手の施しようがない、そのメッセージが暗に含まれていて、網膜と聞くと失明を連想させる、おそらくだから重い響きを漂わせているんだろう。

この小説が書かれた時には、治らないものだった。
たった十数年か二十年前のことだ。

今もまだ治らない。

でも、あともう1歩で治療法が生まれ。私はそう信じている。

網膜と聞いても失明を連想させなくなる日がきっとくる。

きっと。

ips細胞による網膜移植2

2017-02-02 21:41:49 | RP
姉から久しぶりにメールが届いた。

この記事を私に教えたかったらしい。

2/1/2016 NHKニュース

他人に移植しても拒絶反応を起こしにくい特殊なiPS細胞を使って、重い目の病気の患者を治療する「他家移植」と呼ばれるタイプの世界初の臨床研究の実施を、厚生労働省の審査委員会が了承しました。特殊なiPS細胞は、京都大学の山中伸弥教授のグループが作ったもので、培養によって増やし、多くの患者に使えることから、成功すれば数千万円かかっていた治療コストを大幅に引き下げ、再生医療の普及につながると期待されます。
この臨床研究は、他人に移植しても拒絶反応を起こしにくい特殊なiPS細胞を使って、「加齢黄斑変性」という重い目の病気の網膜の組織を再生しようという他家移植と呼ばれるタイプのもので、神戸市にある理化学研究所や、神戸市立医療センター中央市民病院、それに京都大学と大阪大学のチームが去年10月、厚生労働省に実施を申請していました。

厚生労働省の審査委員会は1日、2回目の審議を行い、倫理面や技術面から、計画の内容は法律が定める再生医療の基準に適合するとして、臨床研究の実施を了承しました。

これで国による実質的な審査は終了し、研究チームは今後、厚生労働大臣の了承を得て、臨床研究に参加する患者を選ぶ作業に入ります。そして早ければ、ことし前半にも世界初となる手術が行われる見通しです。

いよいよ数をこなす段階に入ってきたってことかな。

これは素晴らしいニュースです。

iPS細胞による網膜移植の数を加齢黄斑変性でたくさんこなせば、網膜色素変性症の治療も技術的に可能になったら、もっとやりやすくなる。今は一種類のタイプしか作ってないみたいだけど、そのうちタイプも増やして、より多くの人に合うものができると思うな。

政代ちゃん、神様だよ。←高橋プロジェクトリーダーの事ね。
頑張って~~~。

ips細胞による網膜移植1

2017-01-11 17:47:30 | RP
久しぶりに良いニュース。

朝日新聞より1/11/2017

iPS細胞から作った視細胞を失明したマウスの目に移植し、実際に光を感じさせることに理化学研究所の万代道子・副プロジェクトリーダーらが成功した。失明につながる難病の治療を目指し、2年以内に臨床研究を申請する計画だ。

 米科学誌ステムセルリポーツに11日発表する。光は網膜の中の視細胞が感じ取り、脳につながる神経に信号を送る。視細胞は、信号を脳に伝える神経の層と、これらの活動を支える色素上皮細胞の層に挟まれ、体内で新たに作られないため、病気で壊れると視力を失う。

 グループは、理研の笹井芳樹氏(故人)らが開発した、網膜を試験管内で作り出す技術を応用し、マウスのiPS細胞から未熟な状態の視細胞を作製。視細胞を失ったマウスに移植すると、目の中で成熟して正常な視細胞のようになることを突き止めていた。

 今回、移植から1カ月以上たったマウスの目から網膜を取り出して調べると、視細胞が移植先の神経とつながり、光をあてると信号が流れることを確認。マウスの行動テストでも、約4割が光に反応することがわかった。

 グループは次の段階として、ヒトのiPS細胞から作った視細胞の効果や安全性を動物で確認できれば、遺伝が原因で視細胞が壊れる網膜色素変性の患者で臨床研究を始める。万代さんは「移植がうまくいけば、病気の進行を遅らせたり、視力を部分的に回復させたりできる可能性がある」と話す。網膜色素変性は国内に約3万人の患者がいるとみられる。根治治療がなく、カメラで得た情報で神経を刺激する人工網膜や遺伝子治療が試みられている。

 理研では、色素上皮が傷ついて物が見えづらくなる加齢黄斑変性の患者にiPS細胞から作った色素上皮を移植する臨床研究に着手し、2014年に世界初の手術に成功している。(阿部彰芳)


このニュースは嬉しくてうれしくて、何度も何度も読んだよ。
技術的に可能になれば、近い将来治療も夢じゃない。



飛行機どこ?

2017-01-06 22:49:47 | RP
South San Franciscoの山にハイキングに行った。

ここからはサンフランシスコや、海が一望に見渡せる。
木々がない裸山なので、眺めは抜群。



サンフランシスコの空港が近いため、次から次へと飛行機が離着陸する。

子供たちは飽きもせず
「飛行機だー。」
っと指を指す。

ただ長男はなかなか飛行機を見つけられない。

「え、どこどこ?」

っとキョロキョロ。

空を見上げれば誰だってすぐに見つけられる。
見つけるも何も、目の前を轟音をあげて飛んでいく飛行機、嫌でも目に入る。
それが長男は指を指してあげても見つけられない。
すぐ横に立って、長男の目線から指さしてあげても、すぐには見つけられない。

やっと見つけたら
「わー、こんなに近くにー。でっかーい!」
なんて言っている。

「そうだよ、こんなに近くて大きいのになんで見つけられないの?」

っと聞くと

「指さす方角が高すぎたんだよ」
っと文句を言っている。

もちろんこれは、長男の視野が狭いから起こることなんだけど、ここまでひどいと思っていなかったものだから、ショックでショックで。。。

一体どんな視野で世の中を見ているんだろう?

治療法はまだできないのか?

網膜色素変性症とは

2016-11-26 07:21:47 | RP
息子たちが持つ網膜色素変性症とは、
簡単に言うと、網膜の視細胞が少しずつ死滅していく病気。
進行速度は人によってまちまちで、二十代で視力のほとんどを失う人もいれば、中年頃まで使える視力を保つ人もいる。
ただ言えることは、ほとんどの人が50歳までに、ほとんどの視力を失う。

目には桿体細胞と錐体細胞があり、桿体細胞は暗いところで錐体細胞は明るいところで機能する。
桿体細胞の方が、数も多く目全体にあるのに対し、錐体細胞は中心視力を担う。
典型的な網膜色素変性症は、まず桿体細胞から死滅していくため、まず暗いところで見えなくなり、視野がだんだんと狭くなっていく。

長さ60センチのトイレットペーパーの芯を除いたような小さな小さな視野になると、
いったん視野の狭窄は止まるものの、今度は中心視力が衰えだす。
そして、その小さな小さな穴の中も見えなくなっていく。


この病気の人は失明の恐怖を背負って生きていかなければいけない。


言えない。
失明の恐怖を与えたくない。

医者は早く告知しろという。
家族の中で隠し事があってはいけないと。

でも、言えない。
まだ12歳の子供にそんなこと言えるわけない。

せめて、なんらかの治療法が生まれて、
病気を遅らせることができるようになるまで、
希望が持てるようになる日が来るまで、
もう少し、もうしばらく・・・。

でも、そんな日は本当に来るのだろうか。


難聴の理由

2016-11-21 07:21:47 | RP
長男が生まれてすぐ、私たちは遺伝子の検査をした。

異常は何も見つからなかった。

三男も難聴を持って生まれてきた。
兄弟が2人も難聴なんだから、明らかに遺伝だ。

あれから10年、遺伝子の世界は研究が進み今までわからなかったことが、色々解明されてきた。

気になることがあって、もう1度遺伝子の検査をした。

今回は難聴の原因遺伝子が特定された。
それと同時に、この遺伝子異常が持つ本当の怖さもわかってしまった。

難聴は兆候の一つに過ぎなかった。


病名は・・・


アッシャー症候群。




あの日、マーカスの夜盲に気づいた日から、ずっと疑ってきた。
間違いであってほしいと願ってきた。


医者は表情一つ変えずたんたんと説明する。

「10人に一人が持っている遺伝子異常です。遺伝子異常としては少しも珍しくありません。
ただ、タイプがわかっているだけでも100ほどあり、
ご夫婦が同じ遺伝子異常のしかも同じタイプでない限り、お子さんには出ません。」

そして、私たちはぴったり合ってしまった。
すごい確率で。


「現在確率された治療法はありません。
病気の進行を止めることも、遅らせることもできません。」



私の目を移植できないんですか?
長男と三男に一つずつ移植することはできないんですか。

聞きたかった。
でも答えは知っている。
長男の夜盲に気づき、アッシャー症候群を疑った時、私は最初にそれを調べた。

私の目をあげることができたら?

母ならだれもが最初に考えることだろう。
でも答えは


ノー



角膜の移植はできても、網膜の移植はできない。

なんて残酷な・・・。



生まれながらの難聴と、だんだんと見えなくなっていく目の難病、網膜色素変性症。
それがアッシャー症候群。



長男は、そして同じ難聴を持つ三男も、今後だんだん見えなくなっていく目と戦っていかなければいけない。

夜盲

2015-08-10 10:18:57 | RP
長男の夜盲に気付いたのはいったいいつだろう。

2~3年ほど前だったと思う。
目は見開いているけど、どこを見ているわけでもなく、前に伸ばした手で宙を探るようにするそのしぐさを見てすぐに「見えてない」とわかった。
私がそこにいることも、私がそんな彼を見ていることにも気づいてなかった。


それから、時々そんな場面に出くわした。
でも、深刻に考えたことはなかった。

「この子は、夜目がきかないんだ」

その程度にしか思っていなかった。

あの日までは・・・。


夏休みに入る前の6月8日の夜。
リスが電圧計かなにかに入ったとかで、停電になった。
その日、夫が初めて長男の夜盲に気付いた。

長男が難聴を持って生まれてきたときに、目の検査をしている。
それはアッシャー症候群の疑いがないかどうかを確認するためのものだったらしい。
その時に「夜盲に注意すること、10歳前後で発症する場合が多いこと」を聞かされていたらしい。
私は知らなかった。そんな話聞かされていなかった。

そんなことすっかり忘れて日常生活を送っていたわけだが、この日に長男の夜盲を知り、夫がひどくあせった。

私も何か尋常でないものを感じ取り、インターネットを開いた。

「網膜色素変性症?『夜盲から始まり、視野が少しずつ狭くなって、いずれは失明する。治療方法はな・い・』まさか。ばかばかしい。」

あまり深く考えないようにして、その夜は寝た。


翌日夫が昼頃仕事を切り上げて帰ってきた。
とても仕事が手につかないと言って。。。

夫は、長男はアッシャー症候群ではないかと言った。

「何それ?」

生まれつきの難聴と、後に網膜色素変性症を発症する、アッシャー症候群タイプIIではないかと。

え?昨日の夜読んだ、その失明するっていう目の病気?それだっていうの?
バカなこと言わないでよ。

「それは、いくらなんでもあんまりでしょう。」

涙が止まらなかった。
そうと決まったわけでもないのに、涙が溢れて、溢れて。



何もかもが順調だったのに。
耳が悪いと言ったって、補聴器を着ければ聞こえる。
うちの子にとっても補聴器は、近視の人にとっても眼鏡くらいにしか思ってなかった。

学校の成績もよく。第一志望だった私立中学にも入れた。
テニスも上達し、楽しめるようになってきた。
読書が好きで、科学図鑑でも隅から隅まで読むから、なかなかの博識家。
そんな長男の前途が楽しみでしょうがなかった。

いっぱい勉強して、自分がやりたいこと、好きなことを仕事にしなさい。
そういって育ててきた。
「ゲームデザイナーになりたい、ロボットエンジニアになりたい。」
という長男。そんな長男の将来が楽しみでしょうがなかった。
長男本人だってそうだろう。
自分の将来にたくさんの夢を持って生きている。


それが、目が見えなくなるなんて。

間違いであってほしい。
お願い、お願いだから、アッシャーではないと、網膜色素変性症ではないと言ってください。

お願い、長男から目を奪わないで。