平成26年10月23日の消費者庁・公正取引委員会の措置命令を受けて、新聞各紙の報道があった。
内容は、愛知県南知多町で、偽装づくし(←中日新聞の表現)の旅館が消費者庁・公正取引委員会から措置命令を受けたというもの。
対象は、株式会社
豆千待月が運営する「いち豆」「豆千待月」「豆千本館」。水道水を加熱して温泉表示、天然トラフグや和牛と表示して中身は別モノとのこと。
事実関係を以下に整理しておく。
【中日新聞】
中日新聞、オピ・リーナの記事
http://opi-rina.chunichi.co.jp/topic/20141024-2.html
【公正取引委員会】
措置命令の該当ページは次のとおり。
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h26/oct/141023.html
措置命令の内容は次のとおり。(一部を赤色で強調しました。)
(平成26年10月23日)株式会社豆千待月に対する景品表示法に基づく措置命令について
平成26年10月23日
消費者庁
公正取引委員会
消費者庁は、本日、株式会社豆千待月まめせんたいげつに対し、消費者庁及び公正取引委員会(公正取引委員会事務総局中部事務所)の調査の結果を踏まえ、景品表示法第6条の規定に基づき、措置命令(別添参照)を行いました。
株式会社豆千待月が供給する貸切浴場の浴槽における温水及び料理に係る表示について、景品表示法に違反する行為(同法第4条第1項第1号(優良誤認)に該当)が認められました。
1 株式会社豆千待月の概要
所 在 地 愛知県知多郡南知多町大字内海字新田65番地
代 表 者 代表取締役 鈴木 邦弘
設立年月 平成20年2月
資 本 金 1000万円(平成26年10月現在)
2 措置命令の概要
(1) 対象役務
株式会社豆千待月が運営する「いち豆ず」と称する旅館(以下「いち豆」という。)、「豆千待月まめせんたいげつ」と称する旅館(以下「豆千待月」という。)、又は「豆千本館まめせんほんかん」と称する旅館(以下「豆千本館」という。)において提供する宿泊プラン等
(2) 対象表示
ア 「温泉」表示(別紙1参照)
(ア) 表示の概要
a 表示媒体
「楽天トラベル」と称する旅行情報ウェブサイト等
b 表示期間
平成24年11月中旬から平成26年3月17日までの間
(表示媒体ごとに表示期間は異なる。)
c 表示内容
いち豆に設置した「彩あやの湯」、「匠たくみの湯」及び「幸さちの湯」と称する貸切浴場のそれぞれの浴槽における温水について、例えば、「貸切露天風呂 当館の貸切露天風呂は1300mの地下より湧き出る良質な温泉。とろりとした肌ざわりのお湯は日頃の疲れを癒すのにはもってこいです。日帰り入浴も好評です。」等と表示することにより、あたかも、当該浴槽における温水が、温泉であるかのように示す表示をしていた。
(イ) 実際
平成25年8月頃から同年12月17日までの間、当該浴槽における温水は、温泉法(昭和23年法律第125号)第2条第1項に規定する温泉ではなく、水道水を加温したものであった。
イ 「天然とらふぐ」表示(別紙2参照)
(ア) 表示の概要
a 表示媒体
「JTBサイト」と称する旅行情報ウェブサイト
b 表示期間
遅くとも平成25年10月頃から平成26年2月末までの間
c 表示内容
豆千待月における「貸切露天風呂無料『知多の味覚の王様!』DXとらふぐ会席」と称する宿泊プランについて、例えば、「とらふぐ会席大好評!!」、「トラフグ会席(通常料理)[10月1日~3月31日] 内容・特色 地元天然とらふぐを使った料理」等と記載することにより、あたかも、当該宿泊プランの利用者に提供する料理に天然のトラフグを使用しているかのように示す表示をしていた。
(イ) 実際
当該宿泊プランの利用者に提供する料理に、養殖のトラフグ又はトラフグよりも安価で取引されているゴマフグを使用していた。
ウ 「和牛」表示(別紙3参照)
(ア) 表示の概要
a 表示媒体
「じゃらんnet」と称する旅行情報ウェブサイト等
b 表示期間
遅くとも平成24年10月頃から平成25年11月末までの間及び平成25年12月上旬から平成26年1月上旬までの間
c 表示内容
豆千本館において、例えば、「【1番人気】肉食系集合!知多牛・あわび会席」と称する宿泊プランについて、「柔らかくてジューシーな地元和牛の知多牛のステーキ」と記載することにより、あたかも、当該宿泊プランの利用者に提供する料理に和牛を使用しているかのように示す表示をしていた。
(イ) 実際
「和牛等特色ある食肉の表示に関するガイドラインについて」(平成19年3月26日18生畜第2676号農林水産省生産局長通知)における和牛の定義に該当しない牛肉を使用していた。
(3) 命令の概要
ア 前記(2)ア(ア)、イ(ア)及び ウ(ア)の表示は、対象役務の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者へ周知徹底すること。
イ 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
ウ 今後、同様の表示を行わないこと。
【追記 2014-10-25】
「豆千待月」のホームページに次の「お詫び」が掲載されている。「いち豆」「豆千本館」のホームページは探したが見当たらない。
お詫び
更新日:2014/10/25
弊社はお客様ならびに関係各位に多大なるご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。弊社は措置命令を受けたことを真摯に受け止め、再発防止に全力で取り組んで参りますとともに、宿泊業の原点に立ち戻り、何より誠実さを大切にしたサービスを肝に銘じ、再びご信頼いただける旅館へ生まれ変わる所存でございます。
平成二十六年十月二十五日
株式会社 豆千待月
代表取締役 鈴木邦弘
【追記 2014-12-07】
その後の様子が解らないのでサイトを確認した。「豆千待月」のサイトには、11月6日付けでお詫びと伴に返金の案内が掲載されている。「豆千本館」「いち豆」は見当たらない。「いち豆」は入湯税を取っていなかったのか。
南知多観光協会のサイトに反応はないようだ。旅館リストのトップが「いち豆」なのだが。
内海山海旅館組合も反応なし。
【追記 2014-12-28】
国民生活センターのサイトに、消費者庁の措置命令に基づく公示が掲載された。「以下は、2014年12月25日、新聞の広告欄に掲載された情報です。」とのコメント付き。
http://www.kokusen.go.jp/recall/data/s-20141225_3.html
公示内容は次のとおり。
お詫びとお知らせ
平素は格別のご愛顧を賜り厚く御礼申し上げます。
弊社は、不当景品類及び不当表示防止法(以下、景品表示法)に基づく措置命令(平成26年10月23日付)に従い、一般消費者の誤認を排除するため、次のとおり周知いたします。
一 弊社は弊社が運営する「いち豆」と称する旅館において貸切浴場利用を含む宿泊プラン及び日帰りプランを一般消費者に提供するに当たり、平成25年8月頃から同年12月17日までの間、旅行情報ウェブサイト等に、例えば「貸切露天風呂 当館の貸切露天風呂は1300mの地下より湧き出る良質な温泉。とろりとした肌ざわりのお湯は日頃の疲れを癒すのにはもってこいです。日帰り入浴も好評です。」と記載し、あたかも、前記浴場の浴槽内の温水が温泉であるかのように表示していました。しかし、実際には温泉法に規定する温泉ではなく水道水を使用していました。
二 「豆千待月」と称する旅館において「トラフグ会席」と称する料理を含む宿泊プランを一般消費者に提供するに当たり、遅くとも平成25年10月頃から本年2月末までの間、旅行情報ウェブサイトに「トラフグ会席(通常料理)[10月1日~3月31日]内容・特色 地元天然とらふぐを使った料理」等と記載し、あたかも、前記料理に天然トラフグを使用しているかのように表示していました。しかし、実際には天然トラフグではなく養殖トラフグ又はトラフグより安価で取引されているゴマフグを使用していました。
三 「豆千本館」と称する旅館において「知多牛のステーキ」と称する料理を含む宿泊プランを一般消費者に提供するに当たり、遅くとも平成24年10月頃から本年1月上旬までの間、旅行情報ウェブサイト等に「柔らかくてジューシーな地元和牛の知多牛のステーキ」と記載し、あたかも、前記料理に和牛を使用しているかのように表示していました。しかし、実際には和牛に該当しない牛肉を使用していました。
これらの表示は、弊社が実際に提供するものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものでした。
弊社はお客様ならびに関係各位に多大なるご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。弊社は措置命令を受けたことを真摯に受け止め、再発防止に全力で取り組んで参りますとともに、宿泊業の原点に立ち戻り、何より誠実さを大切にしたサービスを肝に銘じ、再びご信頼いただける旅館へ生まれ変わる所存でございます。
平成26年12月25日
株式会社 豆千待月
代表取締役 鈴木邦弘
なお、「この情報は、被害を未然に防止することを目的に提供しているものです。目的を達したと判断された段階で順次、削除します。」とある。
【追記 6 2014-12-29】
「いち豆」「豆千待月」「豆千本館」のサイトに「
お詫びとお知らせ」が掲載されていることを確認。新着情報などの欄でなく、サイト右下最下段の辺りだ。内容は25日付けの公示と同じ。なお、豆千待月のサイトにあった「お詫び」は削除されたように見える。
感想:
措置命令に基づき違反を「一般消費者へ周知徹底する」ため新聞に公示しましたが、具体的な対策は不明です。
消費者庁Weekly第182号(平成26年10月28日配信)に
課徴金制度の法律案が閣議決定されたとあります。まだ制度がなかったのかという思いがします。早期に施行して欲しいものです。
【追記 7 2015-02-25】
「いち豆」「豆千待月」「豆千本館」のサイトにあった「
お詫びとお知らせ」が削除されたようだ。
感想:
どのように公平な対応を完了させたものか気にかかる。
【追記 8 2016-09-02】
オークローンマーケティングのフライパン「セラフィット」の広告不正が報道されるなかで、消費者庁のサイトに
景品表示法関係のページがあることに気付いた。措置命令に関する報道資料がまとめられている。豆千待月や、アイア株式会社のパズル雑誌の不正など多数掲載されている。