『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』、映画館で観ました。
年に一度のお祭“巨大野菜コンテスト”まであとわずか。発明家ウォレスと忠犬
グルミットはプロの害獣駆除隊《アンチ・ペスト》として畑を荒らすウサギから
野菜を守っていた。しかし、ある夜、巨大ウサギが畑を荒らしまわる事件が
発生する‥‥。
あの『チキンラン』から丸5年、今か今かと待ちわびたニック・パークの最新作。
しかも、オイラが愛してやまない「ウォレスとグルミット」の“続編”映画版と
きたもんだ。気持ちがはやるゼ(笑)。だけど、こんなときに限って我が家は
お忙しくて、やっとこさ、公開一週間も経った昨夜に観れたのだが、やっぱり
映画は期待通りに楽しくて、優しくて、温かい。さすが、本年度オスカーで
『ハウルの動く城』と『コープスブライト』を破って、最優秀の長編アニメ賞を
受賞。単純に子供が観る“エンターテイメント”としてもバツグンだし、動物
愛護の精神に、人間のエゴと傲慢(ごうまん)さを絡めた“風刺映画”としても
堪能できる。老若男女、誰が何処から見ても楽しめるクレイ(粘土)アニメに
仕上がった。
さて、映画は、コンテスト用の巨大野菜を大事に育てる人間サマと、隙あらば
それらの野菜を食い荒らそうとする極悪(?)ウサギ軍団との対決かと思いきや、
実は○○○が犯人だったという衝撃事実が待ち受ける。人間のエゴから野菜を
巨大に改良し、人間の迷惑だからとウサギの嗜好さえも改良する。ところが、
その過程で“恐ろしいモンスター”を作り出してしまうという皮肉。それは
“行き過ぎた科学”から人類が“神の領域”に足を踏み入れ、知らぬ間に人間
自身を危険にさらし、築き上げた文明の全てを破壊してしまうやもしれぬという
警告に思えてくる。しかし、よく考えてみれば、この皮肉な構図はそのまま
“現在の映画界”にも当てはまる。日々デジタル化が進む昨今の映画界にあって、
本作ではまるで、その流れに逆行するような一コマ一コマを動かしてのストップ
モーション撮影、、その拘(こだわ)りの“手作り感覚”こそが、観る者の心を
豊かに、やわらかい気持ちにさせてくれる。きっと、ニック・パーク映画の原点は
そこにあるんだろう。そして、その“映画作りのスタンス”は、すべての映画人が
見習わなければならないと思う。