『ティム・バートンのコープスブライド』、観ました。(ネタバレ有り)
19世紀のとある村。結婚を控えた気弱な若者ビクターが、ふとしたことから
死体の花嫁(コープスブライド)に結婚の誓いを立ててしまい、死者の世界へと
連れ去られる……。
あの、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のファンなら、きっとお気に
召してもらえるはず…。“ドイツ表現主義”を駆使した幻想的な町並み風景と、
一癖も二癖もあるシュールでブラックな笑いがいっぱい。コワ面白くって
セツナ笑っちゃう。それから、本作でもすべてのティム・バートン作品共通の
テーマである“弱者へのオマージュ”が見てとれるのが嬉しい。観ながら
オイラが大感激してしまったのは、死者がある事情から現世に舞い戻り、
生き別れとなった家族との再会を果たす場面…、死んでしまったペットの犬も、
逝ってしまった爺ちゃんも、今はみんな“ガイコツ”なんだけど、現実の
世界にいる家族たちはそんな彼らを涙ながらにギュっと抱きしめる。思わず
オイラも大好きだった祖父を思い出し、涙がポロリ…。夢の中での再会を
果たしたような気がした(涙)。
さて、このダークにしてハートウォーミングなドール(人形)アニメーション、、
無機質である筈の人形たちが、人間よりも人間らしい感情を持ち、時に“人間
喜劇”として、時に“人間悲劇”として、我ら人間社会を痛烈に皮肉っているのが、
何とも愉快、痛快だ。それが象徴的に描かれるのは、色彩豊かに描かれる
“死後の世界”で、表情豊かに踊り回るガイコツ達とは対照的に、モノトーン調で
暗く澱(よど)んだ“現実の世界”では、仏頂面で“表情のない人々”が
絶えず私腹を肥やさんと策略を練っている。そして、そんなエゴと欲にまみれた
社会の中で、“真実の愛”を模索する若い男女の姿が痛々しい。一方、死して
“捕らわれの身”となったコープスブライドが、ついに呪縛から解き放たれ、
蝶となって大空に舞い上がるラストシーンは、「自由」への旅立ちと「失恋」の
痛みが入り混じった不思議な余韻に満たされる。切なくも美しいエンディングだ。