
喉元にある手術痕は、かさぶたもなくなり、傷口を縫い合わせたホチキスのような印もない。
場所によるのか、最近の縫合方法なのか、見た目も触った感じもヒモを埋め込んだような状態になっている。
皺に沿ったミミズ腫れなので、人目に触れても気づかれないだろうと思われる。
それでも、ケロイドとして残らないように、ずっとテープを貼り続けるようにと言われた。
横一文字に貼るのなら楽だけれど、25mm幅のテープを同じく25mmほどに細切れにして、縦にダブらせながら貼らなければならない。
傷跡は20センチほどあるので、10枚切って貼り合わせるのを、3日置きにやる。
このマイクロポアという名のテープは、傷跡修復というのか、悪化定着防止というのか、そのような専用テープ。
横には伸びるが、縦には伸びない仕組みになっていて、傷を寄せるように俯き加減で貼るようにという指導を受けた。
パソコン・カメラで自分を写す鏡にして貼るのだけれど、俯くどころか仰け反らせ気味にして貼らないとうまくいかない。
そのせいか、ヒモ状ケロイドとして定着しそうだ。
傷跡なんかどうだっていいし、むしろ勲章のように誇らしかったりするけれど、つっぱり感が強くて、以前のようには上を向けない。
上を向いて歩こうとしても、かなり無理をしないとダメで、かと言ってうつむいたら、それはそれでしびれ感があって違和感がひどい。
ひねるのも傷が引っ張られてしまう無理感があるので、私は見た目には、常に姿勢正しく前向きな人とならざるを得ない。
マイクロポアという絆創膏を自分で買うようにと一番若い担当女医から言われた時には、思わず聞き返してしまった。
ついついあの死刑執行されたケッタイな教祖を思い出したから。
抹殺することをポアと言い、マイクロ波を使った焼却装置を作らせ、死体を完全焼却してしまったこともあったらしい、あの異次元独裁者。
後遺症というタイトルで首の力加減を書く予定だったけれど、前段階の傷が長くなったので、今回はここまで。