能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

優良企業の人事・労務管理 10の仕組みで組織は強くなる・・・弁護士と特定社会保険労務士の役割

2012年07月14日 | 本と雑誌

「優良企業の人事・労務管理 10の仕組みで組織は強くなる」

下田直人著 

PHPビジネス新書 900円・税別

 

著者は、就業規則コンサルタントで特定社会保険労務士。

特定社労士とは、社労士プラスADR(裁判外紛争解決)の一定の手続ができる資格です。


同書は、法律論どおりの現場適用がなかなか難しい労務管理のポイントを具体的なケースを用いて分かりやすく解説されています。

中小企業の経営者にはぜひとも一読をおすすめしたい一冊です。


労働法というと、すぐに弁護士の専門という感じがしますが、弁護士の守備範囲はどちらかというと「何かが起こった」事後が中心となります。

そもそも労働分野を専門にする弁護士が少ない上に、経営サイド・使用者サイドに立つ弁護士は、さらに少数派になります。

弱者を助けるという弁護士の基本スタンスからすると、解雇された労働者を守る、派遣切りにあった派遣労働者を援護する・・・といった地道な活動が労働法を専門とする弁護士の仕事。

しかしながら、会社法がらみのM&Aや大企業の顧問弁護士などの膨大な報酬に比べれば、労働関係の報酬はごくわずか。

報酬のケタが3つ、4つ、あるいはそれ以上違う上に、人の感情や憎悪が絡むのですから労働法専門の弁護士が少ないというのも頷けます。

最近では、司法試験の選択科目からも労働法が外されたということも聞きました。


一方の社労士。

どちらかというと「予防」にきき足を置いた活動が中心となります。

本書の視点も、紛争にならないためのポイントを、かなり泥臭く解説しています。

会社の日常を舞台に活躍する社労士の特徴がわかります。

弁護士法第72条による非弁行為の制約のため、労働法における社労士の活躍するステージは限定的ですが、実務や実践という中に「強み」を見出せば、その職域はまだまだ進化していくと思います。


同書の目次から


第1章 入社時のトラブルを避ける方法

第2章 信頼関係構築のための日常的労務管理のルール

第3章 安心して働きかける仕組みを作る

第4章 労働時間管理で生産性を向上させる

第5章 育児 出産 介護休業

第6章 退職と解雇

第7章 給与で伝える会社のメッセージ

第8章 法廷帳簿など

第9章 安全衛生

第10章 CSR的労務管理が会社を発展させる


章ごとに、「チェックポイント」と「まとめ」があり、読みやすい構成になっています。

現場の労働法を概括的に学びたい方にお勧めです。


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