
登場するのは、賢いキツネとのんびり屋のネコ、それと「バター」。バターとは、追い求めだしたらキリがない、財産、名誉、出世、権力…の象徴。シンプルでなにげない物語には、自分らしく生きるためのヒントが込められている。
「チーズはどこへいった」の類似品で、装丁やタイトル内容からチーズ本をまた別な角度から書いたというのが、本書か。
家宝は寝て待て…。努力や欺瞞…野望。希望。そういうものは、追わない方が得よ。といった感じか。努力したからといって、結果を期待しても無駄だし、という人生の理不尽さに、なにも考えずのほほ~んとしていたほうがよいかんじ。また、議論も必要なし。
でも、それで生きていけるんなら、ほんと、いいけどね。
2匹の狐に関しては、ずるがしこいばかりで、性格の違いもない。2匹の猫にスポットを当てているから。とくに人間らしい努力や葛藤のあるミケが、涙ぐましい。
お人好しのリスさんも、いるよね。こういう人。一番楽な生き方のタマちゃんが羨ましい。
だけど…。人それぞれ。自分がどうしたいかっていうのは。たぶん、私はミケなんだろうけど。いつも、何かに追われて、壁にぶつかっても、走り続けたいと思う。リスにもタマにもなれないし、まして、狐のような人に出会って、げんなりする。
何のわけもなく、なんとなく好きというのが、きっと、いちばん好きということなのだろう
そう。いろいろぶち当たって実感するミケなるねこに共感する。見るもの聞くこと、感じること…香り、身体全体、生きている。そして、好きな空間であり、心地よいものって、なんとなく…であることが多いなあ~。なんとなく好きなものけっこう身の回りにあるのかも…。
上善は水の如し 水は善く万物を利して而も争わず ~老子
冒頭文がいきなりのインパクトです。
しかし、この本はチーズ本が出版されなければ、この世に出なかった作品で、なんというか、この著者は、狐っぽいし、タマでもあるだろう。上手な生き方をする人だ。