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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『「ニート」って言うな!』

2006年07月06日 | 新書教養
   
ニートという言葉は2004年から日本で使われ始め、あっという間に社会問題としての認識が広がり、いまや、小学生でも知っています。仕事をせず、学校にも行かず、求職活動もしていないという完全なマイナスイメージです。うちの塾の生徒の中には、『フリーター・ニートにだけはなりたくない!したくない』という生徒・ご父母も多いです。

本書は、実際にこの現象の分析と、危機感をあおろうとする言説の背景にあるものを、実に綿密に調査しています。

まず、現在、『 未成年の凶悪犯罪は増えていない 』 ということはご存知でしょうか。これは 犯罪統計 を見ればすぐに分かりますし、本書に限らず、何人もの識者が、そのことをずっと指摘し続けています。(私の記憶では、宮台真司氏や村上龍氏とか)

ところが、なぜか不安をあおる報道ばかりが続くために、ありもしない “少年犯罪の増加・凶悪化” を信じこんでしまいます。なぜでしょうか。

その現象に乗じて、“売ろう”とするマスコミや知識人、政治利用したい勢力がいます。(視聴率を上げる、売り上げを伸ばす、予算を取る、法案を通すなど)

ニートの場合、報道のされ方は似ていますが、もう少し複雑です。というのは、実際に日本で定義する“ニート” は増えていますから。しかし、筆者らはさまざまな記録や統計を用いて、そもそも労働経済学の問題であるのに、それを家庭教育や学校の問題にすりかえたり、“怠けるな、甘えるな!”あげくには、“切れる○○才”などとキャンペーンをはったりして、犯罪に結び付けようとする動きを批判します。

その結果、まじめな親が、子育てに不安を感じるだけでなく、世代間の不信感を生じます。

そういえば“ゲーム脳” というのもありましたね。いまや“トンデモ本” の代名詞のようになってしまいました。ゲームをしすぎると痴呆になるとか、ここでもまた凶悪犯罪につながる、などという主張で、ソニーや任天堂には大迷惑でしたが、“そうだ!”と大賛成した親ござんも多いのではないでしょうか(笑)。正直申し上げて、私もそんな気がしましたから…。

とにかくマスコミでいっせいに “新情報” として流されますと、忙しく、どことなく若者に不安を感じている現代人は、すぐに情報として取り入れたがるのではないでしょうか。

若者に対するネガティブキャンペーンは、“凶悪系”(酒鬼薔薇聖斗バスジャック事件 佐世保の事件などを持ち出す)と“情けなさ系”(ニート、パラサイトシングル、ひきこもり)に分けて行うという指摘です。

マスコミ主導で大きな風潮が作られるときには、やはり一歩引いて慎重に考える姿勢が必要です。どんな風潮にも、それぞれに複雑な要因がありそうで、一冊本を読んだくらいではなんともなりませんが、ニートに関しては、本書でかなり整理できました。三人でお書きになっているので、まとまりには欠けますが、関心のある方にはぜひお薦めします。


http://tokkun.net/jump.htm

「ニート」って言うな!

光文社

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『兵士に聞け』杉山隆男

2006年07月06日 | ノンフィクション
   
金正日を“北の暴れん坊将軍” などと軽口をたたき、『まさかミサイルは日本には打ち込まないだろう』 というのがのんきな国民の感覚かもしれません。が、政治家はもちろん、国防を担う自衛隊の諸君や幹部の緊張はいかばかりでしょう。

『万一に備える』 のが彼らの役目ですから…。さらに海上保安庁のほうも同様。韓国とのEEZ の問題が緊迫して来ました。一触即発は言いすぎでしょうか。

北朝鮮のほか、イラク戦争、さらに憲法改正などで、自衛隊がますます話題にのぼることが多くなりました。当塾 の生徒でも、わずかながら、防衛大学や防衛医大への進学希望が増えています。単に就職難が原因か、それとも注目度が増したのか。

災害救助にしろ、治安平和維持活動にしろ、旅行や趣味で出かけるのとは訳が違いますね。生命の危険を承知でさまざまな任務を遂行しているのですが、日本では憲法の問題もあり、尊敬されるどころか、むしろ逆の扱いを受けてしまうことまであります。何か事件が起きなければ、取材もされず、何をやっているのか一般国民は知るすべがありません。いったい当の彼らはどう思っているのでしょうか。

本書は自衛隊を取材したノンフィクション。600ページを超え、渾身の力作というような表現がぴったりの一冊で、取材の徹底振りが特色です。新潮学芸賞を受賞しました。決して自衛隊礼賛の本ではありません。

カンボジアPKOや奥尻島救援といった、大きな事件や救難活動の実態とその裏側を描き、自衛官らが偏見や法律上の規制に苦しんでいる姿を描きます。また、過酷な訓練を超人的な精神力で耐え、命がけの任務に赴く、勇敢な隊員がいる一方で、金のためだけに在籍し、戦場どころか事故現場にすら行けそうにない自衛官のことも赤裸々に告発しています。

本書を読んだら、“自衛官にはなりたくない” と思う人のほうが圧倒的に多いと思いますが、その “いやなことはみんなでやろう” という発想から、ドイツはいまだに徴兵制をしいています。韓国、北朝鮮はもちろんW杯に出ている国では、ブラジルやスイス、ポルトガル、スウェーデン、メキシコ、チュニジア、トーゴ、イランなども徴兵制です。

危険な隣人を抱えてしまった今の日本。徴兵制がないのですから、誰かがその大変で、尊敬もされない任務を負ってくれているわけです。基地問題も同様ですが、“誰か” に任せるとしたら、現場の厳しい現実をよく知ることは、少なくとも一般国民の礼儀かなと思うのです。


兵士に聞け

新潮社

詳 細


http://tokkun.net/jump.htm


『兵士に聞け』杉山隆男
新潮社:666P:860円


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