野山と田園の画文通信・漫画家【とよだ時】の山中徘徊記
山のふみあと日記
山のムダばなし「奥多摩・臼杵山の猫のこま犬」
山のムダばなし「奥多摩・臼杵山の猫のこま犬」
【概略文】
カイコを食べにやってくるネズミは養蚕農家にとって、とてもやっかい
なものです。そのにっくきネズ公を食ってくれる天敵の猫やヘビは、農家
にとっては有り難い存在。養蚕の神としてまつります。
ここ東京奥多摩・戸倉三山の臼杵山の臼杵神社も養蚕の神として祭
祀されています。その狛犬は、猫の姿の石像で、祠の前に控えていると
いいます。
戸倉三山の名は、このあたりが五日市町(現あきる野市)に合併される
前は戸倉村だったので村の名からとったとのこと。
ある年の2月。きょうは青梅マラソンの日。きのう降ったばかりの雪がひ
ざくらいまであり、その中に臼杵権現の石祠がポツンとたっています。積
もった雪の上に杉の木の葉が散らばっています。
「ネコってこれ?」。変わった形とは聞いていましたが、ナルホド、ナル
ホド。猫というよりは、どう見ても格好の悪い犬かブタです。しかしこれでも
りっぱな蚕神さまなのであります。
その帰り、ついうっかり人のあとをついて行き雪の中、道にまよい、盆
堀地区についたのは午後8時半になってしまったことがあります。
・東京都檜原村とあきる野市との境
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山のムダばなし「黒部ダム上・屏風の稜線」
山のムダばなし「黒部ダム上・屏風の稜線」
【概略】 この稜線は大町側から見ると、単調で単に「屏風」と呼んでいたという。
稜線上からは、満々と水をたたえ観光船を水面に浮かべた黒部湖が眺
められます。
ある年の夏、針ノ木峠から北上しました。急下降を注意しながらマヤク
ボノコルについて一息。改めて黒部湖と立山、剱岳の展望を堪能。スバリ
岳は目の前の南峰を小スバリ、北の峰を大スバリというそうです。
赤沢岳は、山頂から黒部川へ下る尾根すじ2533m地点に奇峰の猫ノ
耳、鏡岩などがあって、赤沢の岩場として知られるところ。このあたり一帯
の岩は、赤みを帯びているため、なおいっそう山名になじみます。
さらに黒部湖から望むと夕暮れ時には岩壁全体が赤く染まり圧巻とい
います。後日、黒部湖の遊覧船に乗る機会があり、船中案内放送に関係
のない赤沢岳ばかり見上げていたら観光客の方に妙な目で見られまし
た。
・長野県大町市、富山県立山町との境。
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山のはなし「西丹沢・切通峠の奇妙な鼻息」
「西丹沢・切通峠の奇妙な鼻息」
【概略】 古い話で恐縮です。西丹沢切通峠は山梨・神奈川の両県境の稜線
にあり、山中湖と富士山を望む絶好地。かつては相模・甲斐・駿河
の三国で入会権の争いがあった所。
とくに平野地区と神奈川県世附地区の争いは激しかったという。
峠の東側・切通沢の源頭は小平地で、先年、仲間で野宿したところ。
乱舞するホタルが見事でした。
数年後、一人で立ち寄りました。夜が更けるといろいろな動物が
水を求めてやってきてテントのまわりを徘徊します。いつものこと
です。
そのうち見慣れないものを見て興奮したか、ひときわ鼻息の荒い
動物が近づいてきます。悪かったよ、一晩だけ頼むよ。しばらく様
子を見ていたが無害だと思ったのか、やはり鼻息をたてながら去っ
ていきました。
あれは一体何だったのでしょう。イノシシか?
・神奈川県山北町と山梨県山中湖村との境。
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▼山のムダばなし「富士山と都良香(みやこのよしか)」
▼山のムダばなし「富士山と都良香(みやこのよしか)」
【概略文】 日本で初めて、富士山の山頂の様子を詳しく「富士山記」に記し
た都良香は(みやこのよしか)仙人なのだそうです。この「富士山
記」は有名で、当時の人たちが、富士山についてどんな考えを持っ
ていたかを知るのに、貴重な資料になっています。
都良香は、平安時代初期の漢詩人で、漢学者です。子供の時から
仙人道に打ちこみ、日本の仙人を紹介した『本朝神仙伝』では、24
番目の仙人になっています。
都良香が著した「富士山記」には登った人でなければ分からない
地形や、火口内にある虎の形をした虎岩のことまで書いてあり、富
士登山者第一号は、都良香に話した人だろうといわれています。
『本朝神仙伝』によれば、都良香は菅原道真の先輩で、道真の試
験官になったくらいでした。しかし、官界に入ってからは、道真の
昇進が早く良香を追い抜いてしまいました。都良香は、怒って官職
を捨てて山に入ってしまったということです。
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山の文化伝承に遊ぶ「房総・養老渓谷梅ヶ瀬と大福山」
山の文化伝承に遊ぶ「房総・養老渓谷梅ヶ瀬と大福山」
【概略】 梅林で有名なものに奈良市の月ヶ瀬梅林があります。鎌倉時代の
1205年(文久2年)、真福寺境内に天神社を建立するとき、菅原道真が
好んだ梅を植えたのがはじまりとか。
それを習って房総に梅林の理想郷をつくろうとしたのが、養老渓谷の
西に隣接する梅ヶ瀬渓谷。渓谷の最深部、大きなカエデの大木の下に
旧日高邸宅跡があります。
ここはかつて日向国(宮崎県)高鍋藩士だった日高誠実(のぶざね)と
いう人が入植、開拓したところ。1886年(明治19)、1400本の梅の木を
植えて「梅ヶ瀬」と命名「西の月ヶ瀬、東の梅ヶ瀬」ともいえる梅の名所を
目指したという。
3年後の1888年(明治21)には、産業の啓発と文学の普及を目的に
私塾「梅ヶ瀬書堂」を開きました。日高誠実を慕って若者が大勢集まり、
寄宿舎もあり、全盛には市原、君津、山武、夷隅の5郡から通学していた
そうです。
・千葉県市原市。
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【とよだ 時】山とむら里・雑文画著作
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