チェルノブイリ原発 電源喪失 IAEA「安全性に致命的影響なし」2022年3月10日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220309/k10013523381000.html
https://www.asahi.com/articles/ASQ3976BRQ39UHBI03J.html
ウクライナにあるチェルノブイリ原子力発電所について、ウクライナのクレバ外相は9日午後、電源が失われたとツイッターに投稿しました。
IAEA=国際原子力機関はツイッターへの投稿でウクライナ側から報告を受けたとしたうえで「安全性への致命的な影響はない」としています。
ロシア軍が占拠しているウクライナ北部にあるチェルノブイリ原子力発電所について、ウクライナのクレバ外相は現地時間の9日午後2時ごろツイッターでの投稿で、外部からの電源供給が失われたと投稿しました。

このなかでクレバ外相は「ロシア軍に占拠されているチェルノブイリ原子力発電所への唯一の送電設備が損傷して、すべての電力供給が途絶えた。電力供給を復旧させるためロシアがただちに攻撃をやめるよう国際社会は求めてほしい」としています。
また「予備のディーゼル発電機で48時間は電力が維持できるが、その後は使用済み核燃料の冷却システムがストップするだろう」としています。
IAEA「安全性に致命的影響なし」
IAEA=国際原子力機関は日本時間の午後10時すぎにツイッターに投稿し、ウクライナからの報告として、1986年に事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所について電力供給が停止されたことを明らかにしたほか、現時点で「安全性への致命的な影響はない」とする見解を示しました。
ツイッターでIAEAのグロッシ事務局長は、今回の事態について声明を出し「原発に電力供給を続けるという安全性の担保を揺るがすものだ」としています。
また、その直後の投稿でこれまでの情報を更新し、チェルノブイリ原発にある使用済み核燃料は保管している専用のプールに冷却用の水が十分にあるため、電力供給が停止しているが冷却機能を十分維持しているとしています。
ウクライナ原子力規制機関“キエフの高圧電線の停電が影響”
ウクライナの原子力規制機関は、現地時間9日午前11時20分すぎに起きた首都キエフにある高圧電線の停電による影響で、チェルノブイリ原子力発電所にあるすべての施設への電力の供給が停止したと発表しました。
このため、チェルノブイリ原発では、非常用のディーゼル発電機で原発の安全上重要な設備に電力を供給しているということです。
また、非常用のディーゼル発電機は48時間稼働できるとしています。
一方で、ウクライナ国営の電力会社の情報として「周辺地域で戦闘が行われているため、電力供給網の復旧作業が実施できない」としています。
専門家「すぐに大事故考えにくい」
原子力委員会の元委員長代理で長崎大学の鈴木達治郎教授は「廃炉となってから長時間経過していることから使用済み核燃料から出る熱の量は低く、電力が復旧できないとしてもすぐに大事故につながるとは考えにくい」と指摘しました。
そのうえで「電力供給の遮断が意図的かどうかは分からないが、戦争状態であることを考えるとロシアがさらに攻撃を仕掛けてくることも考えられ、非常用電源がもつ48時間以内に復旧できずに事態が悪化することも懸念される。まずは復旧できるかどうかを注視する必要がある」と話していました。
また、原子力発電所の構造に詳しい日本原子力学会廃炉検討委員会の宮野廣委員長は、チェルノブイリ原発で保管されている使用済み核燃料について「使用済み核燃料は原子炉から取り出されたあとも熱を発するため、専用のプールで保管する。その後も、水を循環させて冷却している使用済み核燃料は一定程度残されている。
廃炉になって数十年がたち、冷却はかなり進んでいて、電源が必要ない空冷式の保管方法に変更されたものもある。状況を注視する必要はあるが、すぐに大事故が起きることはないと考える」と指摘しています。
チェルノブイリ原発とは
チェルノブイリ原子力発電所は1978年から1984年にかけて4基が営業運転を開始し、1986年に事故を起こした4号機は、コンクリートなどで覆う「石棺」と外側を覆う巨大なシェルターで、放射性物質の飛散を防ぐための対策が行われています。
また、1号機から3号機は2000年までに順次閉鎖され、世界原子力協会によりますと、この間に発生した2万体あまりの使用済み核燃料が、水で冷やすタイプと空気で冷やすタイプの設備で保管されているということです。
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引用以上
3月7日現在のチェルノブイリ原発の状況
https://www.jaif.or.jp/information/ukraine_npps_2
2022年2月24日午前5時、ベラルーシ共和国領内からロシア連邦がウクライナに軍事攻撃を行った結果、立入禁止区域内にあるチェルノブイリ原子力発電所のすべての施設、すなわち1~3号機(廃炉段階)、使用済核燃料貯蔵施設ISF-1、ISF-2、新安全閉じ込め構造物、放射性廃棄物管理施設が引き続きロシア軍の支配下にある。
チェルノブイリ原子力発電所の職員が、これらの施設の安全な運転を確保するために、勇気と英雄的行為をもって、ローテーションなしで役割を果たしつつ11日が経過した。
立入禁止区域の放射線自動監視システムはまだ回復していない。発電所サイト内および立入禁止区域にある原子力施設やその他施設の原子力・放射線安全状態に対する規制に基づく管理は現状では不可能である。
発電所内に残っている職員との固定電話および携帯電話による直接の通信は、まだ復旧していない。電話連絡の途絶はロシア軍による同発電所の軍事攻撃と占拠の結果である。
同原子力発電所の職員から入手した情報によると、発電所施設の安全パラメータは依然、基準値の範囲内である。
さらに、SNRIUに届いた情報によると、いくつかの中性子束センサー、閉じ込め構造物のガンマ線量率と空気中の放射能汚染を監視するセンサーが故障しており、閉じ込め構造物内の1つの施設で臨界と多くの放射線パラメータの監視が不可能になった。
占拠されているため、修理のための要員や特殊機材の数が十分でなく、原子力・放射線安全にとって重要なシステム機器の損傷の修理が行われていない。
安全パラメータデータは、多くの指標で悪化傾向を示しており、特に大気中の長寿命放射性核種濃度が顕著である。占拠者側は、立入禁止区域等での放射線安全要件や厳格なアクセス管理手順に著しく違反している。
特に、エアロックの使用義務、「汚染」区域を訪れる際の衣服や履物の交換、除染などの義務を怠り、立入禁止区域とその境界外の軍人と軍用機器の無秩序な移動を行っている。
このことが、施設や立ち入り禁止区域の放射線状況の悪化につながり、チェルノブイリ立ち入り禁止区域外への放射能汚染の拡散を助長している。
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引用以上
チェルノブイリ原子力発電所と施設の保安装置への電力供給が完全に停止。非常用電源によるタイムリミットは48時間の模様 2022年3月10日
https://earthreview.net/chernobyl-power-supply-cut-off/
3月9日、ロシア軍に占拠されているチェルノブイリ原子力発電所と施設の保安装置への電力供給が「完全に停止している」とウクライナの送電企業が明らかにしました。
現地で軍事作戦が続いているため「復旧作業は不可能」と企業は説明しています。
これについて、国内の報道を見ますと「国際原子力機関は、安全への重大な影響はないとしている」というものが多く見られますが、海外の報道を見ますと、ちょっと様子が異なるようです。
チェルノブイリ原子力発電所にある非常用発電機は、停電後も「 48時間稼働する」ということで、冷却装置や保安装置も 48時間は稼働するため、その間は安全だと見られますが、「その後は?」ということは、「推定」しかないようなのです。
どうなるのかはよくわからないですが、英国 BBC の報道をご紹介させていただきます。
チェルノブイリの電力供給が遮断されたとウクライナのエネルギー事業者は言う
BBC 2022/003/10
ウクライナの国営エネルギー会社によると、チェルノブイリの旧原子力発電所から電力が遮断されたという。
ウクライナの送電大手ウクレネルゴは、2週間近く前にチェルノブイリを押収したロシア軍の行動を非難した。同社によれば、この紛争は、1986年に世界で最悪の原発事故が発生したチェルノブイリの電力を回復できなかったことを意味しているという。
国際原子力機関(IAEA)の代表は、このチェルノブイリの電力停止は安全には影響を与えていないと述べている。
チェルノブイリは、もはや稼働中の発電所ではないが、完全に放棄されることはなく、依然として継続的な管理が必要となっている。
使用済み核燃料は現場で冷却されている。
国連の監視機関である国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ長官は、電力供給がなくても、使用済み核燃料は事故を引き起こすほど十分に加熱されないと述べた。
チェルノブイリ原子力発電所の代理責任者であるヴァレリー・セイダは、発電機には 48時間、施設に電力を供給するのに十分な燃料があると BBC に語った。
IAEAは、ロシアの警備員の下で働いている現場の職員たちが、事実上 14日間そこで立ち往生しており、同僚による救援の見込みがないことを懸念していると述べている。
ウクライナのエネルギー相は、スタッフは「精神的に疲れ果てている」と述べ、ウクライナの原子力発電所を保護することは、ウクライナだけでなく、EU、世界にとっても優先事項であると付け加え、できるだけ早くチェルノブイリへの電力供給を回復したいと BBC に語った。
大臣は、ウクライナ上空に「飛行禁止空域を設けること」や、または国連、欧州連合、経済協力開発機構からの任務を提供することが、チェルノブイリ、および他のウクライナの原発施設の安全を確保するだろうと述べた。
ウクライナの原子力会社エネルゴアトムは、チェルノブイリ原子力発電所での電力供給の喪失は、放射性物質の大気中への放出につながり、それがより広い環境に広がる可能性があると述べた。
第1原子炉と第3原子炉の近くにある核燃料貯蔵施設のタンクに水を循環させることにより、20,000本の使用済み燃料棒の冷却を保つためには電力が必要だ。
数日間これを行うことができるバックアップ発電機があるが、主電源が回復しない場合、爆発の危険はないだろうが、水が徐々に蒸発し始め、そこには燃料棒の内側から浸出した物質が含まれる可能性があり、その蒸気は放射性である可能性がある。
しかし、チェルノブイリに精通しているシェフィールド大学のクレア・コークヒル教授によると、そのような蒸気は原発の建物内に保持される可能性が高いという。
「最終的に水が蒸発するのには非常に長い時間がかかるので、これが放射性崩壊につながるとは思っていません。使用済み燃料は、密閉され、構造的完全性を備えた近代的な建物に保管されています」とコークヒル教授は述べた。
「人々がチェルノブイリ施設に入るのは危険ですが、その放射線が外部に漏れる可能性はほとんどないでしょう」
しかし、より大きな懸念は、1986年の原発事故の原因となったチェルノブイリの第4原子炉を覆う安全な閉じ込め構造の空調も機能していないということだ。
それは凝縮につながり、第4原子炉の構造を腐食させる可能性があり、その結果、無期限ではないにしても、施設の廃炉措置が長期間保留されることになる。
チェルノブイリの労働者たちのほとんどが住んでいるスラヴィティチの町も停電している。市長は BBC に、町全体が数時間以内に水と暖房を失うことにつながる可能性があると語った。
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引用以上
ウクライナ全土におけるガンマ線定点リアルタイム観測網は、3月6日に表示が消えたが、今確認したら回復していた。
https://www.saveecobot.com/en/radiation-maps#11/51.2836/30.1829/gamma/comp+cams+fire

チェルノブイリ原発構内の線量は、0.18マイクロシーベルト毎時
しかし、それより100Kmほど南下したキエフ市街で、0.44マイクロシーベルト毎時の表示が出ている。これが何を意味しているか、よく分からない。
IAEAやメディアが、「安全性に致命的影響なし」と発表しているのは、電源遮断から48時間程度のみの話であって、福島第一原発事故直後に、枝野幸男が「ただちに影響はない」と吹いたのと同じで、何の意味もない事態隠蔽のためのデマである。
チェルノブイリ原発は、巨大放射能事故によって廃炉に追い込まれ、稼働はしていない。だから安全かといえば、決してそうではない。
チェルノブイリは軍事用高純度プルトニウムを生産可能な黒鉛減速炉なので、プルトニウム239の含有量が多いため、数十万年を要する恒久地下保管に必要な前段階の地上冷却保管のなかで、100度以下の冷温になるまで数百年の強制冷却が必要である。
この間、水没強制冷却を失うと、燃料被覆管のメルトダウンが起きる可能性がある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%96%E3%82%A4%E3%83%AA%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80
1986年4月の巨大事故によって、稼働中の核燃料、数百トンがメルトダウンと爆発によって溶融デブリと化した核燃料は、100度以下になるまでの数百年間、強制的に冷却しないと、内部に熱が累積して溶融が再開し、再び核分裂を起こして臨界爆発に至り、メルトダウンが再開されて、膨大な中性子や危険なアクチノイド、セシウム・ストロンチウムなどを環境に撒き散らす可能性が強い。
すでにチェルノブイリでは堆積デブリで、中性子が増大しているとの報告があり、局所的に再臨界を起こしている可能性が高い。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/05/post-96333.php
「焼けぼっくいに火がついた」ようなものだが、放置すればデブリ溶融によって核分裂性燃料が結晶化、集合し、中性子が幾何級数的に増えて大きな臨界から「汚い核爆発」も起こしかねない。フクイチ3号機で起きた「即発性核臨界」と似たものだ。
ここには、極めて自発核分裂を起こしやすい大量のプルトニウム240が含まれている。
もし、そのような事態になれば、再びウクライナ・ベラルーシ、最悪欧州全土を、アクチノイド・非アクチノイド元素による「汚い核汚染」を引き起こす可能性がある。
この場合は、新鮮な核分裂と異なり、核燃料物質とマイナーアクチノイド、セシウム137、ストロンチウム90を中核にした、極めて生物に有毒(人類滅亡まで危険性が続く)物質ばかりで占められている。まさに「持続可能な未来」を破壊するものだ。
使用済み核燃料の環境汚染事故は、原発メルトダウンよりも深刻かもしれない。
だから、冷却水に大量のホウ素を入れて、燃料デブリを覆いながら循環させるしかないのだが、それは人間の手作業では不可能で、どうしても電気が必要なのだ。
ロシア軍は、ウクライナ全土の原子力発電所を制圧すると表明し、欧州最大のサポリージャ原発を砲撃によって破壊しながら制圧し、管理下に置いた。
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-idJPKBN2L12HT
こちらは、現役バリバリの稼働中原発だった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A3%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80
稼働中の原発を攻撃するなど、まったく信じられない愚挙だが、おそらくロシア軍の戦線現場では、核反応の恐ろしい意味を理解している人が少ないのだろう。
だから、戦争になれば、破壊することの意味を理解できない軍によって原発が破壊されるために、絶対に原発を作ってはいけないのである。
もし、サポリージャ原発の電源が供給不能になれば、600万キロワットの世界最大級の原発の核燃料がメルトダウンし、ロシアやウクライナどころではない、北半球すべてが汚染され、人類の未来は絶望に包まれる。
子供たちは、知的障害や奇形障害(目に見えないものが大半)ばかりになってしまい、それこそ原始共産社会に向かうしかないのだ。
ウクライナも、こうした現実が予測できなかったはずがないのに、一部の核開発利権者(ロシア人だが)によって原発が多数建設されたことで、自業自得の側面もある。
もちろん日本も同じだ。核兵器によって国威発揚できると信じた妄想の成果が、この戦争と原発の置かれた現実なのである。