リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

人生の旅モデル

2009年12月26日 | Weblog
このブログでも医療を旅にたとえるたとえがしばしば出てくる。

精神科が相手にしているのは「人生」そのものである。
人生を旅にたとえるのは松尾芭蕉の「奥の細道」などでもみられるように、よくある語り口である。
医療者を旅のパートナーにたとえるのはその人の物語(人生)や語りを大事にするナラティブモデルにあっているのだろう。

さまざまな人が医療のシチュエーションを旅にたとえている。

以前紹介した障害児をもつことについて述べた「オランダへようこそ」という有名な短文も旅のたとえだ。

岐阜大学医学部医学教育センターの藤崎 和彦先生は、がんの緩和ケアを「おばあちゃんとのアメリカ旅行」にたとえている。
なぜかおばあちゃん(患者)が突然アメリカに旅行に行くことになってしまった。(癌になってしまった。)。
医療者にあたる孫は英語が少し話せたり、インターネットをつかって下調べを出来たり、海外旅行の経験があったりと、病気や障害を抱えたおばあちゃんよりはすこしはいろいろなことが出来る。
おっかなびっくり二人で旅にでる。
でもおばあちゃんは孫がいるおかげで一人で行くのと比べてずいぶんと安心して旅に出ることが出来る。


なるほどー。

また地域医療やプライマリ・ケアの研究・教育ののちに開業された、開業医の仕事飯島 克巳氏はその著作の中で「人生の旅モデル」」という新しい開業医療のパラダイムを提唱されている。。

人生の旅モデルとは「臨床の場において、まず山あり谷ありの人生を、近い目的や遠い目標を持って旅する人を思い描く。次いで、旅の途上でその人が健康上の問題に遭遇した時に、どのような支援を行えばよいかということを総合的に検討するための臨床モデル」だそうだ。

例えば開業医の行動を「見届け医療」と名づけ、このプロセスに継続的に関わり、それが円滑に進行しているか否かを監視し、必要なら"かかりつけ医"として介入する。
かかりつけ医は「あなたの専門医」であり人生という旅のパートナーといえるだろう。

認知症然り、精神疾患しかり、脳卒中しかり、老化しかり、HIV感染症しかり、癌然り・・・。
感染症や早期の癌のように治療がすめばバイバイという医療の比重は減っている。

すっきり治らない病気や障害でも患者の健康上の問題について一緒に悩み考えてくれ、専門家のもてる力を上手に引き出し、そしてしっかりと見届けてくれるパートナーたるドクターを持ちたい。
不確実な時代、入り口(加入は大歓迎。ドンと来い。だれでも入れます。)はよいが、出口(支払い)はしぶい(保険調査会社の調査員との面談などで身にしみています。)医療保険に入るよりも頼りになるパートナードクターを確保しておくほうがよほど安心だと思う。


開業医療の新パラダイム―人生の旅モデル
 飯島 克巳
 日本医事新報社

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