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精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

介護中の3人に2人が神経過敏・・そりゃそうだろうよ。

2009年12月16日 | Weblog
本日の新聞記事より

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介護中の3人に2人が神経過敏 厚労省調査、ストレス顕著か (共同通信 12月16日)

 団塊世代を含む53~62歳の中で、3年以上にわたり親などの介護を続けている人は、約3人中2人が自分を「神経過敏だ」と感じるなど、精神状態の不安定を訴える割合が高いことが15日、厚生労働省の調査で分かった。
 厚労省社会統計課は「介護期間が長いほどストレスが大きい実態が顕著に出たのでは」と分析している。
 調査は、2005年10月末時点で50~59歳だった男女を追跡し、年1回調査票を回収。4回目の今回は昨年11月、約3万人を対象に実施した。
 それによると、05年以降「ずっと介護をしている」と答えたのは2・6%。このうち自分の精神状態について、過去1カ月間に「神経過敏と感じた」のは64・7%で、ずっと介護をしていない人(45・9%)、介護をして1年以内の人(57・0%)の回答割合をいずれも上回った。
 また「気分が沈み込んだ」と答えたのは57・1%(ずっと介護をしていない人40・9%)、「何をするのも骨折り」としたのは55・5%(同41・7%)、「絶望的だ」と感じたことがあったのは35・1%(同23・5%)だった。

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介護者のストレス、うつというのは大きな問題だ。

社会の貧困化がすすみ家族福祉が期待できず障がい者を行政や医療で支えるケースが増えている。
ややもすると悲しいことだが病院側と行政担当者の押し付け合いのような形になることもまれではない。
その大変さを考えると逆に家族が担っている社会的・心理的な役割というのがよくみえる。

介護の社会化とはいうものの、現行の介護保険や自立支援法は家族福祉を含み資産とし家族に介護者がいることが前程の制度である・・・。

優先順位の問題ではあろうが、現実的に「みろ!」といってもいかんともしがたいシチュエーションというのも相当ある。

結局、退院の話になるとあれこれ理由を付けて逃げ回る家族も相当多い。
みるコストと逃げ回るコストを比べたときに逃げ回るコストの方が小さいと判断すれば当然そうなる。今度は追い回す方が疲れ果てて燃え尽きたり諦めたり・・・。なんとも不毛な争いである。

あるいは兄弟や家族の中で弱い立場のものに押し付けられたりする。(嫁など)
しかしサポート体制がつくれないまま周囲が追い込むと、介護者がうつになったり、倒れたり、あるいは虐待につながったりする。

それでも在宅や地域で暮らすなんでどだい無理だ・・・。とは言いたくはない。
施設に押し込めるでも、家族に押し付けるでもないもう少しましな道はあるはずだ。

(善意の人への押しつけ)→((ケアするひとのケア)する人のケア)する人のケア)・・・→ (ケアしケアされる)ネットワーク

というのは自分のテーマの1つでもある。
目指すべきは「誰一人として孤立させない社会(Society for all)」ということであろう。

貧困化、少子高齢化を迎え、この問題から目をそらさずに、この国の社会保障を含めた医療福祉の仕組みを根本的なところから見直す必要がある。


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