リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

中小二番手病院の悲哀と活路

2012年01月15日 | Weblog

「第28回(長野県)厚生連医療を考えるシンポジウム」が長野市のJA長野県ビル、アクティホールであったので行ってきました。

長野県内の11の事業所(病院)からは病院規模ごとの参加者の割り当てがあり、主に役職の付く人を中心に動員がかかっています。忙しい、若手のソルジャーはとても来られないし、来たくもないだろうけどね・・・。
年始に気勢を上げ厚生連組織全体としての一体感をもとうということで毎年企画されているイベントのようですが、例のごとく休日をつぶしてのサービス出勤強要でモチベーションが上がるんだか、下がるんだか。
厚生連には伝統的にこういうイベントが異様に多い気がします。

安曇総合病院からは30人くらい参加しバス1台を仕立てて長野に入りましたが、古巣の大御所、佐久総合病院などは100人くらいは参加しているようでバス2台で参加していました。


(JA長野県ビル、噂に聞く本所(ほんじょ:JA長野厚生連全体を取り仕切る謎の本部組織)ってのはここの10階。)

午前は例年、院長が持ち回りで話しているらしく今回は小諸厚生病院の小泉先生とと篠ノ井厚生病院の院長の話でした。
そして午後は外部講師を呼んでの講演やシンポジウムが多いようですが、今年は災害支援をテーマとしたシンポジウムでした。
私は安曇総合病院を代表してシンポジストとして登壇させていただきました。

他の病院の院長の話なんて聞いてもつまんないかな~と思っていましたが結構面白かったです。
再構築を控えるマグネットホスピタルである佐久総合病院の高度医療センターが近くに移ってきて二番手病院としての立場に甘んじなくてはならない小諸厚生病院と、人口も比較的多い長野市南部の中核医療を担う急性期病院の篠ノ井病院との立場が対照的でした。

小諸厚生病院の小泉陽一院長の話は、2番手病院に甘んじざるを得ない赤字、中小病院の悲哀の話でした。

県や国、患者も大病院に力をそそぎますし、医師も患者も大病院志向、あるいは開業志向です。
大学からの派遣も後回しで二番手病院は黙っていても人が集まる病院ではありません。
都市部のようにスペシャリティをもった病院として選択と集中して機能分化するにはそもそも過疎地は不利だし、高度なことをやるには人材、特に医師に依存します。
結局、変わり者、疲れ果てた医療者が中小病院志向だそうです。
(たしかにその通りです(^_^;) うちもそうです。)

しかし高齢者の増加、地域社会が崩壊していくなか、大病院への集約と在宅医療の狭間はどううめるのか?

高齢者、弱者は大病院にはかかりにくい、そこに活路を見い出すということのようです。

人や金が集まらなければ中小病院は落ち穂拾いのような仕事ばかりになってしまうといいます。
(私は落穂ひろい大いに結構と思いますが・・)

しかし実際、高齢社会の医療はそう簡単ではありません。
高齢者は複数の疾患をかかえ診断は難しい、しかし検査は希望しない。
しかし覚悟ができているわけではない。
救急車で運ばれれば特に家族はやれることは何でもやってくれと言います。
状況が悪化することも多く緊急対応が求められ、手がかかる割には収入には結びつけにくい。
今後も医療費削減の圧力は強まる一方です。
しかし介護の関係から遠方の病院や施設というわけにもいかず地元志向が強い。

結果、中小病院にも腕のいい医療者は必要なのです。

病院に見切りをつけて中堅どころの医師が多く開業したそうですが、在宅医療志向の開業医を主体にしてオープンベッドで上手くまわしていくということはできないんでしょうかね。
実力があり、覚悟もあって、コミュニケーションがとれる開業医が少ないんでしょうかね。


では、どのように腕のいい医者や専門職を集め育てるのか。
医局制度が崩壊した今、地域の中で連携を強化し、マグネットホスピタル構想は縦の関係ではなく横の関係で構築してほしい。地域の中で人材育成しライフサイクルにあった人材移動の仕組みをというのが主張でした。



そういうことであれば、経営統合しふたたび小諸分院にしたほうが人材の移動もやりやすいと思うのですが・・。
小海赤十字病院が佐久総合病院小海分院に移管されましたが、同じ厚生連だから日赤病院などよりもはるかにやりやすそうな気もします。そもそも小諸厚生病院はかつて佐久病院の小諸分院だったのですから。
(サンヨーとパナソニックみたいなものですね。)

しかしプライドもあるのか感情的には難しそうです。



小諸厚生病院は紆余曲折の末、市役所と併設して再建する計画だそうです。
市立の病院でもないのに、そういう形がとれるというのは新たな展開も可能かとも思います。
楽しみですね。

続いて篠ノ井厚生病院院長の木村薫先生の話。
こちらは比較的人口の多い地域ではあるが病院は少なめであり救急医療や急性期医療にも積極的で患者も増えており、、医師などの招聘では苦労してないとのことでした。
小諸厚生病院とくらべても余裕のある感じでした
100億かけて増改築を行うそうですが、建て増しを続けた病棟をどう建て替えるか、送電線との関係や道路をまたぐ渡り廊下の許認可、県や市との折衝などパズルみたいな大変な作業だと思いました。
放射線治療はニーズもあり計画もあるのですが、治療医のめどが立たず立てられる準備だけはしているような段階だそうです。


内科や外科がしっかりしていて背景人口も多い篠ノ井厚生病院ですら、放射線治療機器を入れることを計画していないのに、ニーズもあやしい安曇総合病院が放射線治療機器を入れたところで使いこなせるとはとても思えません。
うち(安曇総合病院)が今から中核病院を目指すのは非現実的(院長は諦めていないようですが)であり、スペシャリティをもった2番手病院としての中小病院としての道を目指さすのが適当でしょう。
うちも松本の相澤病院の安曇分院でもいいくらいです。いや、むしろ厚生連が相澤病院を買い取って松本厚生病院にして安曇分院にすれば全て解決?(^^ゞ。無理か。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿