リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
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健康格差とソーシャルキャピタル

2006年09月04日 | Weblog
 もはや恒例となったらしい日本福祉大学の公開講演会。こういう催しが充実しているからこの病院(地域)はいい。多方面でご活躍されているニ木立先生と近藤克則先生、牧野忠康先生の公開講演会があり多くの職員が参加した(医師の参加は少ないが)。日本福祉大学の21世紀COEプログラムで南佐久地域を研究調査のフィールドとして選んでいただいたことによる恩恵で毎年調査にあわせて開かれ今年で7回だそうだ。

 ニ木先生のズバズバぶったぎる頭が切れすぎる話を聞くのは快感ですらあるが、他の会議のため話は聞けなかった。しかしリハ学学会他で今年すでに同じようなテーマの話を2回ばかり聞いているからよしとしよう。レジュメを見ると医療制度改革の展望と予測の話だったようだ。データや根拠をしっかりあげてあるので説得力がある。公的医療費の総枠の拡大と、それを実現するための医療者の自己改革と制度の部分改革が必要との提案。自分の主張と一致する。

 途中から聞くことができた近藤先生は介護保険制度と健康格差、ソーシャルキャピタル(人々のつながり)に焦点をあわせての話。格差(Gap)は昨今のキーワードだ。Gapに気づき、それに取り組まなくてはならないのに、ますますの不平等で格差は広がっている。それでも佐久地区や佐久病院にはソーシャルキャピタルが蓄積されており、健康な状態が保てているのだとのエール。宅老所、八千穂の家の征矢野さんのよく使うキーワードである「関係力」にも通じる。
 イギリスは健康の不平等へのプログラムを開始した。「We any longer ignore the health inequalities,We have started to tackle this health gap. UK Deat.of Health 2003」。さて我々のとるべき行動は?

 二木先生、近藤先生ともに、もとリハ医だが、研究者の世界にはいった。実践に根拠や理論を与え今後の指針を示す研究者という道もあるか。

 生活と政策との論理の乖離を嘆く牧野先生は医療崩壊と医療政策について北海道は根室でのフィールド調査の実例をあげての解説。銃撃、拿捕事件でわかるように、そもそも外交政策の失敗で機関産業(漁業)が崩壊しかかっている状態。外務省などもあまり本気ではないような状態の中、鈴木宗男は、それでもがんばって仕事をもってくるので人気があるようだ。
 医療制度改正にあわせて、経営が成り立たなくなった療養型中心の病院自体は計画的につぶされ、患者や職員は路頭にまよっている。老朽化した別の病院の立替も医師が集まらず計画は屯坐。その責任を市長がとり立候補を取りやめるなど、大変な状況のようだ。

 北海道と長野の産業、医療の違いをテーマとして追いかけている自分にとっては興味深い話だった。しかし、北海道でもせたな町や、厚岸町、札幌の若者など民度では佐久地域の上をいくかもしれない地域があるのも事実。医療が貧困なところから何とかしようと作り上げていく過程で民度はあがっていくのかもしれない。難しいのは継続するということだろう。

 南佐久でも北相木りんねの森のような取り組みもあるが、全体としては佐久も現在の状態を当然視しすぎており、メディコポリスの理念、民度を上げ、ソーシャルキャピタルを蓄積するような保健医療福祉活動がおろそかになってはいないか?
 
( 佐久は若い医者があつまるモデルをつくっており安泰のように言われたが、実はこれまで指摘しているように実は相当危険な状態(危篤)なのだが・・・。)

医療から保健福祉へ軸足を移すべきときが来ているときがきていると思われる。