玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

3月11日の観察会

2018-03-11 20:24:39 | 観察会

 3月11日に観察会をしました。今回の目的は津田塾大学キャンパス内に新たなタメフン場を見つけることです。というのは1月23日に新雪の上に残されたタヌキの足跡が玉川上水沿いの林にたくさんあったので、ここに見落としているタメフンがあるだろうと思い、それをローラー作戦で見つけようというものです。

観察会後のマーカー発見の話はこちら


記念撮影


この写真は最後に撮影したものですが、津田塾大学に行くまで鷹野橋から玉川上水沿いに歩きました。まだ3月、あまり花もなかろうと思っていましたが、早速ヒメカンスゲの花を見つけました。それで雄花と雌花があること、風媒花であること、日本には多くのスゲがあることなどを話しました。


ヒメカンスゲの説明


それからウグイスカグラが咲いていたので、その説明をしました。それからクサボケも咲いていました。

コナラのドングリがたくさん落ちていて、発根したものもあったので、その説明をしました。


根を出したコナラのドングリ


「ドングリのどっちが上でしょう?」
「尖ったほう」
「なんで」
「普通そう置くから」
「でも、これが帽子なら、こっちが上じゃない?」
「そうか」





「でも、これを見ると根を出している。根が下なのだから、この幼い植物にとってはこっちが上というわけだ」
「そうか」
「でも、母樹に花が咲いたときは、帽子の側が花の基部になるから、そのときはこっちが下なわけだ」
「はあ」
「ドングリは種子で、中身は子葉です。これが双葉になる。大きいということは大きな植物としてスタートできるから死亡率が低く無駄がないが、親は負担が大きい。だから豊作のあとは凶作になります。これはクマにとっては大ごとで、ドングリがならないと遠くの林まで探しに行きます。これに対してススキのような植物は小さな種子を大量に作ってどこにでも飛んで行きます。ほとんどは暗いところや水の中に着地して死んでしまいますが、少しでも明るい場所に着地すればよいわけです。動物でいえば、サルの仲間のように大きい子供を少数産んで大切に育てるものと、マンボウのように一億もの卵を産んで全く育てないものがいます。動物でも植物でも同じことがあり、前者は安定した環境が、後者は不安定な環境が好都合です。」



 津田塾大学に着くと、まず守衛さんに提出していた名簿を確認し、番号札をかけました。それからキャンパスマップを見ながら、今日、行くべきところを説明し、芝生で自己紹介をしました。


マップで今日の行程の説明


自己紹介


 それから玉川上水沿いにマーカー入りソーセージをおいてくれた棚橋さんにその説明をしてもらいました。


説明する棚橋さん


 それから、まず、そもそもタヌキのタメフンとはどういうものであるかを見てもらうことにしました。行く途中にフッキソウが咲いていたので、その説明をしました。


フッキソウ


 グランドの脇に去年アマナがたくさん咲いていたので探しましたが、流石に早すぎたようです。


アマナを探す


ついでに「花マップ」の説明もしました。


花マップの説明


 それから「タメフン3」とよんでいるタメフン場に行きました。フンはありましたが、思ったほどの数はありませんでした。周りにカキ、ムクノキ、エノキ、センダンなどの種子がありました。またアオキなどの芽生えがあることに気づいた人もありました。


タメフン場で観察する


 私が分析用の糞を集めていたら、麻布大学の若林さんが「なぜ、糞を一つ一つ分けて拾うのですか?」と質問しました。私は答えました。
 小学生の身長を測定して平均値を出すとします。背の低い子から高い子まで結果が得られます。これを、サンプル数が少ないからといって同じ背の高い子を何度も測定して平均値を出したら、事実と違うものになりますね?それを「サンプルの独立性」と言って、1人からは1つのデータしかとってはいけません。個人なら1つということがわかりやすいですが、糞の場合は1回の排糞を1サンプルとします。だから色や形や鮮度などから1回分と判断したものをとります。場合によっては2、3個のこともあるし、1個だけのこともあります。

 歩いているとケチャップの容器があり、タヌキの噛み跡がありました。よくマヨネーズの容器にこれがあります。



 それから津田梅子のお墓に行き、ご挨拶を兼ねて東日本大震災の被災者に黙祷を捧げました。
 最近、1月に集めた大量の糞を水洗して2個だけドングリが出てきたことを報告しましたが(こちら)、それはタヌキはドングリを食べるという意味ではなく、むしろこれだけあるのにほとんど食べないという意味だという説明をしましたが、そのことを示唆するように、大量のドングリ(シラカシ)が落ちていました。


シラカシのドングリ


 それから玉川上水沿いの林に行き、柵をくぐり抜けるタヌキの写真を見ました。


パソコンで写真を確認



フェンスをくぐるタヌキ


そして、タメフンを探すために、ラインを作って歩きました。





列になってタメフンを探して歩く


林の一角で体制を整えるとき、前回の観察会で水洗してもらった糞からの検出物を紹介しました。


タヌキの糞からの検出物


 残念ながら結果的にタメフンは見つかりませんでした。これだけの人数でほぼくまなく歩いたので、ないということだと思います。だから雪の上に足跡がたくさんあったのですが、そのことはタメフンと直接は連動しないということのようです。

 自然を相手にしていると、こちらの思うようにならないことはよくあります。今回は高校生や朝鮮大学校に入学の決まった朴君なども参加してくれました。タメフンが見つからなかったのは残念でしたが、そういうことを学んでくれたらよいと思いました。

写真をご提供いただいた豊口信行さんと棚橋早苗さんにお礼申し上げます。

コメント
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