クズ 2016.8.28
人のもつ感覚ですから、なんとも理屈ではどうしようもないことがあります。私はどうもこの花が好きになれない。ごめんなさい。マメ科の典型的な「蝶形花」で、フジが上からぶらさがるのに対して下から上に登る、これもごくよくあることです。それはいいのですが、この赤みがかった花の色と黄色のもよう。これがフジのように薄紫であればずっと印象は違ったでしょうに。それに葉が異様にといってよいほど大きく、つるの伸びるのの速いことはおそろしいくらいです。そのため、手入れの悪いスギの林などはクズに覆い被さられて枯れそうな木もあるほどです。
ですから、林業家はクズをみつけるとナタで切ってこまめに森林の手入れをするのですが、クズがほかの国に入るとえらいことになるようで、いやな外来種として嫌われています。
これが秋の七草のひとつに選ばれているのもやや腑に落ちないとことです。同じようなところに、ツリガネニンジンとかワレモコウなどほかにもよい花がいくらでもあるのに・・・と思うのです。
「嫌い」というのとは違います。「大味にすぎてちょっと・・・」といったところです。
ひとつ申し添えるなら、クズには思い出があります。高校生のころ、陸上競技をしていました。真夏に何本も50メートルのダッシュをさせられたものです。終わったときに仲のよかったともだちと、グランドの脇の芝生に倒れこんで空をみながら大きく息をついていました。そのとき、「ファンタグレープ」の匂いがしたのです。「なんでここでファンタグレープの匂いが?」と思いながら視線を動かしたらクズが咲いていました。匂いを嗅ぐとまさにその花から出る香りでした。この花をみるといつもそのときのことを思い出します。