玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

2018年2月の観察会(当日の報告)

2018-02-18 19:53:20 | 観察会
 今月は18日に観察会を開き、1月の観察会の積み残しである、1)タヌキの糞の水洗と2)鳥散布種子の取り出しをしました。いつものように鷹の台駅に集合して、鷹野橋から上流に向かって歩きました。途中でウグイスカガウラの花が咲いているのに気づきました。


     ウグイスカグラ

 このあたりの雑木林や玉川上水の木の話をしました。雑木林は伐採を繰り返して薪や隅の材料にしたので、伐採後に萌芽できるナラやシデなどの木が増えるという話をしたら、学生さんが「シデって、死んでから出るという意味ですか?」と言いました。私はシデの意味を知りませんでしたが、リーさんが「シデというのは神棚に飾るギザギザの紙のことで、シデの木の果実のギザギザが似ているからだそうです」と教えてくれました。あとで調べたら「玉串やしめなわなどにつけて垂らす紙」とありました。



 武蔵野美大に移動するまえに、上水公園の木の下にセンダンの種子が落ちていました。まわりにはヒマラヤスギとエノキくらいしかありません。それでこれは鳥が運んだものだという話をしました。

 
     センダンの種子       


     種子散布の説明

 武蔵野美大についてから、まず作業の目的を説明しました。ひとつは津田塾大学で拾ったタヌキの糞で、水洗してマーカーの取り出しと、おもな成分の取り出しをします。
 これまで動物研究者による食性分析は食べ物の内容のリストでとまっており、その果実を食べることの背景に言及することはありませんでした。しかし、同じ果実でも、生える場所や植物の大きさなどが違うことがわかるか、わからないかで、結果の読み取りは全然違います。そのことの重要性とか、鳥散布と哺乳類散布の比較などを話しました。
 また最近受理された津田塾大のタヌキの糞分析の論文のコピーを配布して、内容の説明をしました。


     説明した板書


     花の構造と果実の関係を説明する

 ひとつめは小平霊園のトウネズミモチの下でひろったもの、2つめは大沼公民館のモチノキの下、3つめは青梅街道駅の近くの駐車場で上に電線がある場所で、まわりに木はないもの。これらは鳥が吐き出したもので、その木に来る前に食べていたものを吐き出すので、それを知ることができます。山の林でも同じことが起きていますが、地面に落ちてしまったものは見つけられません。その点、都会の公園などでは地面が舗装されていたりするので、簡単に集めることができます。


     鳥散布の説明

 私が小平霊園で箒とチリとりで集めていたら、通りがかった人が奇特な爺さんと思ったらしく、「ごくろうさまです」といってお辞儀をされました。「鳥の吐き出したものを集めてます」といっても通じるはずないので、「あ、どーも」と答えておきました(皆さんニヤリ)。
 それからケンポナシの匂いと味を体験してもらい、いかに「風変わり」な果実であるかを説明しました。花を支える花柄(かこう)が肥厚して、甘い匂いと味がして、実質的に果肉の役割をしていいるのです。果実そのものは種子を味のない乾いた果皮が包んでいるだけです。


     ケンポナシの「果実」

 ひととおり説明したあと、前回の水洗後に確認した種子などの説明をしました。


     タヌキの糞からの検出物を説明

 それから道具類を出してタヌキの糞の水洗をしてもらいました。机の上に津田塾大学で拾ったタヌキの糞を並べました。もちろんあとで丁寧にふいてきれいにしました。


     タヌキの糞を並べる


     流しで水洗する

 
     フルイに残った内容物を取り出す関野先生

 あとは皆さんが工夫して、糞を軟化するために水を入れた容器にいれたり、ラベルをつけたりしてくれました。あいかわらずカキの種子が目立ちましたが、初冬のときほど高頻度ではありませんでした。次に目立ったのはブドウの種子で、野生のヤマブドウよりは明らかに大きい、栽培品種のブドウです。リーさんの話ではあのあたりにはブドウ園があるそうです。また、鳥の羽毛が目立つようになりました。鳥の足の皮膚があり、皆さん驚いていました。ムクノキの種子も少しありました。プラスチックの破片などもありました。これらは乾燥させるともっとわかるものが増えるので、あとで報告します。

 
     糞を処理する

 手のすいた人たちは鳥散布の種子を分けました。

 
     種子を取り出す若林さん         


     取り出すところ


     取り出されたトウネズミモチの果実と種子

 もちろんトウネズミモチの下にはトウネズミモチ、モチノキの下にはモチノキの果実や種子が圧倒的に多いのですが、ほかにもマンリョフ、ナンテン、ヘクソカズラ、ジャノヒゲなどが見られました。トウネズミのほうにモチノキ、モチノキのほうにトウネズミモチもありました。駐車場に何が運ばれていたかは興味あるところですが、一番多かったのはトウネズミモチ、次がエノキとセンダン、あとは少なくてハナミズキ、ブドウ、ヤマハゼ、アオキ、ジャノヒゲなどでした。


     記念撮影 高槻、関野、鈴木、豊口、若林、堀越、リー

 今回の報告は当日の作業だけです。結果が出たら追って報告します。通常の自然観察会とは違う地味な作業ですが、こういうことを通じてはじめて聞ける自然の話があるのです。皆さん、興味をもって楽しく作業をしてくださいました。

種子散布の結果は こちら

追記  2018年1月10日津田塾大学タヌキの糞の検出物を紹介します。格子の間隔は5mm


カキ種子


ブドウ種子


プラスチック


プラスチック


輪ゴム


軍手のゴム加工したもの


コメント
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