玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

2017-03-01 06:17:45 | 玉川上水点描


2016.11.30

11月の下旬から12月にかけて、木々が色づく。さまざまな色があって、見るものに感動を与える。冬の太陽は低いから、昼間でも光が斜めに射す。薄曇りの日には柔らかい光が注ぐが、ときに雲の切れ間に太陽があると、サッと光が射すことがある。そうすると光のあたる木の葉と、玉川上水の中にあり光のあたらない葉の違いが増幅されることになる。これを描くとすれば、植物を描くというより光を描くという感覚が必要になるのだと思う。
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にしき

2017-03-01 05:12:43 | 玉川上水点描


2016.11.30

玉川上水を覆う高い木はクヌギ、コナラ、ケヤキなどが多い。黄色あるいは黄褐色に色づく。その下にはカエデ類やムラサキシキブなどの低木があり、赤みを帯びた「紅葉」になるものがある。玉川上水の下のほうにはアオキなどの常緑低木があるので、全体としてはさまざまな色が組み合わさることになる。これを昔の人は錦と呼んだ。
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たまゆら

2017-03-01 04:21:38 | 玉川上水点描
 冬の日は弱く、昼間でも横から射します。私が玉川上水を散歩していて、その美しさに見とれているとき、雲の動きによって全体が少し暗くなりました。その中で雲の動きと上の木の枝の具合でしょうか、細い光線ができて、私の目の前のコナラの枝先をスポットライトとして照らしました。カメラを構えて撮影するほんの短い間にその光線は動いてしまい、3枚の葉はなにごともなかったかのようでした。
 客観的にいえば、私の目の前にあるその3枚の葉が一瞬光を受け、それが私が見ている角度からは輝いているように見えたということです。そういうモノと光の無数の組み合わせのひとつがあったというだけのことですが、見ている私の心に「ああ、きれいだ」という感動を生みました。そのたまゆらを人は「一期一会」という言葉で表現したのかもしれません。



 この歳になると、いろいろなことが偶然なのか必然なのか不思議な思いでとらえるようになります。私にはこんな経験があります。
 ある学生は高校3年生のときに高校の図書館で私がその年に書いた「野生動物と共存できるか」を読んで、自分は野生動物の勉強ができる大学に行くと決心したそうです。当時私は東京大学にいました。彼女は野生動物ができる麻布大学を選んだのですが、私はその年の4月から麻布大学に赴任しました。彼女は入学して講義を聞いて、私がその著者であると知ったわけですが、びっくりしたそうです。それはそうでしょう。その後、彼女は私の研究室に入り、いっしょにモンゴルにも行き、今も交流をしています。
 川面を落ち葉が流れているとします。休むことなく流れていく無数の落ち葉を網ですくうとします。育って大学を選ぶ受験生たちを落ち葉、網ですくうのを大学の先生だとすると、ある落ち葉がその網にすくわれる確率ははなはだ小さいもので、すくう場所を少し変えても、同じ場所でもタイミングが違えばすくわれることはありません。そう思えば、学生と先生との出会いは、このコナラの葉にあたった冬の光のように限りなく小さな偶然のようにも思えます。
 人との出会いとはまとこに不思議なもので、それを昔の人は「縁」とよんだのだと思います。
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しまった

2017-03-01 03:06:49 | 玉川上水点描
津田塾大学の東に鎌倉橋という小さい橋があります。4月のあいだに緑が増えていくのが劇的にわかりました(こちら)。その後、6月と10月にも撮影し、そのうちと思っているうちに12月になってしまいました。「こんなに違うのか」の感が強かったのですが、左側にあるコナラなどは落葉してしまい、背後のアパートがよく見えるようになっていました。11月下旬、あるいはせめて12月になりたてに撮っておくべきでした。その頃、近くまでなんども行っていたので、よけいに悔やまれます。


16.4.13

16.6.14

16.10.16

16.12.10
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2017年3月の観察会

2017-03-01 01:58:14 | 観察会
 3月12日は少し肌寒いくらいでしたが、薄日が射す程度のまずまずの天気でした。10人あまりの人が集まり、半分くらいが武蔵美大関係、そのほかの人が半分ほどでした。
 鷹野橋で自己紹介と近況報告、それから今日の予定を説明しました。

 近況報告のひとつは、先日津田塾大のキャンパスでフクロウの死体を拾ったことです。私は玉川上水が「細く長い」ことに着目していますが、その細長い緑地に、ところどころにまとまった緑地があります。私はこれを「ポケット」と呼び、動植物の保全に重要であるあと考えています。津田塾大学はその例であることを写真を使って説明しました。


玉川上水にある「ポケット」を説明する(棚橋早苗さん撮影)

 それから西に向かって歩きました。まだ早春というところで、花は限られると思っていましたが、それでもいくつか開花していました。はじめにあったのはヒメカンスゲでした。雄花の雄しべが目立つ段階だったので説明しました。スゲは雌雄同株ですが、雌雄異花です。風で花粉を運ぶ風媒花ですから、花が華麗である必要はないので地味なものです。


ヒメカンスゲとその説明(棚橋早苗さん撮影)

 新小川橋の西に保存緑地があり、ここにはアマナが咲くのでみんなで探してもらいました。


アマナを探す

 かろうじてつぼみが見つかりましたが、通常は4月上旬に開花するので、少し早かったようです。アマナはユリ科でチューリップなどと同様、球根を作ります。そのことを説明するために一株掘ってみました。アマナは代表的な春季草です。まだ樹冠の木の葉が展開するまでの林床が明るいあいだに光を受けて光合成して生産物を球根に送り込んで、初夏には「仕事」を終えて消えてしまいます。その「はかなさ」を英語でspring ephemeralといいます。


アマナの球根を説明する(豊口信之さん撮影)

 アマナは観察会のあとで豊口さんが西のほうでよい群落を見つけたそうです。


アマナ(豊口信之さん撮影)

 タチツボスミレ、ハルジオンなどのロゼットがあったので、説明しました。まだ寒いこの時期、太陽の光があたると、地面は温まります。光合成は化学反応ですから、温度があるほうがよく進みます。そのために葉を地面に接するように広げているのがロゼット葉です。タンポポなども代表的なものです。私は「ロゼット」ということばをどこかで「星」という意味だと読んだ覚えがあるのですが、あとで確認してみると、そうではなく「バラのような」という意味だそうです。参加された方、すみませんが、訂正をしてください。


ロゼットの説明をする(棚橋早苗さん撮影)

 咲いていた花としてはボケ、ウグイスカグラ、シュンラン、アセビなどがありました。ボケでは、スゲと違って虫媒花ですから、紅色の「はなやかな」花であることの説明をしました。ウグイスカグラはスイカズラ科で、花筒が長いこと、枝が対生であることを説明しました。シュンランについては、スゲのところで「単子葉植物の代表にイネ科とカヤツリグサ科がある」という話をしていたので、「ラン科も単子葉植物のなかの大きな科で、イネ科やカヤツリグサ科と違い、虫媒花なのではなやかな花を咲かせます。その中でシュンランは地味な緑色の花をつけます。ランは種子が極端に小さいという意味でも「特異なグループです」という説明をしました。アセビは愛らしいスズランのような花で毒があるので漢字で「馬酔木」と書くことを説明しました。


順にボケ(棚橋撮)、ウグイスカグラ、シュンラン、アセビ

 クマシデの花芽が膨らんでいたので、その説明をしました。また近縁で玉川上水によくあるイヌシデとの比較も説明しました。シデは葉脈が平行であることなども説明しました。


クマシデの花芽(棚橋早苗さん撮影)

 花が乏しい時期は常緑樹の葉や木の幹などにも目が行きます。ムベの葉があったので、一見5枚の葉があるように見えるのが実は複葉の小葉であることの説明をしました。この説明をするのにホワイトボードが役立ちました。実は100円ショップで手に入れたものです。


ムベの葉で複葉の説明(棚橋早苗さん撮影)

 コナラやクヌギ、イヌシデの縦の亀裂模様、ケヤキのうろこ状の剥離などの説明をしました。


順にクヌギ、イヌシデ、ケヤキの樹皮(棚橋早苗さん撮影)

コナラの大きな株状の木があったので、
「コナラはこのあたりの雑木林の代表的な木です。雑木林は炭や薪をとるため、また葉を緑肥として使うために管理されました。伐採して再生力がある木の代表がナラ類です。伐採したあと、ヒコバエと呼ばれる芽が再生します。ヒコとは男の子とで、元気良く伸びるということでしょう。それが太くなり、枝というより幹のようになり、ついにはこのようになるのです。このような株状の木があれば、再生したものだということがわかります」という説明をしました。


コナラの株立ちの説明をする(棚橋早苗さん撮影)

 伐採について話が展開しました。
 「玉川上水の特徴は細く長いことです。長いことは連続性ということで生き物についって好都合なことです。しかし細いことはそうではありません。その点、津田塾大学やさっきアマナを探した緑地のようなまとまった林があると、ほかにはいないような生き物が暮らせます。」と高槻。続けて
 「でも、そればかりでなく、野草保護管理ゾーンのように上木を伐って草原的な植物を生やすということもあってよいと思います」
 リーさんが
 「行政の人はそういうことを知らないから、調べてわかったことを提案して、そういうことをどんどん伝えたほうがいいと思います。いま都市の緑地を見直す動きがあるから、先生のような専門家が発言することは役に立つと思います」
 確かにそういうことはあるように思います。
 関連した話題として、こんな会話もしました。というのは歩いていたとき、木の下に枯葉が掃き集められていたからです。
 「玉川上水について、人によって持つイメージはさまざまです。ある人にとって枯葉はゴミです。だからこのように掃いて集めています。でもこうされると林としては困るわけです。枯葉は植物の栄養になるし、その下に微生物がいて土壌の有機物化をしているのですから。でも、だからといって善意で掃除をする人を批判はできません。玉川上水は庭の延長線上にあると思っている人は少なくありません。チューリップやパンジーを植える人もいるし、玉川上水の中にヒゴイが泳いでいます」
 「そう、そう」
 「だから、よくある<自然には手をつけてはいけない>という自然保護の考え方と玉川上水のような自然の管理とは違うわけです。でも、そういうことを考えるための機会を作らないといけませんね」

 この日は大出水さんという鳥に詳しい人が参加されました。おかげでいろいろ気づくことがありました。最初はハシボソガラスの巣でした。一本の木の枝に巣がありました。私たちが話をしているときに、カラスが巣材を運んでいるのに気づいていたそうです。


ハシボソガラスの巣と巣材をくわえたカラス(豊口信之さん撮影)

「ハシ」がクチバシであること、黒いカラスにハシボソガラスとハシブトガラスがいることなどを説明しました。大出水さんによるとハシボソガラスはハンガーなども使って巣を作るそうです。そのあと、別の場所でも巣を見つけ、また巣材を加えてカラスを見かけました。


ハシボソガラスの巣を見上げる

 最初に近況の話をしたとき、私は津田塾大学でフクロウの死体を発見した話をしました。
 「フクロウはネズミを食べ、大木のウロに巣を作る。そのフクロウがいるということはフクロウが暮らせる環境があるということで、エサになるネズミもおり、巣を作れるウロのあるような大木もあるということです。津田塾大の林は90年前に植林されたこともわかったので、あのあたりにはフクロウのすめるすばらしい自然があるという話につながると思うんです」
 ところが大出水さんの返事は慎重なものでした。驚いたことに大出水さんは津田塾大のフクロウの写真を撮影しておられ、私の発見した死体はその個体そのものであろうということでした。繁殖する1月くらいにフクロウの声を聞いたけども一羽だけの声だったので、営巣しての育雛は考えにくいということでした。ただ可能性はないわけではないということなので、今シーズンは何か調査をしてみたいと思います。
 ところで、鳥といえば、豊口さんがヒヨドリのすばらしいショットを紹介します。


サクラの蜜を吸うヒヨドリ(豊口信之さん撮影)

 というわけで、動植物が乏しい時期であったにもかかわらず、見るもの、話すことがたくさんあって、いっかな進みません。


明るい陽射しの中を歩く

 私の見積もりが悪かったために、予定していた玉川上水駅に行くまでの半分も行かないのに予定の12時を過ぎてしまいました。そこで、記念撮影をしたあと、ここまでで暫定的解散とし、戻る人はここで鷹の台のほうに戻ってもらうことにし、時間がある人は玉川上水駅に向かうことにしました。


記念撮影


 小平監視所のところで下におりて玉川上水の堀の深さをみてもらいました。私が麻布大学にいたときに指導した卒業生二人も参加してくれたので、記念撮影しました。卒業後も交流できるのはうれしいことです。


卒業生と

 今回は解説主体の観察会としては最後で、4月からは調査をする会にしたいと思います。写真を撮影してくださった豊口信之さんと棚橋早苗さん、どうもありがとうございました。
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