tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

観光振興で「シビックプライド」醸成/観光地奈良の勝ち残り戦略(125)

2018年12月26日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略


職場で観光経済新聞を愛読している。週に1回の業界紙で、一般紙に載らないようなニュースやコラムが充実しているので、目が離せない。同紙12/24付「私の視点 観光羅針盤 175」欄では、村橋克則さん(せとうち観光推進機構事業本部長)が「なぜ今、観光による地方創生か」を寄稿されていた。よくまとまった記事で、とても参考になる。以下に全文を引用する。

私は30年近く観光領域で仕事をさせてもらっているが、今ほど観光が注目され、脚光を浴びている時期を記憶していない。国の掛け声の下、各地でインバウンドへの取り組みも大きく進んだ。ただ、この30年、観光振興(交流人口の増加)が地域において必ずしも歓迎されてこなかったのも事実。

よそ者の流入による治安や環境の悪化、静かな生活に対する脅威から、観光は一部の観光関連事業者(宿や土産業者)のビジネスに過ぎず、地域全体で取り組むものという意識は低いレベルにとどまっていた。

しかし、少子高齢化、地域経済の衰退がいよいよ待ったなしの状況となり、観光産業の経済効果、雇用効果への期待から、観光を地方創生の切り札として捉える自治体が増えてきた。政策として中心に据えるためにも地域全体に歓迎される観光振興を実現する必要に迫られている。「住んでよし訪れてよし」は観光による地方創生を実現するために欠かせないコンセプトだ。では観光振興(交流人口の増加)が地域にもたらすメリットは何なのか。五つほど考えられる。

まずは域内の売り上げ・利益の増加。消費人口の減少を交流人口でまかない、しっかりと稼ぐ、もうけることで地域の永続的な成長につなげていく。

二つ目はイノベーション。交流人口の増加をチャンスと捉えた事業者や個人が新しい商品・サービスを生み出そうとチャレンジする機会が増える。域内外からの投資も期待できるだろう。

三つ目は交通や通信といった社会インフラの整備が進むこと。新しいショッピングセンターやレジャー施設も増えるかもしれない。観光客のみならず地域住民にとっても生活の利便性が高まったり、豊かな暮らしが実現できるという利点がある。

四つ目は地域の伝統・文化・産業・自然景観の保護保全への意識が上がり、活動が盛んになること。実際、老朽化によって取り壊しが検討されていた地域の伝統的建造物が、観光資源として蘇ったというような事例も耳にしている。

最後に、住民の地元意識、郷土愛の高まり、いわゆるシビックプライドの醸成である。観光地として評価が高まり、多くの観光客に喜んでもらうことで、この地に生まれたこと、住んでいることへの誇りが生まれ、地域の一体感が高まっていくことはまさに地方創生の目指すところだ。また、域外からの訪問者(特に外国人)との交流によって、高齢者がいきがいを見つけたり、新しい文化が芽生えたりという利点についても報告がある。

このように、観光振興が地域にもたらすメリットは「経済面」にとどまらず、住民の心や暮らしに豊かさをもたらすもので、地域を挙げて取り組むべき大きなテーマだと言うことができる。観光による地方創生を担う私たちのような組織は、域内でこのことをしっかりと説いて、多くの理解者・協力者を得て、地域一体で地方創生を進めていくことが肝要である。(せとうち観光推進機構事業本部長)

むらはし かつのり=早大法卒。1987年リクルート入社。国内旅行事業部長、リクルートメディアコミュニケーションズ執行役員などを経て、2016年せとうち観光推進機構事業本部長就任。55歳。


「シビックプライドの醸成」とは、良い指摘である。以前、高取町在住で雛めぐりの仕掛け人、野村幸治さんに話を伺う機会があった。「地域のお年寄りがとても元気になりました、これは社会福祉的効果です」とおっしゃっていたのを思い出す。お年寄りは昔のことをよく覚えている。自宅に眠っていた雛人形の展示を見に来られた観光客(大阪府下の中高年女性がほとんど)に、思い出話などを話していると、自然と元気が湧き上がってくるのだそうである。

これを倣(なら)った九度山町(和歌山県伊都郡)は4月1日~5月5日に武者人形などを展示する「町家の人形めぐり」をして、同様の効果を得ている。奈良県は各地に「文化遺産」や「伝統行事」が眠っている。これらを発掘して観光客とシニア層などの地元民が交流することは、様々なメリットがある。県民の皆さん、いっちょやってみませんか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

12月29日は奈良市・漢國神社で「獅子神楽」/毎日新聞「ディスカバー!奈良」第96回

2018年12月25日 | ディスカバー!奈良(毎日新聞)


NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は、毎週木曜日、毎日新聞奈良版に「ディスカバー!奈良」を掲載している。先週(12/20付)掲載されたのは「獅子舞いで厄払いと招福祈願 奈良市の漢國(かんごう)神社」、筆者は奈良市在住の石田一雄さんだった。

石田さんはお祭りの生き字引のような人で以前、講演を聞かせていただいたが「よくこんな小さなお祭りまで取材されたものだ」と驚いた。今回の獅子舞い(午後1時~)も最近始まった祭りのようだが、私は知らなかった(漢國神社のHPは、こちら)。この連載、年内は今回でおしまい、年明けは1月10日(木)から始まるので念のため。では全文を紹介する。


福を招く大黒さま

年末年始の準備で忙しい毎年12月29日、近鉄奈良駅にほど近い漢國(かんごう)神社の境内がにぎやかになります。1年間の厄を払い招福を祈願する「獅子神楽(かぐら)」が奉納されるのです。2008年にプロの太(だい)神楽曲芸師・豊来家(ほうらいや)玉之助さんが獅子舞を奉納したのが始まりで、御杖(みつえ)村の桃俣(もものまた)獅子舞保存会なども加わった漢國神社韓園講(からそのこう)が奉納しています。

猿田彦(さるたひこ)が矛や剣で邪気を切り払ったり、獅子が五穀豊穣(ほうじょう)を願ったり、10余りの演目が次々と舞台で披露されます。獅子舞では伝統の桃俣獅子のほかタイガース獅子、肩車された子供獅子など様々な獅子が登場、太神楽(曲芸)も披露され、福をもたらす大黒様がユーモラスな仕草で観客の笑いを誘います。

奉納後、厄払いの神事が行われて、開運祈とうのお札が配られ、カボチャと小豆が入った「いとこ煮」が振る舞われます。さあ獅子舞で厄を払い,新年の福を招きましょう。
■メモ 近鉄奈良駅から徒歩3分(奈良まほろばソムリエの会理事 石田一雄)。


最後の「いとこ煮」という名前が面白い。辞書を引くと《小豆・牛蒡(ごぼう)・芋・カボチャなどを、堅いものから順に入れ、醤油か味噌で味をつけた煮物。おいおい(甥々)めいめい(姪々)に煮るという洒落(しゃれ)から、また、野菜ばかりを煮るところからの名という》(『デジタル大辞泉』)とあるが、まだ他の説もあるようで、詳しくは「いとこ煮の名前の由来」をご覧いただきたい。

来年も「ディスカバー!奈良」をよろしくお願いいたします!

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

尾上忠大さんと「森と水の源流館」(奈良日日新聞「奈良ものろーぐ」第32回)

2018年12月24日 | 奈良ものろーぐ(奈良日日新聞)
週刊奈良日日新聞に毎月第4金曜日に連載している「奈良ものろーぐ」、先月(11/23付)は森と水の源流館と、尾上事務局長を紹介させていただいた。源流館の活動は、今になって騒がれているSDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)を16年も前に先取りした活動であり、これは素晴らしいことだと思っている。
※写真はいずれも、館内を案内する尾上事務局長(10/27)

その基本コンセプトは、以下の「川上宣言」によく現れている。文字数の関係で記事では紹介できなかったので、ここに紹介しておく。
※12/26(水)の奈良新聞でこれまでの活動が大きく紹介されます、ぜひご覧ください!



■私たち川上は、かけがえのない水がつくられる場に暮らす者として、下流にはいつもきれいな水を流します。
■私たち川上は、自然と一体となった産業を育んで山と水を守り、都市にはない豊かな生活を築きます。
■私たち川上は、都市や平野部の人たちにも、川上の豊かな自然の価値に触れ合ってもらえるような仕組みづくりに励みます。
■私たち川上は、これから育つ子ども達が、自然の生命の躍動にすなおに感動できるような場をつくります。
■私たち川上は、川上における自然とのつきあいが、地球環境に対する人類の働きかけの、すばらしい見本になるよう努めます。




いかがだろう。まさにSDGsのお手本のような「宣言」ではないか。このような活動を牽引してこられたのが尾上事務局長である。最後に、記事全文を紹介しておく。

奈良ものろーぐ(32)
森と水の源流館16年/『環境白書』に活動紹介

「森と水の源流館」(吉野郡川上村宮の平)は、吉野川の水源地にある川上村の自然環境や、それらをとりまく人々の歴史・文化が学べる体験学習施設である。運営は、公益財団法人「吉野川紀の川源流物語」だ。同館は「3つの役割」を掲げている。「①源流の自然、水源地を守ることの大切さをわかりやすく伝えます。②地球環境問題・水資源問題を『水源地』の視点から考えます。③本当の森や水の『楽しさ』を分かち合う交流の輪を広げます」。

川上村は、吉野川の源流にある三之公(さんのこ)川流域に生い茂る天然林が伐採の危機にあると知り、山主から約740haを購入、「水源地の森」として保全している。詳しい生態系調査を進める一方で、森林学習の場として同館の主催で「水源地の森ツアー」を実施している。このツアーは「奈良まほろばソムリエ検定」(奈良商工会議所主催)で2級合格者が1級受験時の要件となる「体験学習プログラム」に組み込まれているので、私も早くに参加した。

アニメ映画「となりのトトロ」に出てきそうな鬱蒼(うっそう)とした川沿いの森を歩くツアーで、終着点につくとパーッと視界が広がる。トチ、サワグルミ、シオジなどの巨樹が川を囲み、その間に苔むした巨石がごろりと横たわる。何だか縄文人のような気持ちにひたりながら、美味しく弁当をいただいた。

同館の様々な冊子類やイベントを企画するのが事務局長の尾上忠大(ただお)さん(54)だ。神戸市のご出身ながら、川上村に魅せられてこの仕事につかれた。文筆やデザイン、トークはもとより、最近は作詞も手がける才人である。その尾上さんからメールをいただいた。同館が手がける「紀の川じるし」が、環境省が主催する「グッドライフアワード」において平成28年度の環境大臣特別賞を受賞、30年版の『環境白書』では「地域循環共生圏の創出に向けた地域間の交流・連携」の好事例として取り上げられたのである。

同白書には、水源地の森の保全活動とともに「吉野川・紀の川流域をひとつの『商店街』に見立て、川の流れがもたらす地域の『恵み』をブランド化し、地域を元気にして、水源の森を守り、流域の環境を守る意識を広げるため、2015年に林業、農業、漁業のキーパーソンとともに『紀の川じるし』というブランドを立ち上げました」と紹介されている。

地方圏では人口減少と高齢化が進み、財政力も乏しい。しかし都市圏は食料、水、木材といった資源やエネルギーの多くを地方圏から得ている。都市圏の人々はこのことを忘れているのではないか。持続可能な社会をつくりあげるためには、これら地域の間で自然や経済、人的なつながりを強化し、支えあうことで地域の活性化を図らねばならない。

「紀の川じるし」は1本の川による森、里、海のつながりを流域の産品で「見える化」したユニークな取り組みである。源流館さん、尾上さん、これからも水源地の思いを全国に発信し続けてください。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

西山教授の講演会「大仏さまと行基さん」東京で1月16日(水)開催!(2019 Topic)

2018年12月23日 | お知らせ
東京の皆さん、朗報です!年明けの1月16日(水)、西山厚さんの講演会「西山教授の仏教よもやま話in東京~大仏さまと行基さん~」が開催されます(主催:南都銀行)。会場は千代田区の「大手町サンケイプラザ」です。参加は無料ですが申し込みが必要です(先着150名)。チラシ(PDF)によりますと、

 南都銀行は平成31年1月17日、インターネット支店である「まほろば支店」を開設いたします。弊行では、この支店を通じて、奈良県の魅力を発信してまいります。
 このたびその第1弾として、帝塚山大学文学部の西山厚教授に「西山教授の仏教よもやま話 in 東京~大仏さまと行基さん~」と題し、東大寺の大仏さまとその造立責任者であった行基菩薩について存分に語っていただきます。
 この機会にぜひご参加くださいますよう、ご案内申し上げます。


講演会の案内が「奈良まほろば館」(東京日本橋三越前)のホームページに掲載されています。

西山教授の仏教よもやま話 in 東京~大仏さまと行基さん~
平成31年1月16日(水)15:00~17:00
※要事前申込、定員になり次第締切
主  催 : 株式会社南都銀行
開催日時 : 平成31年1月16日(水)15:00~17:00(14:30 受付開始)
演  題:「大仏さまと行基さん」
講  師:西山 厚 氏(帝塚山大学文学部文化創造学科教授)
会  場 : 大手町サンケイプラザ 3階301・302号室(東京都千代田区大手町 1-7-2)
 丸ノ内線・半蔵門線・千代田線・東西線・都営三田線「大手町駅」下車A4・E1出口直結
参 加 費 : 無料
定  員:150名(先着順。定員になり次第締切。参加票の発行はありません。)
申込方法
○ホームページ このURLよりお申込ください。
○FAX、郵送 このチラシ裏面「参加申込書」の太枠内に必要事項をご記入の上、南都銀行宛てFAX又はご郵送ください。(郵送の場合は、申込書をコピーしてお送りください。)
<お申込先>
〒630-8677 奈良県奈良市橋本町16 南都銀行 個人営業部 宛て
<お問合せ先>
南都銀行 個人営業部 TEL 0742-27-1522(平日9:00~17:00)


 仏教発見! (講談社現代新書)
 西山厚
 講談社

西山厚さんは名著『仏教発見!』(講談社現代新書)のなかで、このように書かれています。

私は、すべての仏像のなかで、大仏が一番すばらしいと思っている。聖武天皇が奈良時代に大仏を造った時には260万人が関わったと記録にある。重源の時にも全国の大勢の人たちが関わった。そして公慶のときも全国の大勢の人が関わった。

だから、いろんな時代の人々の思いが、大仏のいろんな部分に込められている。こんな仏像は他にない。何百万人もの、さまざまな時代の人たちの思いが籠もっている。こんな素晴らしい仏像は他にないと思う。奈良には大仏がある。それだけで奈良に住めて幸せだと私は思っている。


そんな大仏さまを造立した行基さんとはどんな人だったのか、どうやってあの大きな大仏さまを造ることができたのか…。この日は、私もお話を聞かせていただくつもりである。

ぜひ、たくさんのお申し込みをお待ちしています!



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

保山耕一さんの講演と座談会/1月26日(土) 郡山城ホールで。参加無料・要申し込み・先着順!(2019 Topic)

2018年12月22日 | お知らせ
がんと戦う映像作家・保山耕一さんが、大和郡山市が運営する「水木十五堂賞」を受賞された、おめでとうございます!授賞式では、保山さんの講演会(映像作品の上映を含む)や座談会が行われる。参加は無料だが申し込みが必要である(先着900人)。お申し込みは、こちらの「申し込みフォーム」などから。ご関係者からいただいた情報によると、

「第七回 水木十五堂賞授賞式」
■日時 2019年1月26日[土] 午後1時30分開演~
■会場 DMG MORI やまと郡山城ホール (近鉄郡山駅より徒歩7分)
 639-1160 奈良県大和郡山市北郡山町211-3 
■参加費  無料
■主催 水木十五堂賞運営協議会事務局 
■事前申し込み必要
 申込み方法 住所・名前・電話番号・参加人数(3人まで)を
 ホームページ/メール/FAX/電話 で申込み可能
●ホームページ:申し込みフォーム
●メール:mizuki@city.yamatokoriyama.lg.jp
●FAX:0743-53-1049
●電 話:0743-53-1160
※お申込みいただいた方には、後日参加券を郵送します。

大和郡山市出身の偉人、水木十五堂氏。歴史や地誌の研究をはじめ、漢詩・和歌・俳句から書画、茶道、演劇などに精通し、その幅広い分野に関する蒐集と博識を認められた知の巨人です。水木氏の功績にちなみ様々な分野において社会に貢献した人物を表彰する、今年の水木十五堂賞が映像作家の保山耕一氏に贈られました。その受賞式と受賞記念講演会が実施されます。また、記念座談会も実施されます。

●座談会出席者
保山耕一/神崎宣武(旅の文化研究所長)/岡本彰夫(奈良県立大学客員教授)/柳澤保徳(帝塚山大学特別客員教授)/上田清(大和郡山市長)


先着順(900人)で、すでに席の半分が埋まっているそうだ。皆さん、お申し込みはお早めに!

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする