tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

「川上宣言」に込められた水源地の村の思い

2018年12月27日 | 奈良にこだわる
昨日(12/26)の奈良新聞に、川上村(奈良県吉野郡)の「川上宣言」に関する企画特集記事が掲載されていた。ちなみに川上宣言とは以下の5ヵ条である。

私たち川上は、かけがえのない水がつくられる場に暮らす者として、下流にはいつもきれいな水を流します。/私たち川上は、自然と一体となった産業を育んで山と水を守り、都市にはない豊かな生活を築きます。/私たち川上は、都市や平野部の人たちにも、川上の豊かな自然の価値に触れ合ってもらえるような仕組みづくりに励みます。/私たち川上は、これから育つ子ども達が、自然の生命の躍動にすなおに感動できるような場をつくります。/私たち川上は、川上における自然とのつきあいが、地球環境に対する人類の働きかけの、すばらしい見本になるよう努めます。

これらは今話題のSDGs(エスディージーズ Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)を先取りした、素晴らしい「村是」である。今回の特集記事で、これを起草したのが宮口侗廸(としみち)氏(早稲田大学名誉教授)だということを初めて知った。大滝ダム建設着工にともなう調査事業(平成6年度)の報告書の末尾に掲載されたもので、役場の職員だった坂口泰一氏から依頼を受けたものだったという。宮口氏は今回の記事に、このように書いている。

地理学者である筆者には、都市には都市の価値があり、山村には山村の価値があるはずだという持論があるが、都市経済の急成長は、都市以外の価値が育ちにくく見えにくい世の中を作ってしまった。吉野林業発祥の地として栄えた林業も低迷の時代を迎えていたが、平野部に価値ある水を供給するダムの建設のさなかにあって、なお奥地に清らかな水が生まれる貴重な自然を持つ村が、水源地の村づくりを高らかに宣言しようという発想はまさに自然の価値の再認識の時代にふさわしく、この上なく嬉(うれ)しい相談であった。

内容は、きれいな水を流し、自然を活かした産業を育て、下流の人に自然の価値をおすそ分けし、子供が感動できる仕組みをつくり、最後はグローバルな発想で世界のいい見本にというように、極めて素朴な5か条である。私自身の山村への思いとも重なり、比較的短時間で完成できた。そしてその後川上村が森と水の源流館というビジターセンターを拠点に、さらにいまの総合計画においても、「川上宣言」の実現に向けて着実に歩んでおられることにあらためて敬意を表したい。


川上村のおかげで吉野川・紀の川にきれいな水が流れ、奈良盆地をはじめ大阪府や和歌山県をうるおしている。その根本的な思想が、「川上宣言」にうたわれているのである。まさにグローバルな発想であり、世界のいいお手本になっている。

今、森と水の源流館では、川上宣言や今回の新聞記事に関する感想やエピソードについての原稿(作文、詩歌、写真、絵など)を募集している。詳しくは同館にお問い合わせいただきたい。

川上村の皆さん、皆さんは奈良県の、いや日本の誇りです!

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする