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名作&風景(1)三島由紀夫『奔馬』と大神神社

2006年01月23日 | 感想
日本経済新聞の土曜夕刊に連載されていた「名作のある風景」が、140回目の1月14日付で終了した。名作とその舞台をカラー写真付きで紹介する全8段(1ページの約半分)の大型連載だった。

愛読者としては残念至極だが、ある日突然「だったら、自分で続きを書けばいいのだ」と思いついた。幸いウチの周辺には名作の舞台がたくさんあるし、写真も何とか間に合いそうだ。

で、今日から「名作&風景」シリーズを始めることにする。いわば「勝手に続・名作のある風景 ブログ版」だ。ただし不定期掲載となるので、悪しからず。読まれた方からの「他にこんな所もあるよ」というアドバイスも期待している。

さて初回は、奈良県桜井市の大神(おおみわ)神社を取り上げる。日本最古の神社とされ、「三輪の明神さん」として親しまれている。三島由紀夫の長編小説『奔馬』(『豊饒の海』第2部 新潮文庫)に、この神社が登場する。

同氏のライフワークであった『豊饒の海』(全4部)では、主人公が4回生まれ変わって出てくる。昨秋映画化されて話題を呼んだ、第1部『春の雪』の主人公・松枝清顕(妻夫木聡が演じた侯爵家の嫡子)は、『奔馬』の飯沼勲(右翼政治結社のリーダーで剣道3段)だ。大神神社の滝に打たれているとき、それが判明する。清顕と同じく左腋に3つのほくろがあったのだ。勲は右翼テロに失敗するが、その後、財界の巨頭を暗殺し、割腹自殺をとげる。20歳だった。

大神神社の神域に、三島由紀夫の石碑が建っている。碑には氏の揮毫による「清明」という文字が刻まれている。誌(説明書き)によれば、氏はドナルド・キーン氏とともに1966年(昭和41年)8月、ここを訪れた。その感想は次のとおりだ(誌に刻まれた神社への手紙より)。

「東京の日常はあまりに神から遠い生活でありますから、日本の最も古い神のおそばへ近寄ることは、一種の畏れなしには出来ぬと思ってをりましたが、畏れと共に、すがすがしい浄化を与へられましたことは、洵(まこと)にはかり知れぬ神のお恵みであったと思います」

石碑は、大神神社・祈祷殿から摂社の狭井(さい)神社に至る静かな参道沿いに建つ。石碑の周囲には鬱蒼(うっそう)と樹木が茂り、まさに森厳とした雰囲気が漂う。写真は参道の入口付近である(05年1月3日撮影)。再び氏の手紙を引く。

「大神神社の神域は、ただ清明の一語に尽き、神のおん懐ろに抱かれて過ごした日夜は終生忘れえぬ思ひ出であります」

『奔馬』の刊行は3年後の1969年(昭和44年)。三島氏が割腹自殺をとげたのは、翌70年(45年)11月25日、『天人五衰』(『豊饒の海』第4部)完結の日だった。
※大神神社の公式サイト
http://www.oomiwa.or.jp/
※三島由紀夫文学館のサイト
http://www.vill.yamanakako.yamanashi.jp/bungaku/mishima/
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