tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

講演録「ドーする、ドーなる、奈良県観光!」(観光のひろば 2024.7.29)

2024年08月09日 | 観光にまつわるエトセトラ
先月(2024.7.29)、NPO法人「スマート観光推進機構」理事長の星乃勝さんからお声かけいただき、大阪市内で約1時間(18:30~19:30)、奈良県観光の話をさせていただいた(第54回「観光のひろば」)。リアルご参加者とZOOMご参加者は、それぞれ約10名。大阪で講演するのは、初めての経験だった。

コロナ禍の間、観光の話はすることがなかったので、久しぶりの観光に関する講演となった。昨年3月には竹田博康さん(現・県観光局長)の話を聞かれたそうなので、重複しないように心がけた。講演のあと、星乃さんはわざわざ講演録を作ってくださったので、以下に紹介する。これを読めば、講演の全貌を分かっていただけるだろう。

奈良に関する書籍の刊行や、毎日新聞にも記事を連載しておられるNPO法人「奈良まほろばソムリエの会」専務理事の鉃田憲男さんに「ドーする、ドーなる、奈良県観光!」の演題でお話しいただきました。

NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は、2007年1月から始まった「奈良まほろばソムリエ検定(略称:奈良検定)」の最上級「ソムリエ」に合格した者により、2011年「奈良まほろばソムリエ友の会」が結成され、のちNPO法人化、現在の会員数は約440人。「奈良検定受験講座」や「奈良をもっと楽しむ講座」などの講演活動や、書籍の刊行、各種ツアー、文化財の調査などを実施されている団体です。

奈良県の観光の特徴は、日帰り観光が多く、宿泊者数が少なく、観光消費額が低いこと。大阪・京都に泊まって、奈良は日帰りになっているとの問題提起から始まり、NHK「ブラタモリ」の奈良特集でタモリを案内したのが京都のガイドさんだったことに絶句した、と言います。

2022年の奈良県の延べ宿泊者数は232万人でコロナ前の2019年の8割に回復しているが、外国人宿泊者数はわずか3万人で2019年に比べ94%減だそうです。奈良県は「観光戦略本部」を立ち上げ、6つの成果指標を設定されました。

1.観光消費額を2100億円に増やします。(2019年1807億円)
2.1人当たりの観光消費額を宿泊客28000円、日帰り客5000円に増やします。
 (2019年 宿泊客24807円、日帰り客4569円)
3.延べ宿泊者数を350万人に増やします。(2019年 273万人)
4.観光入込客数を5100万人に増やします。(2019年 4502万人)
5.訪日外国人旅行者数を450万人に増やします。(2019年 350万人)
6.旅館・ホテル客室数を12000室に増やします。(2019年 9735室)

奈良県の問題は、県民の「地元愛着度が低く」「地元旅行のおすすめ度が低い」(じゃらんリサーチセンター調べ)に現れていると言います。



しかし奈良県には素晴らしいところが沢山あると「奈良まほろばソムリエが選ぶ 私の好きな奈良20選」を紹介されました。





鉃田さんは「奈良の食」に強い思いをお持ちです。その鉃田さんは「マツコ&有吉 かりそめ天国」で有吉は「奈良で三食、食べるとなると困る」「おいしいものがない県のワースト4」「(ご当地)ラーメンもない」などと、言いたい放題。天理ラーメンも富雄のラーメンも知らない、奈良県がルーツの「神座(かむくら)」も知らないと、気を悪くされていました。


鉃田さんが選んだ「奈良県十大料理」(地元の定番料理)は、以下のとおりです。


電通の「ジャパンブランド調査2024」で、日本は「観光目的で再訪したい国・地域」で1位、期待していることの上位3つは「多彩なグルメ」(28.6%)、「他国と異なる独自の文化」(27.9%)、「他国にない自然景観」(25.6%)で、利用してみたいのは「庶民的な和食レストラン」(41.4%)、日本料理の1位は「ラーメン」(26.5%)などと紹介されました。これまで〈tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」〉でも食の発信が多かったのですが、大阪検定テキストの「大阪十大料理」にならって「奈良県十大料理」の募集を開始されたといいます。

村上春樹の『群像』(1983年1月号)の記事「奈良の味」では、
(京都の料理は)見ばえだけ立派で味に心がこもっていなくて、値段が高い。おまけに「東京の人に味なんかわかりますかいな」という態度がミエミエである。実に腹立たしい。
それに比べて奈良の料理は決して凝ったものではないのだけれど、そのぶん素朴で、不思議に心になじむ。田舎料理といえば田舎料理だけど、ここにはまだ生活の匂いのようなものがある。値段も安いし、観光客の数も京都ほど多くない
と記されていることを紹介されました。



奥村彪生氏(伝承料理研究家)の「奈良は日本の食文化発祥の地」との発言を踏まえ、牛乳・乳製品、氷(献氷)、醤(ひしお=醤油のルーツ)、砂糖、大和茶、豆腐・湯葉(遣唐使により)、茶粥・茶飯(お寺で広まる)、奈良漬、そうめん、うどん、まんじゅう(林浄因が考案)、清酒(奈良市の正暦寺)などの奈良発祥の食べ物を紹介されました。

「谷崎潤一郎が愛した柿の葉寿司」として、
谷崎は吉野の産物が好きで、小説や随筆によく登場する。『吉野葛』にはずくし(熟柿)が出てくる。
『陰翳礼賛』には柿の葉すしが登場する。サバではなくサケ(新巻鮭)を使い、ご飯には酒を混ぜ込む。
〈鮭の脂と塩気とがいい塩梅に飯に滲み込んで、鮭は却って生身のように柔かくなっている工合が何とも云えない。(中略)こんな塩鮭の食べかたもあったのかと、物資に乏しい山家の人の発明に感心した〉。
これを読んだ白洲正子も、柿若葉の時期(5~6月)に、サケの柿の葉すしを作ると書いている。

清酒発祥の地、奈良市の正暦寺(しょうりゃくじ)の「菩提酛(ぼだいもと)」造りについても話され、室町時代の奈良では酒造りは朝廷から寺院へと引き継がれ、僧坊酒と呼ばれる酒が造られた。
その筆頭格の菩提山正暦寺で、「菩提酛」と呼ばれる酒母を作る技術が開発され、名酒「菩提泉」が生み出された。
奈良の僧坊酒の全盛期は戦国時代で、最高級の酒「南都諸白(もろはく)」と呼ばれた。
江戸時代になってお寺の酒造りが禁止されたが、1998年、約600年ぶりに正暦寺で、県内酒造組合の若手が「菩提酛」を復活させたことなどを紹介されました。

最後に、「奈良の観光を活性化するため、ドーするか」として、
日帰り観光から宿泊観光への転換するため、夜の魅力を創出する。
旅館・ホテル客室数の増加と稼働率の向上。
魅力的な富裕層向け土産物の開発。
奈良の食の魅力の発信、食をテーマとした旅行商品の開発(ガストロノミー・ツーリズム)。
「庶民的な和食レストラン」(昭和レトロ食堂)のPR。
若者が好む「ラーメン」「かき氷」のPR
などを挙げ、講演を締めくくられました。
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