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道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

馴れ合い願望

2021年02月03日 | 人文考察
私たちは人間関係において、馴れ合うことを最終目的にしているのではないか?殊の外馴れ合うことを好む。馴れ合いを潜在的に願望しているとも思える。馴れ合いは居心地が好いからだろう。
コロナ自粛中の与党国会議員3名の銀座クラブ遊興も、典型的な馴れ合い願望の顕れである。

かつて故中曽根元首相は、来日した故レーガン元大統領を山荘でもてなし、「ロン、ヤス」とニックネームで呼び合う仲になったと、内外記者団に公表した。日米外交始まって以来の、破天荒なことである。中曽根氏本人はご満悦、マスコミも極めて大きな外交成果のように騒いだ。白人コンプレックスが透けて見える絵面だったので、私は喜べなかった。

アメリカ人社会ではごく普通の親密な間柄での習慣でも、日本人社会では絶えて無いことだったから、ナカソネは格別にレーガンに気に入られたと、有頂天になった。実態は対米服従の関係にありながら、自国民にはイコールパートナーと見せる俗臭芬芬たる演出だった。

これをもっと盛大に真似したのが安倍元首相。トランプ元大統領を「ドナルド」と呼び、プーチン大統領を「ウラジーミル」と呼ぶ。向こうはシンゾーだ。何ともわざとらしく不自然で嫌らしかったが、安倍政権はファーストネームで呼び合うことを特別に昵懇な間柄だと、過剰なほどに内外に喧伝した。メディアがこれに提灯を点けた。

さほど親しくなくても、ファーストネームで呼び合うのは、西欧社会での習慣でごく普通である。一国の首相が他国の習慣に浸って独り燥ぐ有様は、実に軽薄に見え奇異だった。案の定、2人大国の元首の表情からは、当惑が見てとれた。彼らにも不自然であったのだろう。初めて会ったばかりの人間に百年来の知己のようにあつかわれて・・・
多くの国民は憮然として報道の映像を眺めるばかりだった。

一体世界の何処に、その国の政治リーダーが、大国の元首とファーストネームで呼びあったと有頂天になり、それをメディアが外交の大成果の如くもて囃す国があるだろう。わが国の政治家もメディアも、何よりも馴れ合うことを先決にしている姿を国民の前に晒した。政治記者クラブの弊害はあまねく知られている。

新聞記者と政治家は馴れ合いたがる。馴れ合わないと記者は記事がとれない。政治家から〇〇チャンと呼ばれて
悦にいっている番記者が多い。
メシを食ったか、酒を酌み交わしたか、ゴルフを共にしたかどうかが親密度の指標になる国柄である。しかしそれは形式的な親密性であって、人間的信頼関係に基づく、相互の理解を育み固め合う絆ではない。

日本では、社会の全ての領域で、人間関係の構築が形式的な親密度の濃さに依拠している。したがって付き合いを過剰なまでに重視する。親密の程度が法(のり)を超えると馴れ合いになる。更にその程度がひどくなると甘え合いになる。安倍氏や田崎氏は、馴れ合うことこそ、プロの政治家であり政治記者であると心得て仕事をしてきたに違いない。彼らだけではない。官僚もビジネスマンも、日本人の大多数が、人間関係にある規律(法)を超えて付き合う馴れ合いの閉鎖集団に属することを、内心では願望している。日本の社会では、馴れ合っていれば、何事もコトが円滑に捗るのである。ムラ社会とは、本質は馴れ合い社会、共依存社会なのである。

斯くも馴れ合うことを願う理由は、
馴れ合えば甘えられるからである。
依存できるのである。どのような面から見ても、日本人の心性の根底には、甘えの願望が秘められている。

戦後に連合国軍最高司令官として日本の占領統治にあたったダグラスマッカーサー元帥は、任を解かれ帰国した後の議会公聴会の証言で「日本人12歳説」を口にした。
自主自立の文化の米国エリート軍人には、日本の政治・経済の要路の人物やマスコミ人の自分への対応ぶりが、12歳程度の少年と感じられたのだろうか?勿論純真と見たのではない。完成した人間、大人を感じなかったという事だろう。知能の謂でなく、自立心の不存在を痛感したのかもしれない。

それまでマッカーサーに好意的だった日本のマスコミは、この「12歳説」に大きなショックを受け反発し、以後マッカーサーへの新聞の論調はガラリと変わった。日本の新聞は、痛いところを衝かれたのである。元帥は亡くなるまで12歳説の根拠は明らかにしなかった。

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