オバマのアジアに於ける地位は低い。
この地域に占める中共の影響力を低くするには、
安倍晋三首相の靖国神社参拝を批判しているようでは、オバマには
見込みが無いと言って置こう。
外交が、オバマの弱点とすれば、軍事的プレゼンスも最低だと感じる。
アジア地域の安全にもっと配慮せよと言いたい。
防空識別圏招いた米オバマ政権 「及び腰」のアジア回帰
WEDGE 12月27日(金)12時30分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131227-00010003-wedge-int&p=1
東シナ海上に防空識別圏を設定し、アジアの空に緊張を走らせた中国。こうした中国の強硬姿勢を招いた一因は、就任1期目にアジア回帰を打ち出しながら、中国への配慮から、アジアにおける軍事的プレゼンスの強化を怠り、政治的意思を示さず、政治的・軍事的影響力を落としてきたオバマ政権にある。米国における日本・アジア研究の第一人者が鳴らす、オバマ外交政策への警鐘。
内政問題で窮地に立つオバマ
オバマ政権の2期目は国内問題により悪夢と化した。「オバマケア」として知られる医療保険制度改革の失敗が全米でニュースの見出しを独占し、ワシントンのエネルギーをすべて使い果たしてしまった。加えて、依然弱い景気回復と、連邦政府の債務上限引き上げをめぐる政治闘争により、米国の政治は記憶している限り最も党派色が強いものになり、著しい機能障害を起こしている。
このため米国民は自国の政治指導者たちに大きな不満を抱いている。バラク・オバマ大統領の仕事ぶりを評価する人は40%を上回るかどうかという水準で、国民の過半数が大統領を信頼できないと考えている。米国連邦議会は大統領以上に不評を買っており、最近の世論調査では、議会に対し好意的な意見を持つ人はわずか9%にとどまった。
このような政治の機能不全は米国の外交政策にも悪影響を及ぼす。オバマ政権はイスラム過激派の拡大を食い止められず、むしろ中東での米国の影響力を台無しにしたとの懸念が高まっている。シリアの独裁者バシャル・アサド大統領が自国民に対して化学兵器を使用したことについては、オバマ大統領は弱腰で支離滅裂な対応を試みたと批判された。
また、オバマ政権はイランの核開発計画をめぐる交渉に関し、明確な戦略を持っているということを共和党、民主党双方の反対派に対して納得させられずにいる。一方、ロシアは、シリア危機において仲介役を買って出て、米国の大半の外交政策に反対する姿勢を明確にし、かつてないほど強く、自信に満ちている。
そのうえ、オバマ政権と連邦議会は今後10年間で国防費を最大1兆ドル削減する方針を示しており、同盟国と友好国の双方に対して米国政府が軍事的責務を果たせるのかその能力が問われている。
しかし、アジアほど、オバマ政権がその政策を遂行できていないことが明白な地域はない。オバマ政権はここ何年も、外交政策の最重要イニシアティブは、いわゆる「アジアへのピボット(アジア回帰)」だと主張してきた。大統領と当時のヒラリー・クリントン国務長官は、イラクとアフガニスタンでの戦争が終わった後に米国が焦点を移す地域はアジアだと断言してきた。
だが、鳴り物入りでこの政策が発表されてから数年しか経たない今、世界各地で続く問題と米国内の諸問題の犠牲となり、ピボットは終わってしまったように見える。
内実が伴わない米国のアジア回帰
ピボットに対する最大の批判は、最初から修辞的な政策だったということだ。事実、アジアにおける米国の政策が実際に大きく変わったと思えることは一度としてなかった。オバマ政権にとって、ピボットは単なる軍事的な強化を意味するのではなく、「政府全体」のアプローチ、つまり経済と外交のイニシアティブだということであった。
ピボットの1つ目の要素は経済であるが、もっぱら環太平洋経済連携協定(TPP)の自由貿易交渉を軸とする。TPPの目的の1つは、経済において国有企業が担える役割を制限することであり、自由市場経済だけが加盟できる協定と見なされている。これはアジアでリベラルな価値観を広める助けになると考えられている。
2つ目の要素は外交だ。オバマ政権は発足直後に、ジョージ・W・ブッシュ政権の「無視」の時代の終わりと、アジア回帰を強調した。クリントン国務長官は数回アジアを歴訪し、他の政府高官もたびたび同地域を訪問した。中でも特に目を引いたのは、オバマ大統領が米国大統領として初めて、2011年、12年の東アジア首脳会議に出席したことだ。
しかし、多くの観測筋とブッシュ政権の元高官らが指摘するように、実は米国は一度もアジアを離れたことがない。対テロ戦争における日米間の緊密な協力と、ブッシュ前大統領の下で特に米国とインドが築いた新たな関係を考えると、米国が不在だったとは言えない。逆に対日関係においては、オバマ大統領が就任して日本の民主党が09年に政権を取った後、日米関係は悪化した。
3つ目の要素は、最も重要な米国の軍事的プレゼンスだ。オバマ政権はアジアにおける米国の軍事態勢について、若干の変更しか発表していない。これにより、多くの批判派はそもそもピボットが修辞的なものに過ぎないと主張してきたのだ。
米国の軍事態勢の変更について見てみると、
(1)米海兵隊員2500人規模のダーウィンへのローテーション配備
(2)ローテーション配備の形による米海軍新型沿海域戦闘艦最大4隻のシンガポールへの停泊
そして最大の目標として、
(3)米海軍の艦艇の6割をアジア太平洋地域に配置
というものであった。
ワシントンの多くの関係者は、ピボットを推進しているのが主に当時のクリントン国務長官とカート・キャンベル国務次官補だということを知っていた。両氏はどちらも、ピボット政策を精力的に推進することで賞賛されたカリスマ的指導者だ。しかし、ピボットの裏にある現実は、謳われた約束に及ぶものではなかった。
最大の問題の1つは、なぜピボットが必要なのかオバマ政権が説明できていないことだ。政権は一貫して、アジアにおける米国の軍事的プレゼンスをある程度拡大すると言いつつ、ピボットの狙いが中国の劇的な軍備近代化や東シナ海、南シナ海における領有権紛争での強硬姿勢に対抗することにあると明言するのを拒んできた。その結果、米国の同盟国と友好国は、オバマ政権に対し確信が持てずにいた。
これと密接する事実がある。オバマ政権が尖閣諸島をめぐる争いや南シナ海での領有権紛争に関与しない姿勢を明確にしたことだ。フィリピンなどに対する中国の威嚇や、尖閣諸島周辺海域への侵入にもかかわらず、米国政府は幾度となく、対立する主権の主張については特定の立場を取らず、すべての関係国が論争を平和的に解決することを期待すると述べてきた。その結果、日本やフィリピンのような同盟国は、米国政府はその条約義務を果たさず、自分たちが単独で、中国の強硬姿勢に向き合わねばならないのではないかと危惧するようになったのだ。
次に、オバマ政権は、アジアで従来以上に大きな役割を果たすと主張しながら、劇的に米国の軍事予算を削減することとしたため、自らの信頼性を損ねた。アジア地域において、向こう10年間の米軍の質的な優位性を疑う人は誰もいない。しかし、中国が軍事支出を年間10%以上拡大し続けている時に米国が軍事予算を減らすという事実は、アジアにおける米軍の長期的優位が次第に疑わしくなっていることを意味する。
強硬姿勢強める中国 「防空識別圏」設定
こうしたピボットに対する軍事的憂慮が、13年11月下旬に浮き彫りになった。中国が東シナ海に新たな「防空識別圏」の設定を宣言したからだ。中国の防空圏は日本および韓国のそれと重複している。中国政府は、軍用機、民間機を問わず、すべての航空機に、中国当局に事前通告し、飛行計画を提出することを求めた。これは北東アジアの空を支配し、尖閣諸島に対する日本の施政権を脅かそうとするあからさまな試みに映る。
中国政府はおそらく、上空での自国の利益を主張することをそう簡単にあきらめないだろう。米軍の縮小は、中国のそうした行動を一層煽るだけだ。
アジア諸国内の米国の同盟国、友好国にとって最大の懸念は、こうして中国が強硬姿勢を強めるなか、米国政府が引き続き中国政府との戦略的な関係構築を話題にしていることだ。その一方で、中国政府が一段と影響力を強め、近隣諸国を威嚇しようとする熱意ばかりが伝わってくる。こうした態度は、継続的な地域の安定にとって不穏な動きである。
さらに、冒頭でも述べたワシントンの政治的な機能不全が米国によるアジアへのピボットを損ねている。13年10月、オバマ大統領は予定していた東南アジア諸国連合(ASEAN)年次会合と東アジア首脳会議への出席をキャンセル。多くの人はこれに対し、オバマ大統領は国内問題と国外問題の双方をさばけず、大統領が国内で存在感を維持するためにアジアを犠牲にしようとしているサインだと解釈した。
一方で、オバマ大統領がASEANの会合を欠席したことにより、習近平国家主席が得をしたと皆の目に映った。習主席は大々的に報じられた東南アジア歴訪をこなし、アジア太平洋経済協力会議(APEC)会合でスポットライトを浴びる前に、マレーシアおよびインドネシアと包括的な戦略的パートナーシップ関係の構築で合意した。
ではなぜオバマ大統領のアジアへのピボットは、本当の意味で始まる前に終わってしまったのか。その理由の1つは、外交政策を運営する個々人と関係したものだ。先に述べたように、ピボットの真の生みの親はクリントン氏とキャンベル氏だった。だが、両氏とも1期目の終わりの13年2月にオバマ政権を去った。
新国務長官のジョン・ケリー氏は、両氏に比べると、アジアにもピボットそのものにも傾倒しているようにはとても思えない。むしろ欧州に対して強い関心を持つことで知られており、イランおよびシリアとの慌ただしい協議に飛びついた。また、キャンベル氏のようなユニークな特質を持つ東アジア担当国務次官補もいない。そのため、今のオバマ政権内にはアジアに強い関心を持つ高官がおらず、現職のアジア担当者たちは前任者ほどの影響力を持たない。
とはいえ、最も重要なことは、先にも述べたように、現政権がオバマ大統領以下、なぜ米国にピボットが必要だったのかそもそも十分に説明してこなかったことだ。重要な政策にもかかわらず、明瞭さがないため、オバマ政権が2期目早々に窮地に陥ると、ピボットはいとも簡単に棚上げされてしまう。そこに予算削減などの国内の困難が重なり、オバマ政権は米国の関心をアジアに着実にシフトさせるお金とエネルギーが底をついてしまった。
このことは、今後さらに自信を深める中国と向き合うことになる米国の同盟国、友好国にとって、心配の種になる。信頼できる米軍のプレゼンスがなく、米国大統領の側に明確な政治的意思がない今、アジアの安定を維持するのが難しくなる可能性は十分にある。
アジアの主要大国間における信頼が依然欠如しており、東シナ海での問題など深刻な論争を解決する(あるいは議論する)多国間メカニズムが存在していないという事実は、米国の役割が相変わらず重要であることを意味する。しかし、米国が60年にわたりアジアの平和維持に力を貸し、同盟関係にある国々と協力してきた今、オバマ政権はまさに米国の政策を根本的に悪い方向へ変えてしまう瀬戸際にあるのかもしれない。
それは図らずも、オバマ大統領自身が、世界一重要だと言った地域において、いくつか選択を誤り、自身の政治的、軍事的影響力を落としてしまった結果なのである。
マイケル・オースリン (米シンクタンクAEI日本研究部長)
この地域に占める中共の影響力を低くするには、
安倍晋三首相の靖国神社参拝を批判しているようでは、オバマには
見込みが無いと言って置こう。
外交が、オバマの弱点とすれば、軍事的プレゼンスも最低だと感じる。
アジア地域の安全にもっと配慮せよと言いたい。
防空識別圏招いた米オバマ政権 「及び腰」のアジア回帰
WEDGE 12月27日(金)12時30分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131227-00010003-wedge-int&p=1
東シナ海上に防空識別圏を設定し、アジアの空に緊張を走らせた中国。こうした中国の強硬姿勢を招いた一因は、就任1期目にアジア回帰を打ち出しながら、中国への配慮から、アジアにおける軍事的プレゼンスの強化を怠り、政治的意思を示さず、政治的・軍事的影響力を落としてきたオバマ政権にある。米国における日本・アジア研究の第一人者が鳴らす、オバマ外交政策への警鐘。
内政問題で窮地に立つオバマ
オバマ政権の2期目は国内問題により悪夢と化した。「オバマケア」として知られる医療保険制度改革の失敗が全米でニュースの見出しを独占し、ワシントンのエネルギーをすべて使い果たしてしまった。加えて、依然弱い景気回復と、連邦政府の債務上限引き上げをめぐる政治闘争により、米国の政治は記憶している限り最も党派色が強いものになり、著しい機能障害を起こしている。
このため米国民は自国の政治指導者たちに大きな不満を抱いている。バラク・オバマ大統領の仕事ぶりを評価する人は40%を上回るかどうかという水準で、国民の過半数が大統領を信頼できないと考えている。米国連邦議会は大統領以上に不評を買っており、最近の世論調査では、議会に対し好意的な意見を持つ人はわずか9%にとどまった。
このような政治の機能不全は米国の外交政策にも悪影響を及ぼす。オバマ政権はイスラム過激派の拡大を食い止められず、むしろ中東での米国の影響力を台無しにしたとの懸念が高まっている。シリアの独裁者バシャル・アサド大統領が自国民に対して化学兵器を使用したことについては、オバマ大統領は弱腰で支離滅裂な対応を試みたと批判された。
また、オバマ政権はイランの核開発計画をめぐる交渉に関し、明確な戦略を持っているということを共和党、民主党双方の反対派に対して納得させられずにいる。一方、ロシアは、シリア危機において仲介役を買って出て、米国の大半の外交政策に反対する姿勢を明確にし、かつてないほど強く、自信に満ちている。
そのうえ、オバマ政権と連邦議会は今後10年間で国防費を最大1兆ドル削減する方針を示しており、同盟国と友好国の双方に対して米国政府が軍事的責務を果たせるのかその能力が問われている。
しかし、アジアほど、オバマ政権がその政策を遂行できていないことが明白な地域はない。オバマ政権はここ何年も、外交政策の最重要イニシアティブは、いわゆる「アジアへのピボット(アジア回帰)」だと主張してきた。大統領と当時のヒラリー・クリントン国務長官は、イラクとアフガニスタンでの戦争が終わった後に米国が焦点を移す地域はアジアだと断言してきた。
だが、鳴り物入りでこの政策が発表されてから数年しか経たない今、世界各地で続く問題と米国内の諸問題の犠牲となり、ピボットは終わってしまったように見える。
内実が伴わない米国のアジア回帰
ピボットに対する最大の批判は、最初から修辞的な政策だったということだ。事実、アジアにおける米国の政策が実際に大きく変わったと思えることは一度としてなかった。オバマ政権にとって、ピボットは単なる軍事的な強化を意味するのではなく、「政府全体」のアプローチ、つまり経済と外交のイニシアティブだということであった。
ピボットの1つ目の要素は経済であるが、もっぱら環太平洋経済連携協定(TPP)の自由貿易交渉を軸とする。TPPの目的の1つは、経済において国有企業が担える役割を制限することであり、自由市場経済だけが加盟できる協定と見なされている。これはアジアでリベラルな価値観を広める助けになると考えられている。
2つ目の要素は外交だ。オバマ政権は発足直後に、ジョージ・W・ブッシュ政権の「無視」の時代の終わりと、アジア回帰を強調した。クリントン国務長官は数回アジアを歴訪し、他の政府高官もたびたび同地域を訪問した。中でも特に目を引いたのは、オバマ大統領が米国大統領として初めて、2011年、12年の東アジア首脳会議に出席したことだ。
しかし、多くの観測筋とブッシュ政権の元高官らが指摘するように、実は米国は一度もアジアを離れたことがない。対テロ戦争における日米間の緊密な協力と、ブッシュ前大統領の下で特に米国とインドが築いた新たな関係を考えると、米国が不在だったとは言えない。逆に対日関係においては、オバマ大統領が就任して日本の民主党が09年に政権を取った後、日米関係は悪化した。
3つ目の要素は、最も重要な米国の軍事的プレゼンスだ。オバマ政権はアジアにおける米国の軍事態勢について、若干の変更しか発表していない。これにより、多くの批判派はそもそもピボットが修辞的なものに過ぎないと主張してきたのだ。
米国の軍事態勢の変更について見てみると、
(1)米海兵隊員2500人規模のダーウィンへのローテーション配備
(2)ローテーション配備の形による米海軍新型沿海域戦闘艦最大4隻のシンガポールへの停泊
そして最大の目標として、
(3)米海軍の艦艇の6割をアジア太平洋地域に配置
というものであった。
ワシントンの多くの関係者は、ピボットを推進しているのが主に当時のクリントン国務長官とカート・キャンベル国務次官補だということを知っていた。両氏はどちらも、ピボット政策を精力的に推進することで賞賛されたカリスマ的指導者だ。しかし、ピボットの裏にある現実は、謳われた約束に及ぶものではなかった。
最大の問題の1つは、なぜピボットが必要なのかオバマ政権が説明できていないことだ。政権は一貫して、アジアにおける米国の軍事的プレゼンスをある程度拡大すると言いつつ、ピボットの狙いが中国の劇的な軍備近代化や東シナ海、南シナ海における領有権紛争での強硬姿勢に対抗することにあると明言するのを拒んできた。その結果、米国の同盟国と友好国は、オバマ政権に対し確信が持てずにいた。
これと密接する事実がある。オバマ政権が尖閣諸島をめぐる争いや南シナ海での領有権紛争に関与しない姿勢を明確にしたことだ。フィリピンなどに対する中国の威嚇や、尖閣諸島周辺海域への侵入にもかかわらず、米国政府は幾度となく、対立する主権の主張については特定の立場を取らず、すべての関係国が論争を平和的に解決することを期待すると述べてきた。その結果、日本やフィリピンのような同盟国は、米国政府はその条約義務を果たさず、自分たちが単独で、中国の強硬姿勢に向き合わねばならないのではないかと危惧するようになったのだ。
次に、オバマ政権は、アジアで従来以上に大きな役割を果たすと主張しながら、劇的に米国の軍事予算を削減することとしたため、自らの信頼性を損ねた。アジア地域において、向こう10年間の米軍の質的な優位性を疑う人は誰もいない。しかし、中国が軍事支出を年間10%以上拡大し続けている時に米国が軍事予算を減らすという事実は、アジアにおける米軍の長期的優位が次第に疑わしくなっていることを意味する。
強硬姿勢強める中国 「防空識別圏」設定
こうしたピボットに対する軍事的憂慮が、13年11月下旬に浮き彫りになった。中国が東シナ海に新たな「防空識別圏」の設定を宣言したからだ。中国の防空圏は日本および韓国のそれと重複している。中国政府は、軍用機、民間機を問わず、すべての航空機に、中国当局に事前通告し、飛行計画を提出することを求めた。これは北東アジアの空を支配し、尖閣諸島に対する日本の施政権を脅かそうとするあからさまな試みに映る。
中国政府はおそらく、上空での自国の利益を主張することをそう簡単にあきらめないだろう。米軍の縮小は、中国のそうした行動を一層煽るだけだ。
アジア諸国内の米国の同盟国、友好国にとって最大の懸念は、こうして中国が強硬姿勢を強めるなか、米国政府が引き続き中国政府との戦略的な関係構築を話題にしていることだ。その一方で、中国政府が一段と影響力を強め、近隣諸国を威嚇しようとする熱意ばかりが伝わってくる。こうした態度は、継続的な地域の安定にとって不穏な動きである。
さらに、冒頭でも述べたワシントンの政治的な機能不全が米国によるアジアへのピボットを損ねている。13年10月、オバマ大統領は予定していた東南アジア諸国連合(ASEAN)年次会合と東アジア首脳会議への出席をキャンセル。多くの人はこれに対し、オバマ大統領は国内問題と国外問題の双方をさばけず、大統領が国内で存在感を維持するためにアジアを犠牲にしようとしているサインだと解釈した。
一方で、オバマ大統領がASEANの会合を欠席したことにより、習近平国家主席が得をしたと皆の目に映った。習主席は大々的に報じられた東南アジア歴訪をこなし、アジア太平洋経済協力会議(APEC)会合でスポットライトを浴びる前に、マレーシアおよびインドネシアと包括的な戦略的パートナーシップ関係の構築で合意した。
ではなぜオバマ大統領のアジアへのピボットは、本当の意味で始まる前に終わってしまったのか。その理由の1つは、外交政策を運営する個々人と関係したものだ。先に述べたように、ピボットの真の生みの親はクリントン氏とキャンベル氏だった。だが、両氏とも1期目の終わりの13年2月にオバマ政権を去った。
新国務長官のジョン・ケリー氏は、両氏に比べると、アジアにもピボットそのものにも傾倒しているようにはとても思えない。むしろ欧州に対して強い関心を持つことで知られており、イランおよびシリアとの慌ただしい協議に飛びついた。また、キャンベル氏のようなユニークな特質を持つ東アジア担当国務次官補もいない。そのため、今のオバマ政権内にはアジアに強い関心を持つ高官がおらず、現職のアジア担当者たちは前任者ほどの影響力を持たない。
とはいえ、最も重要なことは、先にも述べたように、現政権がオバマ大統領以下、なぜ米国にピボットが必要だったのかそもそも十分に説明してこなかったことだ。重要な政策にもかかわらず、明瞭さがないため、オバマ政権が2期目早々に窮地に陥ると、ピボットはいとも簡単に棚上げされてしまう。そこに予算削減などの国内の困難が重なり、オバマ政権は米国の関心をアジアに着実にシフトさせるお金とエネルギーが底をついてしまった。
このことは、今後さらに自信を深める中国と向き合うことになる米国の同盟国、友好国にとって、心配の種になる。信頼できる米軍のプレゼンスがなく、米国大統領の側に明確な政治的意思がない今、アジアの安定を維持するのが難しくなる可能性は十分にある。
アジアの主要大国間における信頼が依然欠如しており、東シナ海での問題など深刻な論争を解決する(あるいは議論する)多国間メカニズムが存在していないという事実は、米国の役割が相変わらず重要であることを意味する。しかし、米国が60年にわたりアジアの平和維持に力を貸し、同盟関係にある国々と協力してきた今、オバマ政権はまさに米国の政策を根本的に悪い方向へ変えてしまう瀬戸際にあるのかもしれない。
それは図らずも、オバマ大統領自身が、世界一重要だと言った地域において、いくつか選択を誤り、自身の政治的、軍事的影響力を落としてしまった結果なのである。
マイケル・オースリン (米シンクタンクAEI日本研究部長)
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