硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 33

2021-04-16 21:25:25 | 日記
「今日、先輩に会えてよかったです。なんだか、ホッとしちゃいました。」

なぜだか、心の底からそう思えた。二宮先輩の事がずっと心に引っ掛かっていたから。

「私もよ。須藤君の事は、いつか話そうと思ってたから、すっきりしたわ。けど、こんなにいい女たちをフッてしまうしまうなんて、須藤君も罪な男よね。」

「ホントですよねぇ! 」

私達は心から笑った。圭介先輩への気持も、二宮先輩へのわだかまりも溶けてゆく気がする。
けど、今は圭介先輩の事どう思ってるのかな。まだ、好きなのかなぁ。いたずらっぽく聞けば応えてくれるかな。

「で、先輩。今はどうなんですか? 彼氏はいるんですか? 」

「いないよ。私ね、須藤君の事を好きになって気付いたんだけれど、私に好きっていう気持ちがないと、私の事を好きでいてくれても駄目なの。だから、須藤君を超えてくる人に出会わないと恋愛は無理かもしれないな。」

真面目で、迷いがない。まだ、圭介先輩の事が好きなんだ。そういう所は変わらないなぁ。逆に安心しちゃった。

「あー。何となくわかる気がします。でも、私は先輩程強くないからなぁ。」

「私、全然強くないよ。甘えられるものなら誰かに甘えていたいもの。」

「それも意外ですねぇ。ギャップ萌えですぅ。」

「なんだか照れちゃうわ。」

「先輩、そういうとこ、ホントかわいいですよねぇ。」

二宮先輩は照れながら「いやだわぁ。」と、言った後、「でも、ヒラ、赦してくれてありがとうね。」と、私を見つめて微笑んだ。

「なに言ってるんですか先輩! 照れるじゃないですかぁ。」

笑ってごまかしたけれど、先輩の「赦してくれて」。は、私の心を見透かしていたように思えて、ドキッとしてしまった。

次の停車駅のアナウンスが流れる。二宮先輩が下りる駅はさらに3つ先。
電車はゆっくりとスピードを落としてゆき、いつもの所で停車した。

「じゃあ、また、連絡しますね。」

「うん。私でよければ、いつでも相談に乗るよ。」

「ありがとうございます。」

「またね。」

「はい。」

席を立ち一礼をすると、先輩はまた小さく手を振った。
私も先輩を真似て小さく手を振りながら、電車の出発を告げる音が響く冬のホームへ踏み出した。

コメントを投稿