硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 32

2021-04-15 19:52:43 | 日記
二宮先輩、話していても、とても苦しそう。そんなに苦しい思いをしている人に私は嫉妬していたのか。

「・・・大変だったんですね。ちっとも知らなかったです。先輩そんな素振り一度も見せなかったし。」

「そうねぇ。あの頃は負けず嫌いだったし・・・・・・。でも、兄が普通の人だったら、須藤君の苦しみを理解できなかったし、支えようだなんて思わなかったよ。」

二宮先輩は辛い話をした後でも変わらずに爽やかに微笑む。
私はなんて子供だったんだろう。やっぱり、嫉妬していた自分が恥ずかしい。

「今、須藤君が大学で社会学を勉強しているのは、LGBT制度というものを、もっと世の中に浸透させて、自身の事をマイノリティーと感じている人達の存在も、皆が「普通」と思える社会にしてゆきたいという目標があるからなんでって。すごいでしょ。彼はいつも優しいけれど、いつも私のはるか先を歩んでてね・・・。彼を支えようと頑張ってても、そう感じる時は、とても寂しかったなぁ。」

いつも素敵な二宮先輩も、心の中では、めちゃ大変だったんだなぁ。
やっぱり、人を知るってめんどくさくて大変だけど、大切な事なんだ。

「先輩も辛かったんですねぇ。言ってくれればよかったのに。」

「ありがとうね、ヒラ。でもね、その経験があったからこそ、今の私があるって思うし、その経験が無かったら、まだ、わがままな子供のままだったわ。」

二宮先輩も、しばらく会わない間に、さらに大人になってしまったなぁ。

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