硝子戸の外へ。

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介護現場における日常。

2018-10-04 21:17:33 | 日記
「体が痛いから、寝かせてほしい」と、立つこともできない片麻痺の老人は訴えた。
他者の身体の痛みは、理解することが出来ない。ならば、その訴えに応えることが、介護職としてできる唯一の仕事だろうと考えた。
しかし、施設では、他の利用者や、複数の職員もおり、考え方もそれぞれである為、他の利用者から、どうしてあの人だけ時間を護らず煉るのかという不満が起こる事や、リハビリも兼ねているのだから、寝たきりにならないように、がんばってもらわなければならないといった、注意が入る。

利用者の身体の痛みは、他者には理解できない為、甘えかも知れないという余地がある。
しかし、血圧は不安定であり、上半身がどちらかに傾くと自力で支えられないほどADLは低下していることから察すると、身体の痛みは、真実であると推測が出来る。

しかし、公共の場である事と、職場でのルールに重きに置く事が優先されなければならない為、議論は、ほとんどの場合、そこで収束する。
それ以上、議論が深まらない理由は、我々には理解できない他者の身体の痛みだからのように思える。

だが、弱者や助けを求める者の声に耳を傾けるよりも、強く主張する多数派の声を重んじなければならないというのは、社会福祉の体を喪失しているのではないのだろうかと考えるのであるが、言葉を飲み込んでおく事でしか、選択肢がないのが現状なように思う。

そして、こういう場合、幸福を感じられるのは、痛みを抱えている者でもなく、痛みを抱えている者に対して安楽な状況を提供しようとする者でもなく、多数派の意見によって説き伏せた方にしかないのである。

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