南九州の片隅から
Nicha Milzanessのひとりごと日記
 



のち

 熊本駅前の東口(白川口)広場に約10年間存在し、市民に『しゃもじ』の愛称で親しまれた大屋根の取り壊しが始まったらしい。
 
 30年以上に亘って続けられている、熊本県が世界に誇る文化事業である「くまもとアートポリス」でつくられた、世界に2つとない建造物。
 建築界のノーベル賞と言われる“プリツカー賞”を受賞した世界的建築家・伊東豊雄くまもとアートポリスコミッショナーが選考委員長を務めた公開プロポーザルで、同じく“プリツカー賞”を受賞した建築家・西沢立衛(にしざわりゅうえ)氏が勝ち取った作品なのに…。
 世界中のどの駅を見渡しても、こんな面白い駅前広場のデザインはないのに、なんで…(本当は“しゃもじ”ではなく“雲”をイメージ)。

 言い換えれば、ノーベル文学賞の作品とノーベル生理学・医学賞の癌ワクチンを、熊本市は投げ捨てるようなもの。
 残念というより、無念です。


 大義名分は「再度、熊本地震のような大地震が来た場合、安全性が確保できない」らしい。
 しかし、現に2度の大地震を経験しながら、いまのところ傷1つないのに、何の根拠があってそんな絵空事を言っているのか意味が分からない。
 
 建設に2.6億円も掛けながら、何の落ち度もないのに、また1.4億円掛けて破壊。で、そのあと14.8億円掛けて新しい屋根をつくるんだって。
 うーん、なんか税金の使い方間違ってませんかね?
 仮にも、熊本地震で、日本中いや世界中から多額の寄付金や支援を受けた熊本市が、果たしてこんなことしていいんでしょうか? なんか悲しくなるのは私だけ???


 こんな勝手な理由で文化事業の産物を破壊しながら、市長はなぜか熊本市のことを“文化都市”とかって語っているらしいです。
 あら不思議。
 
----
■今日の行動
 仕事

■今日の買い物
 なし

■今日の献立
 朝:野菜ジュース、バナナ
 昼:お手製弁当
 夕:鶏唐揚げ


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )






 九州新幹線全線開通が来年(平成23年)3月に迫る中、「熊本駅周辺デザインシンポジウム」が熊本駅に隣接するホテルニューオオタニで行われた。

 熊本駅周辺地域都市空間デザイン会議の座長で日本大学教授の岸井隆幸氏、同会議のワーキンググループ統括で熊本大学准教授の田中智之氏、くまもとアートポリスコミッショナーの伊東豊雄氏、熊本駅東口広場の設計者である西沢立衛氏、同西口広場の設計者である佐藤光彦氏、同交番の設計者であるクライン・ダイサム・アーキテクツ(KDa)のアスリッド・クライン氏という豪華な顔ぶれのシンポジウムだったからか、定員200名に対し、倍近い数の聴衆が訪れたようだ。

 今回、楽しみにしていたのはKDaが設計する熊本南警察署熊本駅交番だ。
 KDaは西沢氏が最優秀賞に選ばれた熊本駅東口広場プロポーザルコンペで惜しくも次点となったので、今回そのリベンジも兼ねてどのような設計を出してくるのかとても気になっていた。そのときの作品が熊本名物「辛子レンコン」をテーマにしていたので、まさか今回もそのテーマで来るのではと、ちょっぴり期待をしていたが…。
 なんと今回も辛子レンコンのように穴がいくつも空いた交番になっていた! クライン氏が言うには「辛子レンコンを意識した訳ではなく、結果的にこのような形状になった」らしい。
 ともあれ、完成がとても楽しみだ。

 シンポジウム後の質問・意見コーナーで、会場のある1人が「新幹線全線開通が間近に迫っているが、熊本駅の利用客数は下がり続けている。来年3月に新幹線が開通しても、福岡から鹿児島までの通過駅となりはしないか心配だ」という趣旨の意見をしていたが、まさにその通りだ。
 西沢氏、佐藤氏、KDaの作品に、安藤忠雄氏設計の駅舎が加われば、きっと多くの人が熊本の地に降りてくれると思う。しかし、それは建築関係者だけかも知れない。建築関係者も来てほしいが、本当に来てほしいのは一般のお客さんだ。
 そのためには、行政と地元がもっとタッグを組んで行かないといけないだろう。まだまだ行政側が市民の声を引き上げているとは言い難い。
 たくさんのお客さんが熊本に来てくれることを願いたい。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )






 今日は、くまもと県民交流館パレア(鶴屋百貨店東館)で「くまもとアートポリス推進賞」の表彰式と座談会が行われた。
 「くまもとアートポリス推進賞」とは、デザイン性に優れるなどのいくつかの条件を満たした、数年内に熊本県内に建てられた一般の建築物を公募し、表彰するコンテストである。
 「くまもとアートポリス」の冠をつけているが、コミッショナーの伊東豊雄氏は一切関知せず、いわゆる「くまもとアートポリスプロジェクト」とは一線を画す別物である。
 しかし、「プロジェクト」がコミッショナーや行政が主導であることに対し、「推進賞」は一般からの応募ということで、どちらかというとより地域に根ざしていると考えることができるかも知れない。

 今回は8件が受賞。推進賞が4件、推進賞選賞(次点)が4件とのこと。うち5件が住宅で、他は店舗、保育園、アーケードだという。
 選考委員は建築家や大学教授(建築系)だけでなく、地元の新聞社や福祉関係者なども入っており、建築方面の意見ばかりに偏らないところがとてもいいと思う。

 私は仕事の都合もあって、座談会から傍聴することにした。
 以前は、表彰式の後には建築家による特別講演を行っていたようだが、一昨年からは座談会を行うようになった。座談会では賞の選考委員と受賞者(建築主、設計者、施工者)が一堂に会してさまざまな意見の交換をするので、受賞者のナマの声が聞け、建築に携わる自分としてもとても興味深い。
 設計者の中には複数回受賞している常連さんも多いようだ。また、最近は建築主が設計者を選ぶのにインターネットが利用されたりもしているという。
 個人的には古い建築物の改修、改築、再生などに興味があるため、そういった建物の受賞が多くなればと思う。

 今年で第15回目ということもあり、これまでに100件近くの建物が表彰されているということから、選考委員長の北野先生(熊本大学名誉教授)が、「今までの作品の展覧会をしたらどうだろう」と提案された。
 これはとてもいい考えだと思った。実際に受賞した建物をオープンハウスという形で一般公開したら、建築を学ぶ学生やこれから家を建てたいと思っている人にはとても有用だろう。
 しかし、受賞作品の多くは一般住宅である。実際に住み続けている住宅を公開するというのはなかなか難しいかも知れない。また、受賞時は立派な建物でも、その後のメンテナンスを怠り、既に劣化している建物もあるような気がする。

 いずれにしても近い将来、展覧会を開催して欲しいものだ。できれば見学会もね。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )






 今日は熊本県菊池市でくまもとアートポリス(KAP)のシンポジウムが行われるということで、車を一飛ばしして行ってきた。

 菊池市には現時点でアートポリスの施設はないが、今回、市の下町とも言える隈府(わいふ)地区に、小さな公園(ポケットパーク)を3つ整備することになったそうだ。
 設計者は伊東豊雄KAPコミッショナーから指名された塩塚隆生氏。大分県を中心に活躍している建築家だという。

 まずは基調講演として、東大・堀繁氏の講演があった。タイトルは『まちづくりの魅力と足湯』。
 私はまちづくりの根幹となる部分は「建築物」ではないかとずっと思っていたのだが、堀氏が言うには「道路」らしい。
 具体的に日本・世界各地の賑わっている観光地とそうではない観光地の写真を見せ、「どちらの街に行ってみたいか」という誰にでも分かりやすい比較方法で、確かに…と思わせられた。
 日本の道路は明らかに車優先。歩道があったとしても、道路の中心にあるのは車道であり、主役はやはり車である。しかし、ヨーロッパの観光地は違う。たとえばスペインはバルセロナのサグラダ・ファミリアへ続く道路は、中心に広い歩道があり、車道は両端に追いやられている。広い歩道にはいくつものベンチが置かれ、その街がお客をおもてなししているという。
 うーむ、考えさせられる。しかし、まちづくりは1人の力でできるものじゃない。行政と住民の協働が必須である。

 次に塩塚氏による3つのポケットパークのプレゼンがあった。
 3箇所それぞれに足湯を設けるという、なかなか贅沢なコンセプト。しかし、3つそれぞれの場所が離れすぎているので、よほど広報等でアピールしないと地元住民以外の利用者が見込めないように思われた。
 この辺りは、塩塚氏だけの仕事ではない。県、菊池市、そして住民のよりよい協力体制が求められると思う。

 最後に、伊東豊雄KAPコミッショナーや曽我部昌史KAPアドバイザー、塩塚氏、堀氏、そして地域住民代表2名が壇上に上がり、パネルディスカッションが行われた。

 全体的に時間が足りないと感じられた。それぞれをもう少し長く時間が取れればもっとよいシンポジウムになったような気がした。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )






 「くまもとアートポリス(KAP)」
 建築を学んでいる人ならば少なからず知っているだろう、熊本県が約20年にわたって進めている事業である。事業を始めたのは当時の知事・細川護煕氏と建築家・磯崎新氏。現在は伊東豊雄さんが3代目のコミッショナーを務めている。
 今日は、その75番目のプロジェクト「モクバンR2」の完成お披露目会が開催されるとのことだったので、見学に参加してきた。
 ちなみに「モクバンR2」とは「木造バンガロー・ラウンド2」の略らしい。

 現地は熊本県球磨郡(くまぐん)球磨村(くまむら)にある球泉洞(きゅうせんどう)休暇村。ここには鍾乳洞とキャンプ場、リフトや吊橋もあり、熊本県人ならば一度は足を運んだことがあるのではないだろうか。

 そこに1~2年前に「モクバン」(以下「R1」)が完成し、今回はその第2弾「モクバンR2」(以下「R2」)が竣工したという。R1もR2もコンペ(設計競技)で選ばれた設計者による設計とのこと。
 R1の設計者は今や新進気鋭の若手建築家・藤本壮介氏(若手と呼ぶのはもはや失礼か?)。R2は渡瀬正記氏・永吉歩氏。
 R1がルービックキューブのお化けのような四角い外観であるのに対し、R2は三角屋根のかわいらしい外観である。

 モクバンR2。
 床はもちろん、屋根も壁もすべて地元の杉材でできていて、それを透明のFRP(ガラス繊維強化プラスチック)で覆っている。FRPは防水材としてもよく使われる材料であり、これによって風雨を凌ぐらしいが、本当に大丈夫なのかちょっと心配…。
 それでも内部に入ると、外部から差し込む光がレースカーテンのようでとても綺麗だった。目の前を流れる球磨川も一望することができる。窓を開け放つと思ったより涼しく、快適に過ごせそうだった。

 見学会のあとは場所を川向いの森林館(設計:木島安史)に移して、R2の設計者である渡瀬・永吉両氏や伊東豊雄さんによるシンポジウム。木材の専門家の方も出席していて、建築方面ばかりに話が傾かなかったのもよかったように思えた。
 日本には建築資材としての成熟した木が豊富にあるが、それを手入れする人がいないこと、安い外国産材に市場を奪われていることで、日本の山は荒れ放題だという。
 何とかならないだろうか。私も建築分野に携わる者の1人として、ちょっと考えさせられた。



【写真1】モクバンR1。これって本当に泊まれるの?


【写真2】モクバンR2。とんがり屋根の外観


【写真3】モクバンR2。内部にこぼれてくる柔らかい光が心地よい


【写真4】モクバンR2。室内から球磨川を眺める


【写真5】目の前を通過していく“球磨川下り”。涼しそう

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )