祝辞みな未来のことや植樹祭 田川飛旅子
うかつにもまだ今日が「みどりの日」だと思い込んでいた。本日掲載する例句を探していて平成19年から「みどりの日」が「昭和の日」になり、「みどりの日」は5月4日に移行したということに改めて気付かされた。とにかく休めたらいいや、と毎年やり過ごすうち名前が変わったことも忘れてしまったようだ。掲句は4月29日の「みどりの日」に行われた植樹祭を念頭に作られたのだろう。「みどりの日」という名前そのものは晩春から初夏の端境期にあって次の季節の明るさを先取りにしたなかなかいいネーミングだと思っていたけど、5月4日だとぴったりしすぎてぴんとこない。「昭和の日」は「激動の日々を経て復興をとげた昭和の時代を顧み、国の将来を考えるための国民の休日」と角川の俳句歳時記にはあるが、この頃は未来へ向かうより過ぎ去った時代を懐かしむほうへ傾いているようだ。昭和はそんなにいい時代だったろうか。襖一枚で行き来する大家族の生活は賑やかだったけど、自分だけの空間を持ちたいと願ったこともたびたびだった。学校の規律も乱れてはいなかったがはみだしものの悩みはそれなりに深かった。今はなかなか見通しが立たない時代だけど、掲句のように植樹し伸びてゆく樹木を寿ぐことで未来に向かう明るさを味わえたらと思う。『俳句歳時記・春』(2009・角川書店)所載。(三宅やよい)
【緑の週間】 みどりのしゅうかん(・・シウ・・)
4月1日から一週間を緑の週間または緑化週間という。国土緑化と自然愛護を目的とした行事。街頭で緑の羽を売り、基金を募る。
例句 作者
緑の羽根心音奏づ上に挿す 本多静江
祝辞みな未来のことや植樹祭 田川飛旅子
雲群れる緑の週間始まりぬ 相生垣瓜人
植樹祭始まり雨の川奔る 皆川盤水
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