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「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

10月の訪花昆虫調査の結果

2022-10-08 22:38:12 | 報告
 2022年10月の調査結果をまとめました。

 花はアキノキリンソウとヤマラッキョウがいずれも35%で、ノハラアザミも多くて、この3種が92%を占めました。

10月の花数

 訪花昆虫は甲虫(大半はハムシ)が過半数を占め、ハチが33%で、ハエ・アブはこれまでと違い、8%にすぎませんでした。

10月の昆虫数の内訳

<それぞれの花にはどういう昆虫が来たか>
 主要な花3種について、どういう昆虫が来ていたかを見ると、アキノキリンソウでは甲虫(多くはハムシ)が最も多く、次いでハチでした。


 ヤマラッキョウは少し違い、ハムシが突出して多く、ハエ・アブもハチと同じくらい来ていました。
 

 ノハラアザミは明らかに違い、ハチ(マルハナバチが多い)が最多で、甲虫を上回りました。
 

 花の形を見るとアキノキリンソウはキク科で筒状花で、ハムシはここに潜り込んでいました。

アキノキリンソウ

アキノキリンソウにいるハムシとハチ

 このハムシは私が図鑑で見る限りルリマルノミハムシのようです。後ろにつく脚は「太もも」が極端に太く、触ろうとするとピンと跳ねて視界から消えます。

ルリマルノミハムシ

 ヤマラッキョウの花は一つを取り上げるとコップのような形で、これならハエなども吸蜜できるかもしれません。

ヤマラッキョウの花序

ヤマラッキョウの小花

 ノハラアザミは代表的なキク科の花で多数の筒状花が集合したもので、時々長い雌蕊が突出しています。


ノハラアザミの筒状花

 蜜が筒の底にあるはずですから、マルハナバチやチョウが長い口で吸蜜します。

ノハラアザミ、トラマルハナバチ

ノハラアザミ、イチモンジセセリ

<昆虫はどういう花を選んだか>
 今度は昆虫ごとにどの花に訪問したかを見てみます。
 ハチは口が長いので筒状花からも吸蜜できるはずで、キク科のアキノキリンソウとノハラアザミに多かったことは矛盾しません。


 ハエアブは舐めるための短い口を持っていますから、皿型の花なら大丈夫ですが、筒型は吸蜜できないはずです。結果を見るとヤマラッキョウに多かったのでこれも矛盾しませんが、ノアザミにもある程度来ていました。



 甲虫としてはハナムグリもいましたが、大半はハムシでした。このハムシは捕まえようとするとピンと跳ねて消えてしまいます。花の上で吸蜜しているかどうかわかりません。訪問数ではヤマラッキョウとアキノキリンソウが多い結果でした。


 このように、花の作りと訪花昆虫には大まかな対応関係があるように思えます。

++++++++++++++++

 昆虫数の月変化を見ると5月から7月までは少なかったのですが、8月、9月と急増して、10月に減少するという変化を取りました。7月は上旬に調査をしたので、中旬以降であればもっと多かったはずです。

昆虫数の月変化

 このグラフではわかりにくいので、内訳を取り上げると、8月にハエ・アブが最多となり、その逆に甲虫が最少になりました。5, 6月と10月を比べると、ハチが多くハエ・アブと甲虫が少なめでした。

昆虫の割合の月変化


元に戻る こちら
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10月8日の訪花昆虫調査

2022-10-08 10:30:22 | 報告
 今年は5月から訪花昆虫の調査をしてきましたが、10月が最後になります。急に涼しくなったので昆虫は減っているはずです。8日に日程調整しましたが、このところ天気が悪く、7日は1日中雨で東京でも寒いくらいでした。ただ天気予報では8日は回復するだろうということでした。当日の朝、東京は曇りで「これはダメかな」と思ったのですが、いくだけ行くことにしました。遠山に着くと薄曇りくらいでした。
 現地に着くと数人が待っておられました。空は明るくなり、調査はできそうでした。簡単に打ち合わせをして3班に分かれて調査を始めました。

記録をとる

 私はいつもの芳賀さんと二人で林を担当しました。花はグッと少なくなり、ノハラアザミくらいしか目につきませんでしたが、調査を始めるとヤマラッキョウやヤマトリカブトもありました。

ヤマラッキョウ

ヤマトリカブト

 訪花昆虫はあまりいないだろうと思っていたので、ノハラアザミにミヤママルハナバチがいると嬉しくなって眺めました。芳賀さんは本当に生き物が好きなようで、ミヤマを見ては「かわいいー」と優しく話しかけていました。

ミヤママルハナバチ

ヤマトリカブトにはほとんどいなかったのですが、それでもトラマルが来たので喜びました。

調査中の芳賀さん

 途中で見える草原はススキが枯れて秋の装いでした。

ロッジを見下ろす

 一番上の尾根に着きましたが、富士山は見えませんでした。そこにサクラスミレの狂い咲きがありました。思っていたよりは昆虫の記録が取れました。

 花を見ながら少し早めにロッジに戻りました。

リンドウ

アキノキリンソウ

ハバヤマボクチ

ノコンギク

 三々五々に集まってきて、お昼になりました。いつものことながら、リンゴ、ナシ、カキ、ブドウ、それにポポなどみなさん果物を持ってきておられて美味しくいただきました。さすがに「果物の山梨」です。あれこれ雑談をしましたが、作る側からすると例えばブドウの糖度が少し低いだけで受け取ってもらえず、困るとのことでした。食べても味に違いは感じられなくても、箱の中の一つノブドウが不合格に箱全体がダメとなるのだそうです。それから畑の土壌調査があって、調査に10万円もかかるので、角田さんの場合、4つの畑があるので40万円もかかるということでした。それだけの額を売り上げるのは大変なはずです。「まったくJAは意地悪をしているみたいだ」とのことでした。


お昼の団欒


 奥平親子は午後に別の予定があるということで、記念撮影をしました。

記念撮影

 午後は別の場所を調べ、2時頃には終わりました。夏に子供が見つけたというギンリョウソウモドキの話になり、「では見にいこう」ということになりました。上むきに果実がなっていました。

ギンリョウソウモドキ

 みなさん、楽しく調査をしてくださり、楽しい一日になりました。

 調査結果は こちら


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植物・植生

2022-10-08 07:04:05 | 研究
植物・植生

<動物と植物の関係>
我が家(東京都小平市)の周りでの鳥類種子散布 2021.4.2 こちら
 
生垣を利用した種子散布の把握 – 小平霊園での観察例 −.
高槻成紀. 2022. Binos, 29: 1-7.   こちら new!

麻布大学キャンパスのカキノキへの鳥類による種子散布. 
高槻成紀. 2020. 麻布大学雑誌, 32: 1-9.  こちら 

スギ人工林の間伐が下層植生と訪花に与える影響 – アファンの森と隣接する人工林での観察例
高槻成紀・望月亜佑子. 2021. 人と自然, 32: 99−108 こちら

乙女高原に訪花昆虫が戻ってきた (2021年8月) こちら
乙女高原での訪花昆虫調査(2022年8月) こちら

<草原の動態>
山梨県の乙女高原がススキ群落になった理由 – 植物種による脱葉に対する反応の違いから -. 
高槻成紀・植原 彰(2021)植生学会誌, 38: 81-93. こちら 

ススキとシバの摘葉に対する反応 – シカ生息地の群落変化の説明のために
高槻成紀(2022) 植生学会誌, 39: 85-91. こちら new!

乙女高原のスミレ こちら new!
高槻成紀・植原 彰

乙女高原の訪花昆虫 2022年7月 高槻成紀・植原 彰 こちら 
乙女高原の訪花昆虫 2022年9月 高槻成紀・植原 彰 こちら
乙女高原の訪花昆虫 2022年10月 高槻成紀・植原 彰 こちら

<都市の植生>
2018年台風24号による玉川上水の樹木への被害状況と今後の管理について. 
高槻成紀. 2020. 植生学会誌,  37: 49-55. こちら
 
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