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秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

十鉄/弘南6000系

2011-09-18 19:47:41 | 津軽のいろいろ
青森の私鉄の話題から2つ。
●とうてつ
8月末にアップしたように、青森県の私鉄「十和田観光電鉄(十鉄=とうてつ)」の鉄道部門(三沢-十和田市)が、廃止の危機にある。
少子化、東北新幹線新青森開業、東日本大震災の影響で客が減り、このままでは経営が続けられないとして、とうてつ側が沿線3市町(十和田市、六戸町、三沢市)に対し、今後10年間で5億2100万円の財政支援を求めた。それを受け、各市町が議会や住民への説明・意見聴取を行っていた。
今月初めの段階で、十和田観光電鉄の社長は「沿線自治体から返答を受けたら、10月初めまでに結論を出したい」と述べているが、財政支援がない場合、鉄道を廃止し、バスに転換することになるようだ。

最近の各報道によれば、財政支援にについて、議会は3市町とも否定的、住民は賛否さまざまで特に十和田市と六戸町では存続を求める声が多かったという。
それらの結果を受け、3市町が協議したところ、財政支援はしない方向でまとまりつつあるようだ。
ということで、十和田観光電鉄の鉄道は廃止される公算が大きくなった。

なお、9月13日の東奥日報によれば「(とうてつが)鉄道事業を廃止した場合、過去10年間の分だけでも、国・県の補助金を2億円以上返還しなければならないと見込まれることが13日、県への取材で分かった。」そうで、廃止するにしても課題がありそうだ。


よそ者が申し訳ないが、勝手な考えを以下に。
説明会に参加した住民からも声があったそうだが、話の展開が速すぎないか。もっと考える時間が必要だったのではないだろうか。
震災は仕方ないが、少子化は今に始まったことでないし、新幹線開業で客が減るのも予想できたはず。
それなのに、とうてつは、突然「お金出してくれないとやめちゃうよ。どうする?」と1か月ほどでの返答を求めてきたようだ。
夏休みは8月31日で終わることが分かっているのに、その数日前に「まだ宿題が終わってない! 父さん手伝って!」と騒ぐ、磯野カツオ君のような話に思えてしまうのは、僕だけだろうか。

沿線自治体も、十和田観光電鉄の経営状況に関心を示さず、任せきりにしてきたのではないだろうか。民間企業とはいえ、地域住民や観光客の足を担う、唯一の企業なのだから、日ごろから経営状況に目を向けてやってもよかったような気もする。(波平さんが7月中から「カツオ、宿題は順調か?」と聞くようなもの)
直接の資金援助は無理でも、鉄道・バスを陰から支援することはできたかもしれない。

もたもたと鉄道を運行し続ければ、会社自体が持たないほど一刻を争う状況ということなのかもしれないが、半年とか1年とか、判断までの余裕があれば、状況や住民・議員の考えが変わり、別の結果が出てきたかもしれない。
ちなみに、秋田県の第3セクター・秋田内陸縦貫鉄道も、2008年に廃止の危機にあったが、とりあえず2012年度までは存続させて、その後に判断することになっている。
先延ばしと言えばそれまでだが、高校の統合や自治体職員の通勤利用による乗客増加やいろいろな誘客策が始まり、多少は内陸線への考え方が変わってきているようにも感じている。


とうてつへの支援について、十和田市長は「市民の理解が得られない」、六戸町長は「一民間会社に公金を投入できない」という趣旨の発言をしているようだ。
たしかにそうだろうし、各市町の財政も厳しいのだろう。
でも、それを言うなら、つぶれた金融機関への公的資金投入や、高速道路料金を定額とか無料にしていちおう「民間会社」である高速道路会社に公金を投入していたのはどうなるんだと言いたくなる(市町村レベルの話でなく、同列に比較できないのは承知)。


この判断は、特に十和田市にとっては、唯一の鉄道を、自らの意思で不要と結論付けたことになる。
鉄道が廃止されれば、地図から「十和田市駅」の表示が消えてしまう。鉄道があれば、時刻表の巻頭地図を眺めて目に留まり「十和田市へ行ってみよう」と思う人もいるだろうし、先日の僕のように安いきっぷを使って安いホテルに泊まるために十和田市へ訪れる人もいる。
経験上、初めて訪れようとする町に鉄道がないと、どうやってアクセスすればいいのか戸惑ってしまうことが多い。(時刻表にバス路線やダイヤが掲載されたとしても鉄道よりも見つけにくいし、時刻表検索サイト・ソフトではバスは非対応だろう)
自家用車や観光バスでの訪問客が多くて、鉄道利用は微々たるものなのかもしれないが、そうした旅行客・訪問客を、十和田市は自らの意思で来なくいいと言っているように受け取れてしまう、というのは言いすぎか。


廃止されるとなれば、気になることの1つが、車両の扱い。
古い電車が保存されていてイベント時(17日にも実施)に走っているそうで、それももったいないが、現役の7700系などはどうするのか。
東急から譲渡されてやっと10年経とうとしているところで、まだまだ走行できるはず。冷房も付いているし。

願望というか妄想だけど、同じ青森県の弘南鉄道で買い取ったりしないだろうか?
弘南鉄道では7700系の改造前の7000系を長年使っているので、カーブやホームなど設備は対応しているはずだし、現場も扱いには慣れているだろう(ただし電気系統は異なる仕様)し、乗客としては今の7000系には冷房がないので真夏には参ってしまう。
輸送コストも東京から運ぶよりは安くつくだろうし、いかが?
※2014年には、一部の車両についてこのようなことになった


●弘南鉄道
一方、その津軽の弘南鉄道。こちらは明るい話題。 ※「弘南鉄道」と「弘南バス」はルーツは同じ企業だが、現在は資本関係等はなくなっている。
公式サイトに15日付で、「第2回 弘南鉄道ふれあい感謝祭開催のお知らせ」がアップされた。
昨年から開催されている鉄道の日イベントの告知。

今年は10月15日(土)に大鰐線(大鰐-中央弘前)の「津軽大沢」駅、16日(日)に弘南線(弘前-黒石)の「平賀」駅という、いずれも車両基地のある駅で開催。
中身はステージイベント、出店、グッズ販売、車両展示など、一般的な鉄道の日イベントのようだ。(ラッセル車用電気機関車)

しかし、特筆すべきは、津軽大沢での(というか大鰐線での)「臨時列車6000系運転」!
以前少し紹介していた、古い電車「6000系(これも東急のお下がり)」が久々に走るのだ!
弘南鉄道6000系電車(この記事の再掲)
6000系はもともと製造数が少なく、現存するのは弘南鉄道大鰐線のものだけ。以前は朝の快速電車を中心に毎日走っていたが、快速廃止・各駅停車減便により余剰車両となり廃車は免れたものの、よほどのことがない限り走ることはなくなっている。
愛好家団体がチャーターして、年に数回走ることはあるようだが、鉄道側主催で運行するのは初だと思う。(快速廃止以来とすれば5年ぶり)

今回はダイヤは通常列車の間をぬった、津軽大沢→大鰐(折り返し)→津軽大沢と津軽大沢→中央弘前(折り返し)→津軽大沢という2つのダイヤ。いずれも15日午後運行。
乗車することができるのか、できるとすれば予約や特別料金が必要なのかは不明だが、少なくとも線路際であの独特の走行音をまた聞くことができる。
これはまたとない機会だ。

実は弘前市では、建造物・宝物特別拝観事業「弘前は歴史と文化のびっくり箱」という、普段は公開していない建造物などの特別公開をこの秋、毎週週末に行っている。公開されるものは毎週異なり、15日は「最勝院五重塔」の1階部分(外から見るだけ)。これもちょっと見てみたい。


そういえば、JR東日本の秋田管内の施設の公開はどうなるのかな?
【22日追記】JR東日本秋田総合車両センター(旧・土崎工場)の公開も15日(10時~15時。最終入場14時)になった。時間的に、弘南鉄道津軽大沢との掛け持ちは不可能だろう。

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7 コメント

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覆らず (taic02)
2011-10-08 17:39:21
会社として廃止を決定ということのようですね。
あわただしく話が進み、最初から廃止ありきだったような気もします。
会社側としては経営上の重荷だったのでしょうし、住民・行政としても鉄道のまま残す必要はないと判断したわけです。しょうがないといえばしょうがないことです。

旅行客として訪れるかもしれない者の立場としては、勝手ながら残念です。
せめて、代替バスをしっかりと運行し、乗客が増えるよう宣伝してもらいたいです。

あの趣のある三沢駅舎や旧型電車がどうなってしまうのか、気がかりです。
今の冷房付き電車は、ぜひ弘南鉄道へ…
返信する
撤退決定 (たむたむ)
2011-10-08 08:22:37
本日朝刊1面トップに大きく掲載がありました。
正式発表は、11日の十和田観光鉄道活性化協議会で!らしいのですが・・・
昨日の臨時取締役会で方針を決定したようです。
これから(4月から)はバス運行になるようです。

乗ったことはないですが、
なくなるのは寂しいですよね~。
しょうがないのでしょうかね?
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コメントありがとうございます (taic02)
2011-09-21 00:13:58
>とびいりさん
市民フォーラムも開かれたそうですが、行政側の判断はもう変わらないということなのでしょうかね。結論ありきで進んでいる感もあります。

6000系も報道などで注目されるようになっているのですね。
弘前にいた当時は知識も情報も不充分で、他と違う古い電車という程度の認識しかなく、乗る機会なんていくらでもあったのにもったいなかったと、僕も今にして思います。

>ケンチャンさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
もう少し考える時間があるべきだと思います。一企業や議員・首長の言い分だけでなく、長い目で広く意見を聞いてほしいです。
安定した安全な地域の足について、行政も企業も住民も、もっと意識してほしいです。
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十鉄頑張って!! (ケンチャン)
2011-09-19 23:33:43
はじめまして。十鉄存続の危機の話題はホント急すぎて市民も困惑しているのではないでしょうか。電車はクリーンな乗り物の代表格 もっと国や県も地方のローカル路線を守るために努力してほしいですね。
返信する
十鉄・弘南 (とびいり)
2011-09-19 21:08:34
十鉄の話題は、テレビの青森県内ニュース・新聞で連日のように取り扱われています。おっしゃるとおり、状況は非常に厳しそうです。
そんな中、数日前に十鉄で車両公開等のイベントがあったようです。存続に向けた啓発になれば良いのですが。

弘南の6000系、普段当たり前のように走っていたときは全く気にも留めなかったものですが、走らなくなってテレビなどで取り上げられるようになってから気になっています。6000系の特徴である「独特の走行音」、これまた気にも留めずに踏切で聞いていたのが、今となっては勿体ない気がします。
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こんばんは (taic02)
2011-09-18 23:41:33
人口が減りクルマが増えた地方においては、私鉄といえども行政の支援は不可欠なのかもしれません。
今回のとうてつの件には、青森県はまだ静観の構えのようです。

今の秋田には純粋な「私鉄」が存在しませんが、青森は3つも残っています。各社の努力とともに、青森県の理解もあったのかもしれませんね。

例えば、私立学校では、たぶんすべての学校法人が補助金を受けているはずです。同じように公共性の高い公共交通機関に対して、一定の財政支援があってもおかしくはないと思います。
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Unknown (ZIN)
2011-09-18 21:17:12

先日に引き続きこんばんわ。
こういった記事を拝見して、中小私鉄の未来は沿線自治体+県が実質その行方を左右していくのかなと考えます。しかし、県がもう少しリーダーシップを持って沿線自治体に補助や助言を行っていってもいいのかな。

青森県は比較的鉄道事業者には優しい?印象を持っていました。
何年か前にATS整備が義務付けられた時も補助は県が負担しているはずですし、赤字の青い森鉄道の経営から赤字にもアレルギーはないはず…。
道路の維持はお金払うよー、線路にはお金やだーという体質はなんだかです。
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