木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

無礼者! ホントの切り捨て御免①

2007年11月15日 | 江戸の話
以下の文を読んで、設問に答えなさい。

今に地名を残す日本橋十軒町。季節になると雛人形、雛が終わると武者人形の市が立ち、通りは買い物客で賑やかになる。今年の春は、寛政の改革で大きな人形は見ることができなくなったが、人出は減ることがない。
棒手振りの留吉は、今年五歳になる一人娘のためにひな人形を見に来ている。
「こんなに高えんじゃ、手がでねえなあ」
しかし、出るのは溜息ばかりである。ぼうっとして歩いていると、留吉は、何者かにぶつかった。
「危ねえじゃねえか」
相手をろくろく見ることもせずに、啖呵を切った留吉であったが、相手が悪かった。
「無礼な奴だ」
声高に言った相手は、中年の武家、前川吉衛門であったからである。
普段だったら、素直に謝るはずの留吉であったが、今日は虫の居所が悪い。
「てやんでぇ。そちらこそ、どこを見ている」
伝法調で続けて、啖呵を切ったから堪らない。
いくら武士の立場が失墜しているとはいえ、公衆の面前で、武士を罵倒する暴挙に出たのである。
「こやつ、無礼討ちにしてくれる」
吉衛門は腰の物を抜くと、斬りかかった。
「なにしやがる」
留吉は、やけのやんぱち、手にしていた棒で、武家の足をしたたかに叩いた。
その拍子に、吉衛門は仮店の雛人形を巻き込みながら、転倒した。
「待て」
「嫌なこった」
留吉は、後は逃げの一手である。
「誰かそやつを止めてくれ」
吉衛門は転びながらも、大音声で叫んだ。
「心得た」
逃げる留吉の前に、島津藩士、吉田吉之丞が立ちはだかった。
「待たれい」
吉田は、威厳のある声を出して、留吉の前を遮ったが、
「これが、待っていられるか、ってんだ」
そう叫んで、天秤棒を振り回すと、吉之丞まで、転ばされてしまった。
町人から、失笑が漏れる。
痛む足を庇いながら、立ち上がった吉衛門に、店の者が声を掛ける。
「あのこんなときに、何でございますが、この壊れてしまった雛人形、弁償して頂けないでしょうか」
「なに」
吉衛門は腹を立てたが、店の者の言うのも、もっともである。
「うむ、分かった。わしは、大番方与力、前川吉衛門と申す者。きっと払って進ぜよう」
そう言ったものの、収まらないのは、あの町人風情である。
「誰か、あの町人を見知った者はいないか」
吉衛門が声を掛けると、
「あいつは、鎌倉河岸に住んでいる留吉って者です」
通行人の中かから、返事があった。
「鎌倉河岸の留吉か。憎い奴だ」
吉衛門は、憎悪に燃える目で、虚空を睨んだ


問1.この後、留吉はどうなったと思いますか?
   ①町奉行所に連行され、極刑言い渡される。
   ②町奉行所に連行されるが、比較的、軽い罰で済む。
   ③前川によって、無礼討ちを敢行される。
   ④まったく、お咎めなし。

問2.この後、前川吉衛門は、どうなったと思いますか?
   ①まったく、お咎めなし。
   ②切腹。
   ③閉門。
   ④軽い叱責を受ける。

問3.この後、吉田吉之丞は、どうなったと思いますか?
   ①まったくお咎めなし。
   ②切腹。
   ③閉門。
   ④軽い叱責を受ける。

回答は、この次のブログにて。







最新の画像もっと見る

コメントを投稿