たびびと

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子どものやさしさ

2010年12月20日 | こころの旅
「先生、今日授業が終わるどこにいるの。」
双子のお姉さんである聡子が聞いてきた。
妹は隣のクラス、1年1組だ。

母親はぼくのクラスの保護者会には出席せず、隣のクラスに参加していた。それも毎回。
信頼されているからだろうか。
あるいは、連日発行する学級通信で、子どもの様子がわかるからだろうか。

もしかしたら、ただ単に避けられているだけかもしれない。

「うーん、今日は授業の後、多分教室でテストの採点と明日の用意をしていると思うよ。どうして」

「何となく聞いてみただけ」

そう言うと、聡子はぼくの前から走り去った。

帰りの会が終わる。
といっても、たださようならをするだけ。
翌日の連絡は給食の後に済ますことにしている。
だらだらと帰りの会をすることはしない。

子どもの下校後、少し肌寒い教室で明日の授業の準備をしていた。

トントン
窓ガラスが鳴った。

教室は一階。放課後は校庭開放がされていて、誰でも自由に校内に出入りできる。
外を見ると、聡子が手を振っている。

ぼくはゆっくりと窓へ近づき窓ガラスを開けた。
「やあ。遊びに来たの」

「先生、これ」
彼女はぼくに小さな紙袋を手渡す。
そして一目散に校庭の方へ向かって走り去った。

「何だろう」
紙袋を開けてみた。

何と中身は手作りのチョコレート。

紙袋は少し暖かい。
彼女の息を切る表情から、手に握りしめながら、走ってきたことがわかった。

聡子はどちらかというと内気なタイプ。授業中も進んで発言することはあまりない。
それでも、こうしてチョコレートを手渡す行動力があることに驚いた。

学校に食べ物を持ってきてはいけないという規則がある。
だから放課後だった。

高学年の女子になると、教師に隠れて平気でチョコレートを手渡ししている。
これはぼくの子どもの頃から変わらない。

でも1年生は違う。
きちんとルールを守りたがる。

一カ月後聡子にあめをお返しした。
帰りの会の後、そっとロッカールームまで連れて行って、
「お礼だよ。」
と言いながら、手渡した。

翌日お母さんから次のようなお手紙をいただいた。

「昨日はあめをありがとうございます。
学校から帰ってくると、私に、これ先生からもらったの、と嬉しそうに見せてくれました。

包みを開けては閉じ、開けては閉じを繰り返しています。あめを食べようとはしません。先生、どうもありがとうございました。」

彼女のチョコレートを口に含んだ。
ほんのり甘く、不思議な形。

今でも、1年生を担任したときの心温まる日々が、ぼくを癒し続けている。

Goo
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