たびびと

世界を楽しく旅しましょう!

世界遺産観光地から開発途上国まで、世界各地の心あたたまる、すてきな風をお届けします。

なつかしい風

2012年07月20日 | 特別記事
アンジェラは、握手のあと、ぼくの横に腰掛けた。

背丈は165cmくらい。女性としては高い方だ。
Molenaと呼ばれる白人と原住民との混血の人種で、肌は少し茶色い。典型的なラテン人だ。
年は20代半前半のように見えるが、暗さでよくわからない。


「あなたどこの国の人」
「日本だけど」


「きみは」
「ホンジュラス人よ」


グアテマラで初めて入ったナイトクラブ。そこで初めて言葉をかわした女性が、ホンジュラス人だった。
昨年まで仕事をしていたのがホンジュラス。

まだホンジュラスの香りがただよっていて、彼女を惹きつけたのだろうか。

「このクラブにホンジュラス人はたくさんいるの」
「わたし一人よ。ホンジュラス人はあまりグアテマラが好きじゃないの」

アンジェラの、ホンジュラス人がグアテマラを好きではないという言葉にぼくは笑った。


ホンジュラスとグアテマラは、隣国どうし。
グアテマラで生活を始めるまで、どちらも同じような文化で、同じような生活をしていると思っていた。

赴任してすぐ、それは大きな間違いであることに気づいた。

まず食事。
フリホーレス、トルティーヤという主食はホンジュラスもグアテマラも同じだ。

フリホーレスとは、日本でいう小豆を煮て、それに塩味をつけたもの。小豆より粒が大きい。使われていのは異なる種類の豆だろう。味付け、料理の仕方にバリエーションがある。基本的には塩味だ。ホンジュラスでは赤い豆。グアテマラでは黒い豆を使う。

トルティーヤの原料はとうもろこし。ひいて粉にしたものをねりこんで鉄板で焼く。
グアテマラの田舎に行くと、トルティーヤに色がついたものが食べられる。野菜などで色をつけているのだろう。もしかしたら、とうもろこしではなく、他の材料を使っているのかもしれない。
料理の種類が豊富なのはグアテマラの方だ。


グアテマラで仕事をしていたとき、ホンジュラスのかつての仕事場に遊びに行った。
お世話になった家に挨拶に行き、食事をごちそうになった。

大家さんが言う。

「この赤いフリホーレスの方がおいしいでしょ。グアテマラの黒いフリホーレスはまずくて食べられないわ」

ホンジュラスに住んでいたときから、彼女はグアテマラのことをほめたことはなく、あまりよく思っていなのは明らかだった。
「グアテマラは商業主義」
「ホンジュラスの領土をかつて横取りした」

南米やアフリカの国の悪口は言わない。
近くだからこそ、ライバル意識があるのだろうか。

事実かどうかはともかく、大家さんだけでなく、一緒に仕事をしていた多くの先生からも、グアテマラに対する同じような言葉を聞いた。

教科書にそのようなことが書かれていて、その影響なのだろうか。
あるいは、経済的にグアテマラが何歩も先をいっていることに対するやっかみだろうか。

参考までに、中米5か国の経済力順位は、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアとなっている。
上位の国は、下位の国を見下す傾向があり、言動のあちこちに、偏見が見え隠れする。もちろん、直接的相手をバカにするようなことは言わない。




多くの方に楽しい旅をしていただければと思います。
応援のクリックをどうもありがとうございます。

人気ブログランキングへ