田舎の路線バスには決まった停留所がない。好きな場所で自由に乗り降りができる。
首都のバスは日本と同じ停留所方式。停留所にポストがないところがある。そんなときは、周りの人に聞くと教えてもらえる。
バスに乗っていて困ることが一つ。バスのブザーが故障している場合が多い。
ブザーといっても、日本のバスのようなボタン式(の高度な電子システム?)ではない。バスの天井にひもが1本通っていて、それを引っ張るとブザーがなる。
次の停留所がどこなのかを知らせるアナウンスが流れることはない。
乗客は自分の降りる停留所の位置を知っているので、停留所が近づくとバスひもを引っ張る。これが故障しているときは、天井を叩く。天井の鉄板を叩く音で、運転手に知らせるのだ。
ホンジュラス人の間でも、これはあまりよいマナーとは思われていない。しかし、多くの男性は天井を使うのが大好きだ。
一方、女性は運転手に口頭で伝える。
そのときの掛け声は「proxima(次)」。
大型都市間を結ぶ高速(ではないが)バスは自由な場所での乗り降りが可能。
乗客は、降車したいポイントにバスが近づくと、バスの前方に移動。そして運転手か助手に停車位置を伝える。
自分の席から大声で運転手に停車位置を伝える人もいる…。
とても便利なシステムだ。
首都は大きい。目的地の位置がよくわからずにバスを利用することがある。
そういうときはどうするか。
まずバスの前方に座る。席が空いていない場合は、前方に立つ。
そしてバスの運転手にお願いする。
「人類博物館へ行きたいのだけれど、近い停留所で下ろしてください。」
この一言で、最寄りの停留所で停車してくれる。
停留所に停車したとき、親切に目的地までの行き方を教えてくれたことがあった。
後方には多数の乗客。
しかし、
「早く発進しろ」
とは誰も言わなかった。
ところが、この方法で一度失敗したことがあった。乗り越してしまったのである。
運転手に行き先を伝えたが、いつまでたっても何も言わない。
そこで再度聞いた。
「博物館はまだですか」
「ああ、忘れてた」
「…」
このことがあってから手法をすこし変化させた。
運転手に、目的地のことを忘れていないかを聞くのは失礼だと思った。
そこで、
「あと何分くらいで博物館に着きますか」
と聞くことにした。
こうすると運転手は目的地のことを思い出すことができる。
また、この質問を近くの乗客にすることもある。
これで二重に安心。
これ以来、バスで乗り越すことはなくなった。
バスに揺られること約1時間。ピカチョの停留所に到着した。
バスの真ん中の席に座っていたので、降車するため前方に移動する。
休日はたくさんの訪問客があるが、この日は平日。他に降りる客はいなかった。
前から2番目の窓側に座っていた、細めのひげの立派なおじさんがぼくの目を見た。
そしてニヤリとしながら、ウインクをした。
顔の表情でメッセージを送ってきたのだ。
そのメッセージとは、
「彼女を公園で….」
である。
これは男性同士でしか理解できないと思う。
以心伝心だ。
彼女に対してそういう気持ちはなかったが、このおじさんの好意に応えるべく、
「まかしておいて」
とこちらもウインクをして、バスを降りた。
降車間際の一瞬の無言の会話。
昔と比べると首都の治安は悪化し、人々は挨拶をしなくなったとよく聞く。
それでもこういう楽しい意思の疎通が頻繁に体験できるのは、ラテンの国ならではだ。
首都のバスは日本と同じ停留所方式。停留所にポストがないところがある。そんなときは、周りの人に聞くと教えてもらえる。
バスに乗っていて困ることが一つ。バスのブザーが故障している場合が多い。
ブザーといっても、日本のバスのようなボタン式(の高度な電子システム?)ではない。バスの天井にひもが1本通っていて、それを引っ張るとブザーがなる。
次の停留所がどこなのかを知らせるアナウンスが流れることはない。
乗客は自分の降りる停留所の位置を知っているので、停留所が近づくとバスひもを引っ張る。これが故障しているときは、天井を叩く。天井の鉄板を叩く音で、運転手に知らせるのだ。
ホンジュラス人の間でも、これはあまりよいマナーとは思われていない。しかし、多くの男性は天井を使うのが大好きだ。
一方、女性は運転手に口頭で伝える。
そのときの掛け声は「proxima(次)」。
大型都市間を結ぶ高速(ではないが)バスは自由な場所での乗り降りが可能。
乗客は、降車したいポイントにバスが近づくと、バスの前方に移動。そして運転手か助手に停車位置を伝える。
自分の席から大声で運転手に停車位置を伝える人もいる…。
とても便利なシステムだ。
首都は大きい。目的地の位置がよくわからずにバスを利用することがある。
そういうときはどうするか。
まずバスの前方に座る。席が空いていない場合は、前方に立つ。
そしてバスの運転手にお願いする。
「人類博物館へ行きたいのだけれど、近い停留所で下ろしてください。」
この一言で、最寄りの停留所で停車してくれる。
停留所に停車したとき、親切に目的地までの行き方を教えてくれたことがあった。
後方には多数の乗客。
しかし、
「早く発進しろ」
とは誰も言わなかった。
ところが、この方法で一度失敗したことがあった。乗り越してしまったのである。
運転手に行き先を伝えたが、いつまでたっても何も言わない。
そこで再度聞いた。
「博物館はまだですか」
「ああ、忘れてた」
「…」
このことがあってから手法をすこし変化させた。
運転手に、目的地のことを忘れていないかを聞くのは失礼だと思った。
そこで、
「あと何分くらいで博物館に着きますか」
と聞くことにした。
こうすると運転手は目的地のことを思い出すことができる。
また、この質問を近くの乗客にすることもある。
これで二重に安心。
これ以来、バスで乗り越すことはなくなった。
バスに揺られること約1時間。ピカチョの停留所に到着した。
バスの真ん中の席に座っていたので、降車するため前方に移動する。
休日はたくさんの訪問客があるが、この日は平日。他に降りる客はいなかった。
前から2番目の窓側に座っていた、細めのひげの立派なおじさんがぼくの目を見た。
そしてニヤリとしながら、ウインクをした。
顔の表情でメッセージを送ってきたのだ。
そのメッセージとは、
「彼女を公園で….」
である。
これは男性同士でしか理解できないと思う。
以心伝心だ。
彼女に対してそういう気持ちはなかったが、このおじさんの好意に応えるべく、
「まかしておいて」
とこちらもウインクをして、バスを降りた。
降車間際の一瞬の無言の会話。
昔と比べると首都の治安は悪化し、人々は挨拶をしなくなったとよく聞く。
それでもこういう楽しい意思の疎通が頻繁に体験できるのは、ラテンの国ならではだ。