■10件認定

 2020年6月施行の改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)は、パワハラについて▽優越的な関係を背景とした言動▽業務上必要かつ相当な範囲を超えている▽労働者の就業環境が害される――と定義。厚生労働省の指針では、パワハラに該当する行為を「精神的な攻撃」「過大な要求」など6類型に分類している。

 元裁判官ら6人の弁護士で構成する第三者委は、この法律や指針を踏まえた上で、前県西播磨県民局長(昨年7月に死亡)の告発文書などで指摘された斎藤氏の16件の行為について、パワハラに該当するかを検討し、うち10件を認定した。

(中略)

■「司法が判断」疑問

 斎藤氏の言動を巡っては、県議会百条委員会も4日に公表した調査報告書で、一部の行為を「パワハラ行為と言っても過言ではない」と指摘していた。

 斎藤氏は翌日の記者会見で、「ハラスメントは、最終的には司法の場で判断されるのが一般的」と主張。しかし、実際には、企業や自治体の多くが裁判とは無関係に、厚労省の指針などを参考に社員や職員のパワハラを認定している。兵庫県もパワハラを理由に職員を懲戒処分にしたケースがある。

 元大阪高裁判事で、第三者委委員長の藤本久俊弁護士は19日の記者会見で、「裁判に訴えられた件だけがパワハラ(と認定される)ということは、違うのではないか」と述べ、斎藤氏の主張に疑問を呈した。

繰り返す恐れも

労災問題に詳しい上出恭子弁護士(大阪弁護士会)の話「第三者委は中立的な立場の弁護士が様々な事実を照らし合わせて判断しており、パワハラが認定されたことは重い斎藤知事に結論を真摯しんしに受け止める姿勢がなければ、同じことが繰り返される恐れがある」