壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

土用干

2009年10月18日 20時16分28秒 | Weblog
 「菅原智子個展」(10月20日~10月25日)・「菅田友子日本画展」(10月27日~11月1日)と、2週つづけて銀座の「画廊宮坂」で、変人の好きな作家の作品が観られる。非常に楽しみである。が、一つ心配なのは「菅田友子日本画展」と、再入院とが重なりそうなのだ。これは10月23日にならなければわからないが……。

 「画廊宮坂」の来年の「年間スケジュール表」を見たら、おもしろいものを見つけた。1月12日から2週間、「虫干し展」とある。
 虫干しは、「夏の土用の頃、黴や虫害を防ぐために書籍・衣服などを日に干したり風にさらしたりすること。土用干し。虫払い」と、『広辞苑』にあるように、夏の土用に行なうのが普通である。それを正月にするとは、いかにも宮坂さんらしい。
 ふだん忘れられ、かくされていた作品を、明るみへ取り出して並べてあげようという、宮坂さんのやさしさ、思いやりの深さに、頭が下がる。

        竜宮もけふの潮路や土用干     芭 蕉

 『六百番俳諧発句合』に「上巳」と題して掲出されている。
 「上巳」は「じょうし」と読むが、俗に「じょうみ」とも読み、三月初の巳の日の意で、この日行なわれた節句をいう。中古以後は、三月三日とされている。
 この日は、潮が大いに干るといわれ、江戸の頃から潮干狩りを行なう風習がある。
 「土用干」は、ふつう夏の土用のころの虫干しをいうが、ここでは上巳の日の潮干を土用干と見立てたものだから、上巳で春の季となる。
 上巳の日、潮がはるかに干たところから、今日の潮路の果てに竜宮を思い起こし、その竜宮の土用干を連想したところが眼目である。

    「きょうは三月三日のこととて、ずっと沖まで潮が引いているが、これは
     海中の竜宮でも土用干をしているのであろう」


      波に浮くものみな白し秋の海     季 己