壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

三十三才

2009年01月27日 20時13分23秒 | Weblog
 アイムソーリ・ヒゲソーリの麻生さんなら、「三十三才」を何と読むだろうか。聞いてみたい気がする。やはり「さんじゅうさんさい」と読むのだろうか。

        干笊の動いてゐるは三十三才     虚 子

 もちろん、「さんじゅうさんさい」という読みもあるが、この句の場合は、「みそさざい」と読む。
 ミソサザイは、ごく小形の鳥で勾玉のような体をしている。羽には焦茶色で小さい斑紋がある。冬から春にかけて、低い陰湿な草叢や人家付近に生活し、軒先や植込みをとび伝う。

        みそさざいちちといふても日が暮る     一 茶

 ホーホケキョと玉を転がすような美しい声にはならず、チチ、チチと遠慮がちに声を試しているのが冬の鶯。
 そうした鶯よりも早く馴れて、細い澄み透った声で、チチ、チチと短く囀るのが、こまっちゃくれたミソサザイである。
 許六(きょりく)の句に、「鶯に啼いて見せけりみそさざい」というのがある。

 日本で最も小さく可憐な小鳥は、キクイタダキといわれるが、それと同じくらい小柄な種類に属するミソサザイは、本当にこまっちゃくれたお節介焼きである。

        物あればすなはち隠るみそさざい     子 規

 すっかり人里に馴れて、チョンチョン、チョンチョン、土間に入り込んで来ては、何にでも隠れ、思いもかけぬ物陰から飛び出して来て驚かせる。

        たのしくなれば女も走るみそさざい     みづえ

 小さな虫や蜘蛛などを見つけて食べるのだが、仔細ありげにキョロキョロ辺りを見廻しながら、敏捷に飛び廻っているミソサザイは、何かおしゃまな小娘といった感じのするものである。

        みそさざいキョロキョロ何ぞ落したか     一 茶

 親のない子雀には親愛の情をこめて呼びかけた一茶も、ミソサザイの屈託の無さには、ちょっぴり皮肉も言ってみたくなったのであろうか。

        三十三才 瞳(め)にうつるもの皆暮色     青 圃
        
 めったには木の枝にも止まらず、生垣や植込みの間をかいくぐりかいくぐり、よくもまあ、こまめに立ち働くこと……。


      三十三才来るや黄瀬戸の窯の跡     季 己